社会問題に関する話題……本と雑誌のニュースサイト/リテラ
政府がAV出演強要問題に乗り出し! 元AV女優「権力の介入はAV業界をさらに危険な場所にする」
表現者ネットワーク(AVAN)代表の川奈まり子氏
本日、AV出演強要問題について、政府が省庁を横断した対策会議を開き、「4月は進学や就職で生活環境が大きく変わる時期で被害に遭うリスクが高い」として、今月中に緊急の対応策を作成すると報じられた。
昨年より社会問題として取り上げられ続けているこの問題。たしかに、自分の意に反し出演を強要され深く傷ついた女性が存在するのは事実で、業界のルール整備なり、問題の起こらないようなシステムづくりなど、業界として変えていかなくてはならないところが多くあるのはまちがいない。その体制づくりは急務である。
しかし、現在動いているようなかたちで国が強引に法規制を行うよう進行していくことは、果たして本当の意味で出演者の人権を守ることにつながるのだろうか? むしろ逆効果になる可能性も大いにある。
拙速かつ安易な規制で業界を潰すことは、その分の仕事が闇マーケットに流れることにもつながり、世間の目の及ばないところで働かざるを得なくなった末端の出演者は、より苛烈な人権侵害を受けるといった展開も考え得るからだ。ひと昔前に風俗産業で起こったのと似たようなことがまた繰り返される危険性もある。
この問題を解決させるため一番理想的なのは、権力の介入ではなく、業界の内部で出演強要のような問題が起こらないための自主規制のシステムがつくられることだ。そして、現にそういった動きは生まれている。
たとえば、表現者ネットワーク(AVAN)は、まず、出演に際しての契約書を理解しやすく出演者本意のものに業界内で統一させ、強要被害などが起こり得ないシステムを率先してつくるよう呼びかけている。
ここのところ、AV業界側からこの問題について議論していこうといった機運もなくなり、どんどん「AV業界は悪の組織」といったイメージが世間に定着しつつあるが、こういった動きをより広く知ってもらい、共に考えていこうという動きをつくることは大事なことだろう。
当サイトでは昨年、元AV女優で、現在はAVANの代表を務める川奈まり子氏にインタビューを行っている。ここに再録するので、公権力の介入がこのまま進んでいくことが本当の意味で出演者の権利を守ることにつながっていくのかどうか、一度立ち止まって考えていただきたい。
(編集部)
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本サイトでも定期的にお伝えしている「AV出演強要問題」。「グラビアモデル」や「モデル」として芸能プロダクションと契約したはずの女性にAV出演を強要し、女性側がそれを断れば「違約金を払え」「親に請求書を送る」などと脅したうえ出演を余儀なくさせるといった悪質な手口の告発が相次ぎ、「AV出演強要」は大きくクローズアップされるようになった。
この流れを受け、6月には内閣府が「AV出演強要についての実態把握に努める」との答弁を閣議決定。今後、法整備や公的な審査団体の新たな設立といった動きがあるのではとの報道もあるが、そんななか、元AV女優で現在は作家の川奈まり子氏が、AV出演者の人権を守るための団体「表現者ネットワーク(AVAN)」を立ち上げた。公権力の介入による問題解決では本当の意味でのAV出演者の人権擁護は果たされないとして、自主的にAV出演者の人権を守るために活動をしていくのだという。
今回、当サイトは川奈氏にインタビューを敢行。社会問題化したAV業界をめぐる問題についてどう考えているのかを聞いた。
──まず、改めて、AVANを立ち上げた経緯を教えてください。
「きっかけは、今年3月に国際人権NGO団体・ヒューマンライツ・ナウ(以下、HRN)がAVへの出演を強要する手口が業界で横行しているとの報告書を発表したことですね。マスコミでも大きく報道され、その報告書の内容には同意できる部分、できない部分、色々ありましたけれど、それをきっかけに、どうしたらAV女優の仕事と人権を守れるか、取り巻く環境がよくなるかを考えたんです。となると、やはり、AV出演者自身でAV出演者の権利を守るための、メーカーやプロダクションからしがらみを受けない同業者団体が必要ではないかと思ったわけです。これまでAV業界ではそういった団体がつくられたことはなかったんですけど、とにかくこれはやらなければ、と。そのためのとっかかりとして、出演者の権利を第一義にした出演者本意の契約書を作成しました。現在は、その契約書を使用するよう、各プロダクションやメーカーに呼びかけています」
