やはり出た!週刊誌の百田尚樹『殉愛』擁護記事…文春、新潮は恥ずかしくないのか

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「週刊新潮」(新潮社)12月18日号

 先日、本サイトが予告した通り、週刊誌による百田尚樹とやしきたかじんの妻・さくら夫人の擁護キャンペーンが始まった。「週刊新潮」(新潮社)では百田とともにさくら夫人が取材に応じ、「週刊文春」(文藝春秋)のほうは百田が「林真理子さんの疑問にお答えします」という手記を寄稿した。

 しかも、内容も予想通りだ。百田の勝手な主張を載せているだけの「文春」はもちろん、一応、検証記事の体裁をとっている「新潮」も百田とさくら夫人の主張に丸乗り。これまで本サイトや2ちゃんねるで投げかけられてきた疑問にほとんど答えておらず、何の反論にもなっていない。

 まず、ふたりが否定しているのは、ネット上で暴かれたさくら夫人のイタリア人男性との結婚に端を発した“たかじんとイタリア人男性との重婚疑惑”だ。「新潮」ではイタリア人男性との離婚届の受理証明書を掲載し、2012年3月1日に離婚が成立していることを証明。たかじんと結婚したのが13年10月であるため、“さくらさんに重婚の事実はない”と主張している。

 だが、これは明らかに問題のスリカエだろう。たしかに一部のネットユーザーが“重婚の疑いがある”と指摘していたのは事実だが、本サイトは最初から“重婚とは限らない”と書いていたし、他のサイトも問題にしていたのはもっぱらさくら夫人が結婚歴を隠していたこと、たかじんとつきあい始めた後もしばらくはイタリア人夫と仲睦まじく結婚生活を続けていたという不倫疑惑だ。

 この点について、さくら夫人は「私とそのイタリア人男性は結婚の翌年の夏頃にはうまくいかなくなり、翌春には別居状態になっていました」と説明し、ネット上で発掘されたさくら夫人のブログに綴られているイタリア人夫との仲睦まじい様子についても「(日本にいる)家族を安心させるために」わざとアップしたものだと弁明している。

 百田も「文春」の手記や「新潮」のコメントで同様のことを主張し、離婚の経緯を「やがて離婚の話が出て、夫がイタリアから離婚同意書にサインするために来日したのと同じ頃、彼女はたかじん氏と出会った」と書いている。

 しかし、このふたりの“言い訳”は、きっと『殉愛』を追及してきたネット民にとって失笑を禁じ得ないものだろう。

 だいたい、百田はさくら夫人が離婚同意書にサインするために夫が日本へやってきたというが、その頃のブログは、〈あたしにとっては、「結婚2周年イヴ」、「ハニー、日本来日イヴ」でもあります〉〈妻として、イタリアへカードとスイーツを送りました〉と幸せ感が全開。来日時も、クリスマスデートの模様を数々の写真つきで紹介し、〈あたし、日本でしか買えないであろう、本人の欲しい物をあげようと思っていたので用意していませんでしたが、ハニーからはアクセサリー〉と、終始のろけっぱなしなのだ。

 いくら家族を安心させたいからといって、離婚同意書にサインする段になって、まだこんなにラブラブぶりをアピールするなんてことがありえるのか。また、ブログには、夫の写真もアップされているが、離婚するためにやってきた夫が演技でここまで幸せそうな笑顔をつくることができるものなのか。

 また、イタリア人夫は帰国後にTwitterで「2 days: longest period without talking with my wife :()」とつぶやいている。離婚同意書にサインをした夫が「my wife」と書くのも不自然だが、それ以上にありえないのは、「2日間、こんなに妻と話せてないなんてはじめてだ」と書いていることだ。つまり、これはそれまで、毎日会話をする仲睦まじい関係だったということだろう。

 しかも、唖然とさせられるのは、百田がこうした彼女の過去を隠したことを、プライバシーを明かす必要がないと思ったから、などと強弁していることだ。「文春」では、「(たかじんは)妻のプライベートは公表したくないとも考えていました」とまたぞろ会ったこともないたかじんのせいにし、「新潮」では、ネット上で話題となっているイタリア人男性以外との結婚歴疑惑を受けて、「複数の離婚歴があったとして、それだけで未亡人を“悪女”と決め付けて良いのでしょうか」と抗弁している。

 そもそも『殉愛』自体がプライバシーを売り物にした本なのに一体何を言っているのか、という感じだが、百歩譲って、プライバシーに配慮したとしても、さくら夫人の結婚・離婚の話に触れなければいいだけ。それを百田は事実にはない架空の話をでっちあげ、虚偽を書いているのだ。

 たとえば、さくら夫人はたかじんと初めてふたりきりで出会った夜、「イタリアには彼がいるの?」と訊かれて、「親しい男性はいます」「(恋人とは)違います」「でも、父は彼と結婚したらいいと言いました」などと答えているし、別の箇所でははっきりと「独身」とも書いている。そう。わざわざ嘘の会話や身の上話しを創作しているのである。つまるところ、これは百田センセイが朝日新聞に向かって叫んでいた“捏造”ではないか。

 もちろん、百田とさくら夫人の反論は重婚疑惑の否定だけに終わらない。次に挙げているのが、たかじんが書き遺したとされる通称“たかじんメモ”の偽造疑惑だ。ネット民をはじめ、たかじんの元弟子である打越もとひさ氏や作詞家の及川眠子氏らも“あれがたかじんの字か?”と疑義を呈していたが、「新潮」は「この“疑惑”についてもすでに答えは出ている」と断言している。

