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東芝“巨額粉飾決算”の戦犯は「戦後70年談話」にも関与した安倍首相のオトモダチだった! 官邸の威光で責任逃れか
東芝公式サイトより
総額2000億円超の巨額“粉飾”が発覚し、歴代3人の社長のクビが飛んだ東芝が7日午後、9月末に発足する再生のための新体制の説明をした。だが、その中身は信頼回復とはほど遠い、トンデモ人事といわざるを得ないものだった。
まず、何より疑問符がつくのは新体制の新社長に、緊急避難の暫定として社長兼務になっていた室町正志会長(65)がそのまま残留になったことだ。室町会長は2009年の社長レースに敗れて一時期経営の中枢から遠ざかっていたことが幸いし、今回の不正には直接手を染めていないとみられたことからワンポイントで社長を兼務することになった。しかし、まさに不正経理が日常化していた田中久雄社長時代(2013年~2015年)に会長職にあった旧体制のシンボルだったことも間違いない。事実、不正発覚直後は責任を取って辞めるつもりだったという(後述)。
過去の粉飾事例では、カネボウが約2000億円、オリンパスが約1100億円、ライブドアが約53億円で、いずれも旧経営者が次々と逮捕されている。2000億円超もの不正を働いた企業で責任ある地位にいた人物が新体制のトップに残るというのは、まっとうな上場企業ではあり得ない。
しかも、これを強引に推し進めたのが一連の不正の“下地”をつくったとされる現日本郵政社長の西室泰三相談役(79)だったというのだ。全国紙経済部記者が解説する。
「室町“新”社長の選任をはじめ新体制のトップ人事を主導した“黒幕”は西室さんです。室町社長は西室相談役の大のお気に入りで、若い頃からの子飼いでした。西室さんは一連の不正発覚直後から、まるで自分が東芝立て直しの責任者であるかのように振舞っている。確かに、不正経理があったのは西室さんが東芝の社長をしていた時期(1996年~2000年)とはズレているので、本人は“セーフ”だと思っているのでしょうが、不正を生む土壌というか、社風をつくりあげたのは間違いなく西室さん。“戦犯”の一人として、身を引くべき立場なんですが……」
だが、西室氏自身は一連の人事への介入を隠そうともしない。東芝の不正発覚後の7月22日に行われた日本郵政社長としての定例記者会見で、不正経理については「悲しい」「非常に大きなショック」などと他人事を装いながら、こんな内輪話を披露している。
「実は、(室町氏)ご本人は辞めると言っていたんですね。それで、私が東芝の相談役として絶対に辞めないでくれと。一人はリーダーシップを取る人がいなければ困るから、残る方がつらいかもしれないけれど、それをあなたに期待するということで残ってもらいました」
将来の東芝トップについても「私の方にも手を挙げている方がボチボチ来ています」「コーポレートガバナンスがわかっている人なら、弁護士、会計士、企業経営者など、適任者がいれば誰でもいい」などと、まるで自分に人事権があるかのような発言も飛び出した。
さらにこの会見で西室氏は、「(経営刷新)委員会を設置します。これは社外の方に参加していただきますが、責任者は東京理科大教授の伊丹(敬之)先生にやっていただく。(東芝の)社外取締役でもあるし、会社のことはある程度わかっている」と、未発表の人事まで“発表”する始末だった。先の経済部記者が続ける。
「それだけではありません。9月末の株主総会で室町氏は社長専任(会長職は返上)になって、新たに取締役会議長に資生堂相談役の前田新造氏が就任する予定なんですが、彼は西室さんの慶応の後輩です。ことほどさように選任される社外取締役はすべて西室さんのお友だちと言っていい。例えば、前出の東京理科大の伊丹氏は経営学者ですが、西室社長時代の東芝を絶賛していた。公認会計士の野田晃子氏は西室さんと同期(1961年)入社の元東芝社員。三菱ケミカルホールディングス会長の小林喜光氏やアサヒグループホールディングス相談役の池田弘一氏も、西室さんは自分が頭を下げて引っ張ってきたと話しています」
名門上場企業でありながらまるで個人商店のようなこうした振る舞いが許されるのは、安倍官邸の“後ろ盾”があるからだ、というのがもっぱらの評判だ。
もともと東芝は原発輸出や軍需など、政権と近い国策企業のひとつだった。とくに、今回の不正経理の張本人である佐々木則夫元副会長(2009年~13年まで社長)は社内で「原発野郎」と揶揄される存在だったことは本サイトでも既報のとおり。その佐々木氏は、12年に第2次安倍政権が発足するや経済財政諮問会議(13年)や産業競争力会議(14年)の民間議員に立て続けに選ばれ、安倍晋三首相がUAEやトルコなどを訪問した際には同行し、原発を売り込むほどの“仲”だった。