──AV出演強要については、法的規制が必要という指摘がありますが、あくまで自主的にルールを設けよう、ということですね。
「私個人の意見ですが、最初から法規制を否定するつもりはないんです。ただ、AV業界の内情をよく知らない人たちが現在進めようとしている動きは、本当の意味でAV女優の人権を守ることにはならない。このまま事態が進んでいけば、AV女優たちは仕事をなくし、かえって人権侵害を受けかねない闇のマーケットに追いやられてしまいます。そうならないためにも、公権力の介入ではなく、まずは業界内部での自主規制をするべきだと考えました。」
──ただ、川奈さんは、HRNの報告書が出て、この強要問題が話題になり始めたとき、「HRNは4年間での被害件数を93件としているが、AVの年間発売タイトル約2万件という数字のなかでは、非常に低い数字」と発言するなど、「数が少ない」「レアケース」ということを強調していました。強要問題を小さく見せようとしているんじゃないかという批判もありましたが。
「そこは反省していて、数が少ないことを主張しても意味はないなって。実は、この強要問題が話題になったとき、業界のなかの人間のほとんどは出演強要が起きていることを本当に知りませんでした。30年前ぐらいの業界を知っているベテランの方が、当時のことを思い返して『出演強要はあった』とおっしゃったりもしていますが、90年代後半以降に業界に入った私たちの大半はそういった被害を見聞きしたことがありません。だから、最初は私も、こういったのは本当にレアケースだと主張してきたんです。
でも、いまは、それは違うなと思うんです。多いか少ないかじゃない。起きていることそれ自体が問題なのであって、出演強要被害など1件も起こしてはいけないんだと」
──そう思うようになったのはなぜですか?
「私はすっかり忘れていたんですけど、この問題について夫(AV監督の溜池ゴロー氏)と話しているときに言われて思いだしたことがあるんです。
昔、私に惚れちゃってた監督がいたんですけど……、これ私のうぬぼれじゃないですよ(笑)。本当のことなんです。その方が、私が溜さんとハメ撮りした『美熟女まり子 プライベートセックス~48時間の愛~』という作品が売れた後にハメ撮りの企画をもってきたんです。メーカーも『プライベートセックス』が売れてた時期なのでOK出して、二人っきりでハメ撮り旅行に出たんですね。そしたら、その監督、カメラ回してないところでも襲ってきてね。私も身体がデカくて強いもんだから、取っ組み合いの大ゲンカになってね。『訴えますよ!』なんて言って。
その話を夫から言われて思いだして、確かにあれは強要被害に遭いかかっていたなって。私は気も強いし身体も強いから大丈夫だったけど、もしも気が弱い子だったらどうなってたんだろうって」
──川奈さん自身、振り返れば出演強要一歩手前の状況になった経験があったと。
「あと私がAV業界に入るときの状況も、よく考えれば出演強要になりかねないものでした。私が業界に入ったのって、セックスフレンドが『一緒にAVに出て、自分たちの愛の記念にしよう』とかアホなこと言い出して、私も『いいねいいね』なんて言って面接受けたことがきっかけなんですね。
でも、彼はその後いきなり『俺のためにAV業界で働け、ギャラの7割よこせ』などと言い出した。ここで私が泣く泣く出てたら、まさしく出演強要被害になる。でも、私はそのとき運良くスカウトされ、いい事務所と巡り会って、その男を撃退し、そんな状況では出演せずに済んだ。でも、AVには出演してみたかったから、AVにはそのまま出ることになった、という経緯があるわけですね。これも、もしも気が弱い子だったらどうだっただろうねって思うんです。あのまま泣き寝入りしてたら、あの男にどんどん金を貢ぐなんてことにもなりかねなかった。
だから、いまの健全化されたAV業界に出演強要被害なんてないと決めつけるんじゃなく、起こり得るし、実際、やっぱり起きている。だから、もうこの先1件も起こさないためにどうすればいいかを考え、行動するべきで、そのためにAVANをつくったんです」
