幸福の科学・大川隆法の「星野源」守護霊インタビューを読んでみたら驚愕の内容が…いまも童貞、風呂の鼻歌で曲作り

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大川隆法『俳優・星野源守護霊メッセージ「君は、35歳童貞男を演じられるか。」』(幸福の科学出版)

 清水富美加の幸福の科学への出家騒動が泥沼化の様相を呈している。レプロエンタテインメントと幸福の科学の間で意見は食い違い、何が真実なのかはもはや誰にもわからない。

 そんななか、この騒動で大迷惑を被っている人たちがいる。大川隆法による「守護霊インタビュー本」に登場させられている人たちである。

 清水富美加の守護霊インタビュー本が今月3日に発売されていることから、この類の本に登場している人たちのことを幸福の科学の信者のように誤解している人がいるが、まったくそんなことはない。

 このシリーズは、大川隆法が“その人物の守護霊を自分に降ろしている”という体で、勝手に出版しているだけのもの。安倍晋三首相、小池百合子東京都知事やトランプ大統領などの政界の人物から、ローラ、木村拓哉、岡田准一、北川景子、菅野美穂、武井咲などの芸能人まで、その守備範囲は幅広い。特に、流行りものには節操なく手をつける傾向があり、最近では、『君の名は。』の新海誠監督や『沈黙-サイレンス-』公開に合わせてマーティン・スコセッシ監督の守護霊インタビュー本なども出版している。

 なかでも被害を被っているのが、星野源だろう。『逃げ恥』ブームに乗っかった『俳優・星野源守護霊メッセージ「君は、35歳童貞男を演じられるか。」』(幸福の科学出版)なる守護霊本が清水と同時期に出版されたため「星野源も幸福の科学信者だったんだ」という誤解が広まっている。

 守護霊インタビュー本がいかに本人とは何の関係ないものなのかを証明するため、筆者は『俳優・星野源守護霊メッセージ「君は、35歳童貞男を演じられるか。」』を読んでみた。すると、あまりの内容に愕然としてしまったのである。

 この本では、星野源(の守護霊)が、「仕事術」のようなものに関して質問を受け、ときにゲスなプライベートのことも交えつつ答えていくという構成になっている。星野源には、ミュージシャンとしての顔、役者としての顔、文筆家としての顔と、大きく分けて3つの側面があるので、ひとつひとつ順番に見ていきたい。

 ちなみに、この本のなかで文筆家としての側面はほぼ出てこない。人知れずエッセイや小説を書いていたなかそれでは飽き足らず、〈知り合いのライターさんを通じて、編集者さんを紹介してもらい、頼み込んで、文筆の仕事をもらうようになりました。事務所には「直接こんな仕事が来たんですけど……」と言いましたが、本当は一人で営業していました(笑)〉(『働く男』文藝春秋)と綴るほど「書く」仕事に憧れとこだわりをもっている人がそこに触れないなどということがあるのだろうか……。

 それはさておき、この本のメインテーマは、やはり『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)で演じた津崎平匡のことだ。彼は、この役のオファーがきたときのことをこのように振り返っている。

「「まだこの枠から出られないなあ」っていう感じですかねえ。「箱入り息子(の恋)」から同じですが。
 何かねえ、私がそうしたいわけではないんだけど、「三十五歳童貞男、プロの独身」みたいなのをやってほしいというニーズが来るんですよね。何ですかねえ。やっぱり、“救世主としての役割”なんですかね、これねえ」
「私みたいに、「三十五歳、童貞、独身のプロ」っていう役でしか使えないような、ほかに使い道がないような感じで使われて、まあ、それを“一本彫り”でずーっとやっているうちに、だんだん、ある程度、評価も出てくると、「もしかすると、またほかの道も開けてくるかもしれないな」という感じですか」

