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在日米軍が謎の救助中止…御巣鷹から30年、新聞・テレビが報道しなかった日航機墜落事故のタブー!
『御巣鷹の謎を追う』(宝島社)
日航ジャンボ機123便が群馬県・御巣鷹の尾根に墜落した8月12日、テレビ各局は報道特別番組を編成、放映した。
だが、今年もあの問題にはどこも触れなかった。そう。10年前に発刊された『御巣鷹の謎を追う 日航123便事故20年』(米田憲司/宝島社)で詳細に指摘され、本サイトでも1年前に取り上げた、在日米軍機の救助中止問題だ。
これは、当時、横田基地に配属されていたマイケル・アントヌッチ中尉が証言したものだ。事故当日、日航機がレーダーから消えたすぐ後の7時15分、アントヌッチ中尉が乗ったC-130がいち早く事故現場を特定し、到着。横田管制に正確な位置を報告し、救援を要請していた。実際に、米海兵隊が厚木基地からヘリコプターで救難に向かい、8時50分には現場についていた。
ところが、突如、帰還命令が出され、救助活動は中止になったのだ。しかも、日本側はなぜか墜落地点を把握できず、防衛庁が4回にもわたって全く別の墜落地点を発表するなど、混乱状態に。結局、日本の救助隊が墜落地点に到着したのは16時間後だった。
アントヌッチ中尉はそのまま在日米軍が救助活動を続けていれば、もっと多くの人が助かっただろうと証言していた。
しかし、この証言はこれまでほとんど新聞やテレビでまともに検証・報道されることなく、タブーとして封印されてきたのだ。
それでも、事故から30年目となる今年は、いくつかの番組で事故現場特定の問題点を扱っており、なかには、もしや?と期待させられた番組もあった。
たとえば、『日航ジャンボ機事故 空白の16時間 ~“墜落の夜”30年目の真実~』(NHK・8月1日初回放送)は、墜落から事故現場の特定までにかかった約16時間を丹念に追ったドキュメント。警察や防衛庁の内部資料を掘り起こし、関係者100人以上に取材をしたという労作だ。
当時の航空自衛隊の幹部や長野県警の現役警察官に加え、事故現場に急行した自衛隊救難ヘリ2人の機長の証言まで織り込んで、現場の混乱ぶりや防衛庁と警察の足並みがそろわなかった実態を明らかにしている。
ところがこの番組中でも、在日米空軍のC-130輸送機がいち早く現場に到着していた事実を全く報じていない。
特に番組内で「自身の経験が役に立てば、と今回初めて証言をしました」といわば鳴り物入りで登場した当時の救難ヘリ機長・林璋三等空佐(当時)の話には拍子抜けした。
実は、林氏が証言をしたのは厳密にいえば初めてのことではない。事故のあった1985年11月号の『航空ジャーナル』で航空評論家の青木謙知氏の取材に答えているのだ。
そのなかで、「現場に到着すると、上空を米空軍のC-130が旋回し、またその下にはUH1が飛行していた」「まずC-130とコンタクトを取り、その後UH1と入れ替わって高度を下げていった」という重要な証言をしている。
つまり、自衛隊は米軍が先に事故現場に着いて待機していたことを把握していたわけだが、番組中で林氏はこのことには全く触れず、当日の事故現場の火災の様子や救助を断念して撤退した思いを語るだけなのであった。
これでは、たとえ「初めての証言」だったとしても、真実の解明に役立つとはとてもいえないだろう。
アントヌッチ証言によれば、自らが指示を受けて捜索に向かったことや、一緒に現場に待機していたUH1ヘリが乗務員を降下させる準備までさせていたのにもかかわらず、急遽司令部の命令で中止、撤退させられていたことも明らかにされており、この米軍の動きと自衛隊=防衛庁との間でどんなやり取りがあったかということが捜索活動の初動における重要な問題点であることは、取材する記者であれば分からないわけがない。
事故調の報告書にまで「現場を通過中のC-130」と、あくまで現場を通りかかったようにしか書かれていないことと合わせて考えても、どうも、この事実を掘り起こして欲しくないという極めて政治的な作為を感じずにはいられない事象なのである。
『8.12日航ジャンボ機墜落事故 30年の真相』(TBS系/8月12日放送)でも、この姿勢は同様だった。
現場に最も早くC-130が到着していた事実は報じていたが、それだけ。なぜ米軍が救助にあたらなかったのかについての言及はなく、「米軍への救助要請も検討されたが実現はしなかった」とサラリと流してしまっている。
そして、この番組にも先の林元機長が登場していた。やっぱり米軍機のことは語らなかったのだが、墜落現場については、「間違いなく御巣鷹の南東ですよ、と報告しているのですが、それがどこでどう変わってしまったのか今もってわかりません」と述べており、正しい墜落地点が伝わらなかった捜索体制へ不信感を抱いていることは伝わってきた。それだけに、米軍についての証言だけは避けているかのような対応に、余計に不自然さを感じてしまった。
事故を風化させないという観点からも、日航ジャンボ機墜落事故の番組が、この時期に作りつづけられる意味は決して小さくないだろう。
ただし、そこには二度と事故を起こしてはならないという決意と、タブーなき徹底検証という意図がなければ、単なる夏の風物詩のようになってしまうのではないだろうか。
今年のどちらの番組も、番組の端々にはその心意気が感じられるものはあった。しかし、だからこそあえて言いたい。タブーにも切り込んでくれる強さが見たかった、と。
(田部祥太)
最終更新:2015.08.15 11:24
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