──AVANは業界初の出演者の同業者団体ですが、業界内で適法の契約書を使うよう呼びかける以上、プロダクションやメーカーの協力を得る必要があり、そこに対し企業側との癒着などを心配する声もありますが。
「癒着もなにも、AVANの説明をするためにプロダクションやメーカーを集めた意見交換会を開いたんですけど、どちらもすごいアウェーだったんですね。『この混乱に乗じて業界を乗っ取ろうとしてるんじゃないか』『HRNに続いて新たなAV業界叩きの団体が現れたのか』みたいな感じで最初は全然協力してくれなくて。
特に、プロダクションの方が厳しかった。統一契約書の叩き台として、各プロダクションが現在使っている契約書を見せてほしいというお願いすら、最初はなかなか聞き入れてくれなかったんですね」
──プロダクションの拒否反応が強いのはどうしてなんでしょう。
「プロダクションっていうのは、それぞれ違う事務所の女の子同士が仲良くなって連絡先を交換し合ったりするのをよく思っておらず、禁止しているところすらあります。AVANは同業者団体ですから、会員の皆さんで会合を開くこともあり、そうすれば出席者同士で交流が生まれるのも自然な流れです。だから、AVANという団体自体を認めたくないんです。それはいまでもさほど変わっておらず、協力してくれるプロダクションも出てきた一方、協力してくれる会社を増やすため、現在でも色々な会社を回っている状況です。
プロダクションがなぜ交流を嫌うのかというと、たとえば、『同じぐらいのポジションにいると思われる他の事務所の女優とギャラについて話してみたら自分のほうが安かった』みたいなことが起きたときに、女優さんと事務所、特にマネージャーとの信頼関係が壊れてしまうといったことを恐れているからです。この業界は個人の信頼関係に頼っている部分も大きいので、いったんそれが壊れると、もう二度と連絡が取れなくなってしまうというような最悪の事態が起こることもあるんですね」
──それはある意味では、閉鎖的でブラックな体質ということなのでは。
「確かに、一見そう思われても不思議ではないかもしれません。でも、ちょっと誤解があります。なぜこういう状況が続いているかというと、業界自体が古い体質というか、『昭和』な感じで動いているというのがあります。AV業界以外からの新規参入が増えた90年代後半から00年代始めに少し変わりましたが、それでも、未だに社長のおっちゃん一人でやっているような事務所では、契約書というものが存在せず口約束だけでやっているようなところもあります。
そんな感じなので、契約書というのも会社によってバラバラなんですね。スタイルが。だから、誤解が生まれやすい。たとえば、普段は地方に住んでいて、撮影のときだけ上京してくるAV女優もたくさんいます。その場合、宿泊費や渡航費といったコストがかかるわけですが、それがギャラの中に含まれていて後から会社のほうに戻す場合もあれば、始めから出演料にはそういったコストを入れていない場合もある。すると、パッと見、もらう金額が全然違うので、ギャラの安い事務所の女優さんは搾取されているように感じて疑心暗鬼になってしまう。こういったように、契約書がまったく違うことにより起こる誤解というのはたくさんあります」
──ただ、これまでもそうやって「なあなあ」で済ませてきたことが、出演強要問題を起こす下地にもなっていたわけですよね。
「そうですね。AVANの活動を説明するためにメーカーをまわっていると、『単体ならまだしも企画女優にまで契約書を書かせるなんて面倒』『いちいちそんなことやってる暇なんてない』といった意見が出てきました。小さい規模でやっている個人経営のメーカーは特にですね。そういった意見はいまでもあります。だからこそ、契約書を適法なものにし、そういった手順をきちんと踏まえる慣習を根付かせていくことは、業界をきちんとしたものにする足がかりになりますし、その活動が広まっていけば、自然と業界は健全化に向かっていくと私は思うんです。
今回、色んなプロダクションから集めた現在使用している契約書を見ていると、ちゃんとした弁護士がつくった適法な契約書もある一方で、出演者の権利をあんまり考えていなかったり、なかには、ちょっと法的に問題があるのではと思われるような契約書もありました。
