テレビに関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
坂上忍や東国原が加計問題追及の一方で「自民党を応援してる」と言い訳! 背景に安倍応援団からの抗議
フジテレビ『バイキング』番組サイトより
「自民党さんを応援してないのかって? とんでもないことであって!」
坂上忍がそう言ったのは、21日放送の『バイキング』(フジテレビ)のこと。『バイキング』といえば、出演者による感情的な激論でおなじみの“炎上型ワイドショー”。評論家・八幡和郎やジャーナリスト・有本香、元横浜市長・中田宏のような安倍応援団、竹田恒泰のようなネトウヨをパネラーとして起用し、“東のそこまで言って委員会”と揶揄されている番組だ。
もっともこのところの加計学園問題をめぐっては、MCの坂上が安倍政権に厳しいダメ出しをし、安倍応援団の八幡や中田らとの口論を繰り広げるのがパターンになっており、その中で飛び出す坂上らの発言は、しばしばネットニュースなどにも取り上げられている。
この日の放送でも、閉会中審査での与野党の質問時間をめぐる応酬や、30%を切った内閣支持率などの政治ネタを出演者で激論。たとえば、与党が5:5の質問時間を求めたことについては、坂上と土田晃之が批判的で、八幡氏が擁護的という構図だった。そんななか、8月予定の内閣改造の話題に話がうつると、東国原英夫が「僕はね、実を言うと相対的に自民党さん応援してるんですよ。民進党に期待できないから、野党に期待できないから自民党さんがやるしかないんだけど」と発言。すると、坂上も「たぶんね、そういう人多いんですよ、いまだに!」と同調して、こんなことを言い出したのである。
「結構、僕らだってね、なんかこうやっていつも政権に対してブーブー文句を言ってるとね……自民党さんを応援してないのかって? とんでもないことであって! 今のこの状況考えたら、ちょっと、まあ消去法じゃないけど、しょうがねーなって思ってる人多いと思うんですよ」
ようするに、『バイキング』ではたびたび政権批判をしているが、それは自民党のことを思っているからこそ。自民党を応援していないのかと視聴者から言われるが、いや、そんなことはない! と、坂上は言っているのである。
しかし、坂上たちはなんで政権を批判するのに、わざわざこんなエクスキューズをする必要があるのだろう──。不思議に思って、周辺を探ってみたら、実はこの背景にはどうも、安倍応援団やネトウヨによる抗議があるらしい。
坂上忍に寄せられたネトウヨのディス、フジには電凸も
実際、『バイキング』と坂上は、閉会中審査の話題を扱った24日の放送でも、ネトウヨによって炎上させられていた。安倍首相を擁護し、前川喜平前文部科学事務次官を批判する八幡氏に対し、坂上はいつもの大声で「八幡さんが着目してるところと国民が着目しているとことはズレてる! 国民が知りたいのは本当かどうかだよ!」「“ご意向”があったのかどうかだよ!」などと発言。まあ、いたって普通の意見なのだが、これにネトウヨはプッツン。なぜか「坂上が八幡氏を恫喝した」ということになって、ツイッターには「坂上消えて欲しい」などのディスが溢れかえっていた。
いや、ツイッターだけではない。『バイキング』を放送するフジテレビにはどうも、日々抗議の電話も殺到しているようだ。
本サイトでは何度も指摘しているが、加計問題では、前川氏の証言や内部文書などの証拠に対し、まともな反論できない政権与党とその応援団は、「加計問題はマスコミが捏造した問題」「『報道しない自由』を使った安倍おろし」などとがなりたて、攻撃の矛先をメディアに向けている。まるで、ディベートで負かされ素手で殴りかかる不逞の輩だが、実際、本サイトでもお伝えしたように、25日の閉会中審査では、青山繁晴参院議員が加計問題を偏向報道のせいにする“報道圧力質問”をぶちかましている。
つまり、そうやって世論をコントロールしようということらしいが、とりわけ、テレビコメンテーターが少しでも政権批判しようものなら、たちまち血祭りにあげられる状況にはタレントたちもウンザリのようだ。たとえば水道橋博士は〈落語家や漫才師が話すことに真面目に、極左だの、非国民だの、無責任だの、コメンテーター失格だの言ってくる人が、ここまで多くなるのは55年間で初めて体験する〉(7月15日)とツイートしているが、実際、芸能人が政権批判をするとすぐにネトウヨが飛んでくるのは、かなり面倒なことだろう。
さらに、たちが悪いことに、ネトウヨは単に政権に批判的な番組出演者を炎上させるだけでなく、テレビ局やスポンサー企業にまで「電凸」と呼ばれるクレーム攻撃をしかける。この「電凸」がいかに放送局に対する“圧力”になるかは、昨年緊急復刊された「朝日ジャーナル」(朝日新聞出版)のなかで、池上彰がこのように解説していた。
「さらに深刻なのは『電凸』です。『電話で突撃する』という意味のインターネット用語ですが、一般の読者や視聴者が、気に食わない報道があると、スポンサー企業に一斉に抗議電話をかける。『不買運動をする』なんて言われるとビックリするんですね。昨年6月に自民党の議員が、マスコミを懲らしめるためにスポンサーに圧力をかけることを提案して、問題になりました。それも実際にはすでに行われているんです」
「現代的に言うと『反知性主義』という言葉に言い換えることができるのではないでしょうか。冷静に議論をするのではなく、『マスゴミ』『反日』と罵倒して、数の力で封殺する。その状況でも冷静に立ち止まって議論することが、メディアの役割ですよね」
また、池上氏はこうした大量の抗議の背景に安倍政権の存在があることも示唆している。
「第1次安倍政権(06〜07年)の時に、メディアへの抗議が増えたんです。ところが、安倍さんが辞めた後にパタリとなくなりました。福田政権、麻生政権、民主党政権の時は抗議が大量にくるようなことはなかった。それが第2次安倍政権(12年〜)になって復活しました」
政権批判をするだけで言い訳をしなければならない異常なメディア状況
そう考えると、やはり『バイキング』で坂上が、露骨に自民党に対するエクスキューズをしたのも、こうした安倍政権とネトウヨたちがしかける炎上やメディアバッシングが“圧力”になっており、そのためにごく普通の権力批判ですら留保するようになったとしか思えないのだ。
実際、昼のワイドショーを見ていると、たとえば加計問題をめぐるこの間の国会の話題では、「民進党もつめきれてない」「野党の質問の仕方が悪い」と言うコメンテーターは山ほどいるが、一方、彼らがそうした発言のあと、「私は民進党にもがんばってほしいから、あえて苦言を呈しているんですよ」などと言うところはほとんど見たことがない。
逆に言えば、仮に坂上が野党をこうも露骨にフォローしていたら、どうだったか。「民進党さんを応援してないのかって? とんでもない!」とか「今のこの状況を考えたら、消去法じゃないけど共産党って思ってる人は多いと思う」などと発言したら、おそらく、ネット右翼たちは怒り狂って、「野党びいきの偏向報道だ!」「放送法を守れ!」「電波止めろ!」などと合唱、ネットが大炎上するのは間違いない。
いずれにせよ、「メディアが“安倍おろし”のために結託して加計問題を捏造している」という陰謀論はこれからさらに拡散し、テレビへの圧力はどんどん強まっていくだろう。ふつうに政権批判をするだけで“言い訳”を重ねなければならないというこの国の異常な状況を変えるためにも、メディアにはこうしたプレッシャーに負けることなく踏ん張ってもらいたい。
(編集部)
最終更新:2017.12.06 04:44
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