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これぞ対照的! 前川前次官が『報ステ』で知性全開した日、安倍首相がヘイトデマ拡散の須田慎一郎のラジオで個人攻撃
首相官邸ホームページより
1日、『報道ステーション』(テレビ朝日)で渦中の前川喜平・前文科省事務次官のインタビューが放送された。そのなかで前川氏はあらためて、加計学園の獣医学部開設認可について、官邸から圧力があったことを明言した。
「いろいろな改革を進めるときに“総理の指示”というかたちで指令が出るというのはこれまでもありましたけどね、しかしこの個別の案件で総理という名前が出てくるのは、私はちょっとあんまり記憶がないです」
これは、いかに国家戦略特区による獣医学部新設が異例の進め方で、かつ“総理”主導で行われたかを裏付ける証言だ。
しかも、前川氏は「内閣府に押し切られてしまった」ことを「私ももっとがんばるべきだった」「いまは反省しています」と述べ、その上で、今回の獣医学部新設の何が問題なのかを、このように語った。
「国の将来にとってほんとうに役に立つ、規制緩和するだけの意味があるとちゃんと説明できるのであれば、それは総理の親友である方が運営しておられる大学であっても全然構わないし、そこのところは本来、別問題だと思っていますけども、何か総理との関係が原因になって理由になって特例が認められているのであれば、これは特別扱い。良い特別扱いではなくて、悪い特別扱いだと思います」
「霞が関は半分以上、権力に仕える装置になっていると思うんですけどね、元々その権力とはそういうもので、しかしその権力は国民がコントロールしなければならないので、国民のコントロールの及ばない権力になってしまってはいけないんですよね」
「間違った行政が行われたら、それはデモクラシー、民主主義の過程を経て、国民が是正するべきことでありますからね、何が起きたのかということは、きちんと国民に知らせる必要があると思います」
権力のハンドルを握っているのは、政治家でも官僚でもなく国民だ。──あまりに当たり前のことなのだが、国民主権無視、情報隠蔽、オトモダチ優遇の安倍政治が横行しているなかで、「公平性」と「知る権利」を第一に考える前川氏のまっとうさにはあらためて「この国にもこういう官僚がいたのか」と驚きを感じたほどだ。
安倍首相が前川前次官の買春デマを拡散した須田慎一郎の番組に
一方、その前川氏と逆の意味で驚かされたのが、安倍首相だ。前川氏が正論をテレビカメラの前で語った同じ日、安倍首相は御用メディアであるニッポン放送に出向き、なんと『須田慎一郎のニュースアウトサイダー』の収録に出演したのだ。
須田慎一郎氏といえば、以前から裏社会モノや事件記事でトバシをすることで有名なジャーナリストだったが、最近は右傾化と安倍一強に乗っかって、テレビにもどんどん出演。政権や右派に露骨にすりよる発言を連発している御仁だ。
たとえば、あの『ニュース女子』(TOKYO MX)における沖縄ヘイトデマ回にも出演しており、「のりこえねっと」共同代表の辛淑玉氏について「在日韓国人差別と戦ってきたカリスマで金がガンガン集まる」などと悪質なイメージ操作を行っていた。
加計学園問題についても、月曜コメンテーターを務めている『高嶋ひでたけのあさラジ!』(ニッポン放送)で、「岩盤規制に穴を開ける正義の忖度だ」と主張するなど、露骨な安倍擁護を展開していた。
そのきわめつきが、5月28日放送の『そこまで言って委員会NP』(読売テレビ)だろう。
この日の同番組では「須田慎一郎氏が金田一耕助ばりの名推理を披露!!」と紹介し、金田一のコスプレをした須田氏は「事件化できない最大の政治ショー(前事務次官の自爆テロ)」と銘打ち、こう口を開いた。
「行ってきましたよ、私もその歌舞伎町の出会いバー。入場料6000円も取るんですよ。で、前川さんが連れ出したっていう女の子、私も取材しましたよ!」
ここで司会の辛坊治郎氏が「で、何ができるの?」と、あきらかに買春を前提としたようなゲスな茶々を入れたのだが、須田氏は声高にこんなことを言い出したのだ。