それらを見て、これまで出演者は企業の論理に翻弄されてきたというのを改めて感じました。プロダクションの論理、メーカーの論理ですね。でも、今回、出演者の権利を訴える団体が初めて出来たことで、数の力をもってプロダクションやメーカーに出演者の権利についての意識を変えさせるきっかけをつくることになったんです。
これまでお話している通り、私たちの活動に協力してくださる企業には統一した適法の契約書を使用してもらうよう働きかけていくのですが、この契約書というのが私たちの業界では画期的なもので、これまではプロダクション側が女優さんに一方的に『ああせいこうせい』という契約書だったところを、女優さんの方からプロダクションにプロダクション業、マネージメント業を業務委託し、プロダクション側にさまざまな遵守義務を課すかたちになっているんですね。そのうえでAVに出演すると。だから、AV女優の権利や自主性が重んじられる契約書になっている。
──契約書って、普段の生活では使わない言葉がたくさん出てきて難しいものですし、面倒くさがって読まない人も多いのでは。
「その点も配慮して、契約書それ自体も、1ページ目から、これはAV出演の契約書であり、また、AVとはどのようなものかということもきちんと書くなど、誰にでもわかるようなものにしています。それこそ『契約書の限界に挑戦』という意気込みで、これ以上わかりやすくできないというくらいのものに」
──なるほど。ただ、せっかくの画期的な試みも多くのメーカーやプロダクションの賛同が得られないと、法律規制のほうが効果的だ、という声が強くなりかねないと思うのですが。
「先ほども言いましたが、法規制も場合によっては有効なものもあるかもしれません。でも、あまりに厳しい法改正をすることには反対です。強い規制をかけることによって、そこから弾き出されてしまったプロダクションやメーカー、出演者はどうなるか? 地下にもぐってしまいます。そうなると、かえってこの問題をややこしくしてしまう。アンダーグラウンド化してしまった場所では、よりひどい人権侵害が横行する可能性が非常に高く、しかも、もうそれは表の世界からは見ることはできません。
そして、そういった事態はすでに起こり始めています。ここ半年、マスコミはAV業界叩きを続けてきました。それにより、ただでさえ斜陽産業だったAV業界はより一層傾き、仕事が減ってしまったんです。その煽りを受けたのは、プロダクションに所属していない、フリーの企画女優です。彼女たちはいま、ネットを通じて『無審査AV』の世界に行っています。現在、AVメーカーにはNPO法人知的財産新興協会(IPPA)という、日本全国にあるAVメーカーの約8割が加入する団体があり、そこがガイドラインを定めているのですが、この無審査AVの世界は、まさしくアンダーグラウンドなもので、そういったガイドラインなど関係ありません。そこではひどい人権侵害が頻繁に起きている。よりによって、業界のなかでも一番弱い立場にいたフリーの企画女優たちがもう酷い目に遭い始めているんです。そしてこれは、もしも強い法整備が行われた場合、業界全体に広がる恐れのある事態でもあるのです」
──これまでの当局のやり方をみると、新たな法規制、あるいは新たな規制団体をつくっても、結局は役所の利権にしかなっていないことが多いですよね。出演者の人権を守るという意味では、川奈さんの指摘通り逆効果になってしまったケースも少なくない。ただ、一方で、HRNが9月5日に発表した報告書(「日本・児童ポルノ規制の実情と課題 子どもたちを守るために、何が求められているのか」)などの提言はどうでしょう。AVに関わるすべての企業に出演者の年齢確認資料の保管を義務付ける、という提案をしていて、これから本格検討が進むのではないかと言われていますが。
「いや、あのHRNの提案はかなり問題があります。たしかに児童ポルノは絶対に許せないものですが、現在でも、メーカーは出演者の年齢確認を厳格に行っており、その情報の保管・管理も行っているんですね。児童ポルノ根絶のためならば、これをより徹底すればいい。ところが、HRNの提案では、『制作、編集、流通、審査、販売、配信等に関わる全ての関係者』、つまりビデオショップや動画配信サイトなどの末端にまでAV出演者の個人情報の共有を求めているんです。しかも、氏名年齢のみならず住所まで情報公開することを求めている。これは、AV女優のプライバシーを著しく侵害するものです」