 確かに、星野源は童貞、もしくは童貞的なキャラ設定の役柄を演じることが多い。ここで守護霊が例にあげている映画『箱入り息子の恋』も、園子温監督の『地獄でなぜ悪い』もまさしくそんな役だった。だが、言うまでもなく、そういう役が「多い」だけで、「ほかに使い道がないような感じで使われて」ということではない。彼のフィルモグラフィを見れば一発でわかる通り、他にも色々な役を演じている。

 そしてさらに驚きなのが、その流れで彼の守護霊が自らを中年童貞であると告白していることだ。

「なんか、童貞のまま死んじゃうんじゃないかと思って(笑)」
「何て言うか、「初めて女性を経験するときは、ガッキーさんのような、聖女のような方と、『向こうが主導権を握って、筆下ろしをしてみたい』という感じのシチュエーションでなければ、男を守り抜く」っていう、そういう意地がないわけではないですね」

 どう読んでも、“魂の本質が童貞”とかそういう話ではなく、リアルに「中年童貞」の告白をしちゃっているのだ。しかも、このあたりのキャラ設定はブレブレで、インタビュー途中で「実はモテている」という話に変わっていたりもしているのだが、せっかくなので守護霊ではない、星野源本人は役柄と童貞についてどう語っているのか見ていこう。

〈なんでかな。俺、童貞じゃないんだけどな。
 この童貞あてがわれ力。今まで出演した大人計画の舞台での役も8割方童貞である。もはやこうなってくると設定に童貞と書かれていない役までもが、実は童貞だったんじゃないかと思えてくる。恐ろしい。
 俺、童貞じゃないからね!
 こうやって強調すると本当に童貞みたいだ。いや、いい。童貞に見えるから童貞役がくるのだ。それは喜ばしいことなのだ〉(『蘇える変態』マガジンハウス)

 aikoに二階堂ふみと、彼の女性遍歴を見れば、童貞でも草食系男子でもなく肉食なのは明白。もしかして、大川総裁は『逃げ恥』で演じた平匡と星野本人を混同しているのでは……と心配になるが、そんなものにいちいちツッコミを入れるのも野暮なので先に進みたい。

 彼の仕事の主軸となるのはミュージシャンとしての活動になるわけだが、これに関する言及がまたひどい。

 曲づくりのプロセスについて質問された星野源の守護霊は、お風呂の鼻歌でつくっているとこともなげに語っているのだ。

「お風呂なんかに行って、(タオルで体を洗うしぐさをしながら)「塵を除き、垢を除かん」みたいな感じでやっていると、そうした悟りの姿が現れて、天から啓示が降りてきて、鼻歌が出てきて、お風呂のなかで歌っていると、それが次に、「あっ、この曲いいんじゃない?」っていう感じになるわけですよね」

 当たり前だが、一流のミュージシャンの曲づくりがそんな簡単なものであるはずがない。前述『蘇える変態』では、守護霊ではない星野源自身が曲づくりのプロセスを明かしているのでそちらを見てみたい。

〈まず、家で曲づくりをする。たまに、家ではない場所で作業する時もある。舞台の稽古場やら、ドラマの現場等、楽器が置いてある場所だったら何処でもできる。家でする場合は、机の上にノートを置き、その横にテレコ(簡易録音機)を置いて、ギターを鳴らして歌いながら作っていく。外で作曲する場合も、テレコは常に持ち歩いているので、それに録音して記録する。
(中略)
 運がいい時は5分で一曲できることもあるし、長い時はこの作業の積み重ねで数カ月かかる場合もある。たとえば今回の「夢の外へ」はCMソングなので、放送が開始する何カ月も前に詞とメロディを提出しなければならず、最終的には作曲開始からレコーディング開始までに半年かかった〉

 これで歌詞と曲はできあがるのだが、彼にとって本当に大事な作業はここからだ。基本的にセルフプロデュースで楽曲制作を行い、作詞作曲のみならず編曲も自ら手がける彼は、その編曲こそ楽曲の雰囲気を決定づける最も重要な要素であると語っている。