こうした政権との“蜜月”というか“癒着”を生み出したのが、他ならぬ西室泰三氏だったといわれている。ジャーナリストの杜耕次氏は新潮社のwebサイト「フォーサイト」(9月1日付)で西室氏の所業を〈官邸や経済産業省と一体となって国策事業の受注に血道をあげる「エレキのゼネコン」へと化した昨今の東芝を作り上げた〉と喝破している。
とくに安倍政権と西室氏の親密ぶりは尋常ではなく、第2次安倍政権発足翌年の13年には菅義偉官房長官が当時の日本郵政社長・坂篤郎氏(当時66)を強引に解任し、後任に西室氏(同77)を据え、政財界の関係者を驚かせたことは記憶に新しい。
そして何よりその親密ぶりが露わになったのが、15年の安倍政権の“目玉政策”である「戦後70年談話」の有識者会議の座長を務めたことだ。西室氏は談話について「いたずらに謝罪することを基調にするより、これから先を考えて未来志向に」と、首相の意向を最大限尊重した。安倍首相のメンツのためにも官邸が「東芝と西室を守れ」となるのも当然なのだ。
だが前述のように、その西室氏こそが不正経理の元凶であるとの声は根強い。東芝に詳しい別のジャーナリストが言う。
「西室さんを東芝きっての国際派と持ち上げる人もいますが、要は親米経済人の典型で、新自由主義者です。1996年に社長に就任するや、米国流の経営を積極的に取り入れ、98年には執行役員制を導入して取締役会を少人数で牛耳ることに成功した。99年には社内カンパニー制を敷いて、業績の責任を下に押し付ける体制をつくり上げた。目先の収益にこだわる短期的視点のリストラを繰り返し、“社会に貢献する東芝”から“株主のみに貢献する東芝”にすっかり変えてしまったのです。第三者委員会から不正経理の原因と指摘された『上司に逆らえない企業風土』は、西室体制が生んだと言ってもいいでしょう」
東芝は企業理念の「豊かな価値を創造し、世界の人々の生活・文化に貢献する」を技術で実現してきた会社だった。それが、西室氏の台頭によって株主利益の最大化を求める米国流の会社に変わってしまった。西室氏以降の歴代経営者は四半期ごとの利益水準を厳しく問われ、最後はインチキをしてでも数字を“つくる”会社にまでなってしまったわけである。
それだけではない。今回の不正経理の背景には、引責辞任した佐々木副会長と西田厚聰相談役(2005年~09年まで社長)の人事抗争があったと指摘する声が多いが、そもそもその確執の原因をつくったのも西室氏だったというのだ。先のジャーナリストはこう続ける。
「東芝はもともと重電メーカーの芝浦製作所と弱電メーカーの東京電気が戦前に合併してできた会社です。歴代トップは東大卒の重電畑と決まっていたのですが、長く非重電の営業畑を歩いた西室氏が抜擢されたことでこの慣例が崩れたんです。以来、重電系と弱電系の抗争が始まった。西室さんと後任社長の岡村正氏(=重電系、00年~05年まで社長)の確執が発端で、社内の重電vs.弱電の溝が深まった。いわれている西田vs.佐々木の対立も、西田氏がパソコン=弱電出身、佐々木氏が原発=重電出身という関係です」
西室氏は2000年に社長を退いてから5年(通常は4年)の長きにわたって会長職に留まり、相談役になった。東芝の相談役と顧問はこれまで十数人もいて、現役の社長や会長らと同じ東京・芝浦の本社ビル38階に個室を持っていた。歴代のトップ人事はこの長老たちが決めるといわれ、その頂点に君臨していたのが西室氏だ。
西室氏はその影響力を内外に示すため、かつて土光敏夫会長が使っていた部屋に陣取っている。日本郵政の社長を務め多忙ないまも週1回はこの部屋に出勤しているという。今回、引責辞任した歴代3人の社長の“任命責任”は当然、西室氏にもある。いや、これまでの経緯を考えると冒頭の経済部記者の言うとおり、不正経理の“戦犯”と言っても過言ではないのである。
そんな不正経理の“戦犯”が「戦後70年談話」に深く関与し、不正発覚後もまた安倍政権の威光をカサに東芝新体制のトップ人事に影響力を行使している。どんな不正を働いても、オトモダチの間で利権やポストを回し合う構図、これは東芝に限った話ではないかもしれない。いままさに安倍政権の下で着々と進む「日本劣化」の氷山の一角なのである。
(野尻民夫)
最終更新:2015.09.08 07:04
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