──確かに、ここまで個人情報を広げてしまうと、AV女優に対するストーカー被害や、過去の出演歴暴露などといった被害を生み出す可能性がありますね。
「どうしてこういう発想が生まれてくるのか。それは、彼らがAV女優の『人権』を認めてないからですよ。出演強要などの被害に遭って傷つく人は誰ですか? AV女優なんですよ。彼女たちを守るために始まったはずの議論が、いつの間にか、さらに彼女たちを傷つける方向に向かい始めている。
AV女優たちの一番の悩みはヘイトクライムです。住んでいるアパートを追い出されるとか、仕事をクビになるとか、職場でイジメに遭うとか。会社でAV女優だった過去がバレてレイプされそうになったという相談すら受けたことがあります。
私もライターとして連載させてもらっている媒体から『川奈さんがAVに出ているなんて知りませんでした。今後の取引は中止させていただきます』と言われたり、編集部は大丈夫でもスポンサーからNGが入って仕事がなくなったりと職業差別を受けてきました。
本当にAV女優を守るのであれば、AVは悪、AVに出た女性の人生はもう取り返しがつかないと煽り立てるのではなく、どうすれば出演者の権利が守られるかたちでAVがつくられるかというシステムづくりのほうにこそ議論が行われるべきなのに……」
──マスコミや政府で行われている議論にはその視点が抜け落ちている、と。
「あと、これは恐らくAV出演者だけの問題ではないと思うんです。『いたいけな女性たちを搾取する悪辣なAV業界を叩くんだ』という構図であれば、世間からは反対意見は出て来にくいわけですよ。だから、AV業界叩きがこれだけ盛り上がっているんだと思うんですが、この流れはAVだけにおさまるのでしょうか?
AV出演強要を議題にした9月12日の『男女共同参画会議』には十数名もの警察官僚が詰めかけていましたし、今回の法規制に向かう提言を歓迎する保守派の政治家もたくさんいます。
エロは嫌いな人も多いし、世間の共感を得るとっかかりにもなりやすい。でも、AV業界規制が突破口となって、これがいずれ作家、映画、漫画家、そして報道機関に対する規制に飛び火する可能性だって十分考えられますよね。
AV女優たちが言われたように、いずれ、作家や映画監督やジャーナリストの住所を世間に公表することを義務づけられるなんて提言がなされることも絵空事の話ではないかもしれない。そのことをマスメディアに関わる人たちはよくよく考えていただきたいなと思うんです」
改めて指摘しておくが、AV業界で出演強要が横行しているのは歴然たる事実であるし、前近代的な契約など、改善すべき問題は山積している。しかし、先日当サイトでも取り上げた『クローズアップ現代+』(NHK)のように、ひたすらAV業界を悪の組織として糾弾することだけに終始していると、川奈氏の言うように、この問題を解決する方向とは逆に行ってしまう可能性がある。いたずらに権力の介入を招き、逆にAV女優の人権やプライバシーを侵害し、差別を助長する危険性すら出てくるだろう。
そういう意味でも、川奈氏が設立したAVANにかかる期待は大きい。もちろん、AVANにも不十分な点はあるし、実効性をもつ組織になれるかどうかもまだ不透明だ。しかし、AV出演者の人権を本当に守るためには、やはり業界が自主的にルールをつくり、健全化のための努力を一歩ずつ積み上げていくしかないのである。
今後も当サイトはこの問題を注視し、真にAV女優たちの人権が守られる議論になるよう見守っていきたい。
(インタビュー・文・写真/編集部)
********************
Profile
表現者ネットワーク(AVAN)代表。1999年にAV女優としてデビュー。2004年に引退後は官能小説家・怪談作家としても活動し、今年6月には『実話怪談 出没地帯』(河出書房新社)を出版したばかり。今月11日京都・龍谷大学でAVANの活動について講演する他、19日出版予定の井川楊枝『モザイクの向こう側』(双葉社)でも、今後のAV業界のあり方についてコメントを寄せている。近々、AVANアドバイザリーボードの詳細が公開される予定。他、最新情報はAVANホームページへ。
最終更新:2017.11.21 03:53
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