〈自分のような荒い作り方であっても、音楽という要素の大部分を担っているのは編曲だと思う。同じメロディでも、コードを変えたり、アレンジの施しようによってまったく別の曲になり得る。だからシンガーソングライターと名乗りつつ別のアレンジャーが音を仕切っている作品を聴くと、シンガーソングライターという言葉の持つ「己感」と出てくる音の「己感のなさ」にズレを感じ、違和感を覚えてしまう。だから、何か理由がない限り、アレンジャーは立てないだろうと思う〉

 彼の編曲にかける思いは強く、2016年11月7日放送『星野源のオールナイトニッポン』(ニッポン放送)でもこのように語っていた。

「僕、自分で作詞作曲もしているんですが、編曲もしているんですよね。セルフプロデュースで自分でやっているんですけれども、そこのことってやっぱり、あんまり触れてもらうことって少なくて。僕、やっぱり作詞作曲ってもちろん0から1を生み出す作業ではあるんですけど、編曲ってすごく大事なものだと思っていて。その曲の雰囲気とか、それこそテンポとか、たとえばコード進行とか楽器の使い方とか、そういうのも含めて全部編曲なので。もう本当に、実はいちばん編曲というものが大事なんじゃないかなと思っています」

 大川総裁に「降りてきた」星野源の守護霊は、インタビューのなかで何度も「自分はDAIGOのようなイケメンではない」といったような卑下を繰り返しつつこのように語る。

「私が恋をする相手っていうのは、けっこう高望みして、高嶺の花の方が多いから、(略)もう、けんもほろろに、相手にされないかたちでしてね。どこかの誰かさんみたいに「ウィッシュ」とか言って、あんな感じでかっこよく攻められないんですよ」
「外見が悪い私みたいな男は、やっぱり、話でモテなきゃいけないわけですよね」
「私なんかにジーッと見つめられてもね。例えば、私がジーッと五分見つめたら、警察に必ず電話が行きますよ。(頭の横で手をクルクル回しながら)「いま、異常犯罪者からストーカーされております」って、必ず行きますから、駄目なんですよ。ええ、だから、いい男に見つめられるのとは全然ちがう」
「『ブサイクからの出発』っていう本を書くといいと思うんですけど。『それでも私は生きていく』とかですねえ(笑)、まあ、そんな感じでいいと。モテないことを逆手に取って、逆風でも生きていく。それも、ある意味で男らしさじゃないですか。」

 やたら自分がイケメンじゃないことにこだわる星野源の守護霊。いったいこのズレた感じってなんだろう、と不思議がっているうちに、思い出したのが、『逃げ恥』ブームで「星野源」の名をはじめて知ったオヤジ系メディアの論調だ。昨年11月に「星野源「非イケメン」なのに絶大な人気の理由」という記事を配信したウェブサイト「東洋経済オンライン」はじめ、オヤジ系メディアはやたら、このイケメンじゃない問題にこだわっているのだ。もしかして、この守護霊インタビューも、現在60歳の大川隆法先生の価値観がまんま出てしまったんじゃ……。 

 とまあ、とにかくいたるところでツッコミどころ満載の『俳優・星野源守護霊メッセージ』。守護霊を下ろしているんだから普通はこんな間違い(しかもきわめて俗世レベルの単純な間違い)なんてしないはず、という追及はいまさらなのでもう言わないが、せめて もうちょっと下調べしてから語ってほしい。これじゃ、本気のファンはもちろん、にわかファンだって間違いに気づいてしまうだろう。

 というか、そもそも、こんなテキトーな、明らかに事実に反した話を本人に無断で、「守護霊インタビュー」と称して出版していいんだろうか。幸福の科学は自分たちの批判に対してしばしば名誉毀損訴訟を起こしているが、こういう本こそ名誉毀損ものだと思うのだが……(まあ書かれた人もみんな怖がって訴えないだろうけど)。

 そう考えると、清水富美加には最終決断をする前に、もう一回、この守護霊インタビューをぜひきちんと読んでみて再考してほしい。
(編集部)

最終更新:2017.11.16 04:50

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