 が、お笑いなのは、「週刊新潮」が根拠として挙げているのが、なんと「探偵ファイル」が依頼した筆跡鑑定結果なのだ。「探偵ファイル」がその鑑定結果をニュース記事として配信した際には、百田は〈拝見しました!プロの鑑定結果は心強いです〉〈プロの筆跡鑑定人が見たら一目瞭然!〉と嬉々としてリツイートしていたが、ここでも「新潮」は百田に丸乗りしているわけだ。だいたい、いつもは重箱の隅をつつきまくる「新潮」なのに、今回は自ら鑑定を依頼することもなく、ネットメディアの情報だけで断言までするという体たらく。すべては百田を庇うためにお膳立てしていることがありありとわかる。

 しかし、そんな「新潮」も庇いきれなかったのは、たかじんの娘・Hさんのメール問題だ。

 現在、Hさんは『殉愛』の出版差し止めと損害賠償訴訟を起こしているが、その焦点のひとつが、『殉愛』で百田が書いているHさんがたかじんに送ったメールの内容。『殉愛』ではメールの文面について〈たかじんの携帯に娘から「なんや食道ガンかいな。自業自得やな。」という内容のメールがあった〉と記述されているが、Hさんは「週刊朝日」(朝日新聞出版)のインタビューでこれが虚偽の文面であることを主張。正しくは〈話したいことあるって言うから何かあるんやろなと思っていたけど、そういうことかいな。ショックやな。今週末大阪行くから会いましょうよ〉だったとしている。

 また、Hさんは「新潮」でも同じように証言。「新潮」としては訴訟問題でもあるため、仕方なくHさんの言い分も掲載したのだろうが、一方でこのHさんの主張に対するさくら夫人の反論は、こうだ。

「お嬢さん(Hさん)からメールが来たとたん、主人は“自業自得や言いよんねん”と吐き捨てたのです。ただ、主人は嫌なメールはかたっぱしから消す人だったので、今は残っていません」

 驚くべきことに、さくら夫人はHさんのメールを実際に見たわけではなく、たかじんから聞かされただけなのだ。ということは、百田はメールの現物を見てもいないのに、一方的にHさんを貶めるような内容を書いたということになる。よくも自信満々に「(ネットで『殉愛』を批判する者は)事実を何も知らないのに」などといったものである。

 さらに、「新潮」は、娘のHさんの弁護団が「週刊朝日」のインタビューで明かした遺産相続をめぐる問題についてもふれているが、これも全く反論になっていない。Hさん側は『殉愛』を名誉毀損で訴えた訴状で、「さくら氏が無償の愛を注ぎ、相続にも何も求めず謙虚な姿勢を示してきたという作品の基調はそもそも事実に反する」とし、「週朝」ではHさんの弁護士がこんな証言をしている。

「たかじんの金庫には2億8千万円の現金があったが、さくら氏はこのうち、1億8千万円は生前、取り交わした業務委託契約に基づいて自分のものだと主張している」

 また、さくら夫人は、当初の遺言執行人であるY弁護士を途中で解任しているのだが、その際、Y弁護士が〈さくら氏から言われたことに驚きを受けました。その内容は自宅金庫の中の現金は私のものにして欲しいというものでした〉という陳述書を提出したことが明らかになっている。

 ところが、これに対するさくら夫人の反論は「あの陳述書に書かれている発言は全部嘘です。」というだけのもの。それでいて、「(金庫から)4000万円がなくなっていた」として、「窃盗もしくは横領で刑事告訴することも視野に入れています」と、お金に対する並々ならぬ執着を見せている。

 ところが、これでも百田は“さくらさんは自分からはお金を要求していない”“たかじん氏が妻が生活に苦しむことのないようにいくばくかの財産を遺しただけ”などと強弁し、「文春」も「新潮」もそれに疑義を一切はさむことなく丸乗りしているのだ。

 他にも、たかじんの娘・Hさんは「偲ぶ会」で野次を飛ばしたと書かれたことなど、いくつかの『殉愛』の記述が事実無根であると主張しているが、これらの疑問には答えないまま沈黙を守っている。

 それにしても、「文春」と「新潮」の記事を読むと、いかに文藝春秋と新潮社が百田に気を遣っているかがよくわかる。そもそも、Hさんのメール内容にしても、これは『殉愛』が書いたことなのだ。なのに「新潮」では、このメール問題を検証する箇所でそれが『殉愛』の記述であることをまったく触れていない。しかも前述したように、百田はたださくら夫人からの伝聞で書いたに過ぎないのだ。いくら擁護記事だとしても、メールの真偽について百田に一言くらい聞いてもいいはずだが、それすらもしないのである。要は、百田に不都合なものはすべて排除したのだ。きっと、「新潮」や「文春」にとってみれば、さくら夫人が語ることが本当なのかどうかなど、もはやどうでもいい話。ただただ百田を守りたいだけというのが本心なのだ。

 重ねていうが、今回の「文春」「新潮」で展開した百田の主張は、本質的な問題の反論にはなっていない。相変わらずの嘘の上塗りとごまかし、そして都合の悪いことは無視。そんなものを擁護して一方的な記事を垂れ流す「文春」「新潮」は林真理子が指摘した通り「もうジャーナリズムなんて名乗らない方がいい」だろう。

 それはもちろん、この後、相次いでさくら夫人の擁護記事を載せる予定の「フライデー」(講談社)や「フラッシュ」(光文社)も同じだ。いくら本が売れないからといって、一人の売れっ子作家にここまですがり、事実をねじ曲げてでもその作家を守ろうとする──。彼らは自分たちの姿をみっともないと思わないのだろうか。
(田部祥太)


【リテラが追う!百田尚樹『殉愛』騒動シリーズはこちらから→(リンク)】

最終更新:2014.12.17 07:15

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