「(ピー音)とか行けるらしいんだけど、私はこういう立場ですから、やっぱり行かなかったんですけどね〜。前川さんは行ったらしい! 行ったらしいよ」「裏取りした。だって(ピー音)ちゃんに聞いたもん」
「前川前次官と一緒に(ピー音)に行った(ピー音)ちゃんに聞いたもん」
「一緒に歌舞伎町の寿司屋の脇、道入っていった右側にある(ピー音)」
すると、辛坊氏は「あるあるある!」と大喜びで叫び、スタジオは大爆笑に包まれた。──ピー音が入っているとはいえ、そこでは「女性の名前」と「ホテル」あるいは「ラブホ」に行ったと話していることは文脈からして明らかだ。
江川紹子、西岡研介らが須田慎一郎の“デマ”拡散の過去を暴露
前川氏が通っていたとされる出会い系バーには「週刊文春」(文藝春秋)「週刊新潮」(新潮社)「FLASH」(光文社)などさまざまな週刊誌が取材をかけ、女性や店員の証言を具体的に集めているが、どの週刊誌も前川氏の買春の事実を突きとめられていない。ところが、須田氏だけが「裏を取った」として、前川氏の買春行為を主張しているのだ。
しかし、この番組で須田氏は何一つ、証拠らしい証拠を提示していないのだ。前出の週刊誌はバーの写真などを掲載しているが、須田氏は写真すら出していない。須田氏の話にディティールがあるとすれば、「歌舞伎町の寿司屋の脇、道入っていった右側にある(ピー音)」という部分だけだが、歌舞伎町には目立つ場所から路地裏まで何十件もの寿司屋があり、ラブホテルにいたってはひしめき合っているようなエリアだ。辛坊氏は「あるあるある!」とはしゃいだが、そりゃあるだろうよとしか言いようがない。
この須田氏のやはり“トバシ”のにおいのプンプンする発言は当然、古くから須田氏のことを知るジャーナリストたちから厳しいツッコミを入れられた。江川紹子氏は〈須田さんって、オウム事件の時に、教祖の麻原彰晃こと松本智津夫がいるはずもない京都のホテルで会ったとかって、ありえないことを平然と言って回ってテレビに露出しまくった、あの須田さんですか?〉とツイート。
ヤクザ問題に詳しいジャーナリスト・西岡研介氏もこれに乗っかって、〈須田さんって、山口組分裂の際にもデタラメな情報ばかり流していたあの須田さんですよね?〉と追い討ちをかけた。
まあ、須田氏についてはいつものことなので驚かないが、驚いたのはやはり、天下の総理大臣がこのタイミングで、こんなジャーナリストの番組に出演したことだろう。次から次へと疑惑が噴出して追い詰められ、安倍応援団なら誰でも、という感じでオファーに飛びついたのだろうが、ちょっと露骨すぎる。しかも、この番組で安倍首相はその須田氏と一緒に、前川氏に対してこんな子供みたいな攻撃を展開したのだ。
「前次官が私の意向かどうかということはですね、確かめようと思えば確かめられるんですよね」
「課長だったら確かめようがないと思いますが、次官であればですね、どうなんですかと。大臣と一緒に私のところに(確認に)来ればいいじゃないですか」
まったくどの口が言っているのか。今月1日、外務省は韓国・釜山の森本康敬総領事を退任させるという人事を発表したが、その理由はなんと〈私的な会食の場で安倍政権の対応を批判したことを、首相官邸が問題視〉(朝日新聞デジタル1日付)したからだ。会食中に政権批判しただけでそれを理由に更迭してしまうのに、「文句は面と向かって言え」とはちゃんちゃらおかしい。そもそも、直接には何も言わなかったという前川氏にさえ、公安出身の杉田和博内閣官房副長官から“出会い系バー通い”を厳重注意させ、監視下にあることを匂わせて恫喝していたのだ。もしも前川氏が安倍首相に直接「やり方おかしくないですか?」と言った日には、一体どんな粛清が待っていただろう。
前川前次官「同じ官邸主導でも小泉政権のときは反対意見が言えた」
実は、こうした安倍政権による官僚支配、ものいえぬ状況についても、前川氏は前出の『報ステ』で理路整然と解説していた。
前川氏は「官邸主導のひとつのきっかけは小泉政権」としながらも「各省それぞれの自立性・独立性はある程度あった」「反対意見を言っても、人事で報復されるようなことはなかった」と分析していた。
現に、小泉政権時に三位一体改革で義務教育費の国庫負担制度存廃が議論となったが、当時、文科省の初等中等教育企画課長だった前川氏がテレビの取材に応じ、「国民がどこに生まれたとしても、どこに生まれて育ったとしても、一定の義務教育が受けられる保障がなければいけない。これは憲法が求めているもの」と力説している場面が昨晩の『報ステ』では流れた。テレビの取材で小泉首相に楯突く──いまの安倍政権では絶対に考えられない、あり得ない光景だろう。
前川氏は「小泉内閣のときは明確に(総理の指示や方針だと)言われたが、明確に反対できるというような、ある意味、風通しの良さというか、明るさみたいなものがあったような気がしますよね」と振り返っていた。対して、最近はどうなのか。前川氏はこう話している。
「司令塔の所在が曖昧になっている感じがするんですね、いまはね。だからたしかに“指示”じゃなくて“意向”とか“お考え”とか、そういう曖昧なかたちで伝わってくるという、その違いはたしかにあるなと。曖昧なかたちなんだけども、それに逆らえない雰囲気があるというような」
そして、前川氏は、文書の存在を「確認できない」と言う文科省の対応を、「責めないであげてください」「こうするほかにない状況に追い込まれている」「そうせざるを得ない政権中枢との力関係がある」と古巣の仲間たちを庇った。いかに安倍政権によって省庁の自立性が奪われ、ものを言えない萎縮した空気が広がっているのか。前川氏はそのことを痛いほどよく知っているのだ。
また、前川氏は「自分がいま事務次官だったらどうしているか」という問いには、こんなふうに答えた。
「私ね、座右の銘が『面従腹背』なんですよ。あの、これは普通は悪い意味で使われるんだけど、役人の心得としてある程度の面従腹背はどうしても必要だし、面従腹背の技術というか資質はやっぱりもつ必要があるので、ですから表向き、とにかく政権中枢に言われたとおり『見つかりませんでした』という結論にもっていくけども、しかし“巷では次々に見つかっているという状態”ということを考えたかもしれない」
高まる前川前次官の評価、GLAYのTERUも「誠実な人」と
官邸が踏むべきステップも踏まず思いのままに押し切ろうとするなかで、“表と裏を使い分けるだろう”と前川氏は言うのだ。「だったら直接おれに言えばいいじゃん」というような幼稚な攻撃しかできない安倍首相と比べて、官僚という立場、官邸との力関係、現実をみすえたこの知性的で正直な切り返しはどうだろう。
実は、前川氏については、メディアに登場すればするほど、「あんなに誠実で知性的な人とは思わなかった」「出会い系バーがどうあれ、主張していることはすごくまっとうだ」という評価がどんどん高まっている。また、週刊誌が買春行為を否定し、「週刊文春」では出会い系バーで前川氏と知り合ったという女性が「前川さんに救われた」と語ったことや、身分を隠してボランティアに参加していたという数々の証言が出てきたことで、ネット上では「前川氏は『遠山の金さん』みたい」「前川さんのファンになった」という声まで上がるようになっている。
この『報ステ』でのインタビューについても、多くの人が「胸に響いた」「絶対見るべき」と感想をつぶやき、GLAYのボーカル・TERUも〈僕はその受け答えに、前川さんの人となりを見た。もし、前川さんの話が真っ赤な嘘だったら、僕は騙されやすい人なのだろうと思った。でも、誠実な人って肌で感じる〉と反応したほどだった。
しかも、前川氏が評価できるのは、いまなお出会い系バー通い問題で攻撃を受けているにもかかわらず、御用メディアのフジテレビにも出演して、堂々と自分の考えを示していることだ。
一方、応援団のフェイクジャーナリストがやっている御用メディアを選んで、幼稚で一方的な個人攻撃に勤しむことしかできない安倍首相。対照的な両者を見比べていると、本サイトとしてはやはり、前川氏を評価するというより、こんな品性のない総理大臣がやりたい放題やっているこの国の状況に絶望的な気持ちになってしまうのである。
(編集部)
最終更新:2017.12.04 03:48
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