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デカい女子に萌える男子が増殖中!?“巨女”マンガが密かなブームに!
『富士山さんは思春期』(双葉社)
巨女ブームが来る……。ネット界隈で、現れては消えていたこの噂が現実のものになろうとしているらしい。
そもそも巨女とはなにかといえば、読んで字の如く巨大な女性のことである。マンガやアニメ、特撮に、昔からさまざまな作品に登場してきたが、あくまで脇役やワンエピソード出演であり、メインのストーリーに絡むことはあまりなかった。それがここにきて、「good!アフタヌーン」に連載中の『ウィッチクラフトワークス』(水薙竜/講談社)や、アニメ化が決定した『七つの大罪』(鈴木央/講談社)のように、巨女を主人公にしたり、メインキャラクターに据えた作品が増えてきている。一体、何が起ころうとしているのだろうか!?
しかし、一口に巨女といっても、そのサイズは様々。平均男性より大きい(180センチ)“マイクロ巨女”から、ウルトラの母(40メートル)クラスの“ウルトラ巨女”まで、その幅は広い。まずは、近年話題の巨女キャラクターを紹介しよう。
【マイクロ巨女】
『ウィッチクラフトワークス』火々里綾火
『咲─Saki─』姉帯豊音
『富士山さんは思春期』富士山さん
『サイクロプス少女さいぷ〜』斎藤楓香
八尺様(「2ちゃんねる」で人気の怪談キャラクター)
【ウルトラ巨女】
『七つの大罪』ディアンヌ
『ONE PIECE』しらほし姫
『まりかセヴン』まりかセヴン
“マイクロ巨女”は、いってしまえばただ単に身長の高い少女である。マイクロ巨女の元祖ともいえる『The・かぼちゃワイン』のエル以降、『一騎当千』の関羽雲長や『あずまんが大王』の榊など、一部に人気キャラクターがいたものの、ブームを牽引するにまではいたらなかった。“幼女体型”な女の子が、早くから二次元で確固とした地位を築いたのにくらべ、その数は圧倒的に少なかったのだ。それが近年では、アニメ化された『ウィッチクラフトワークス』や『サイクロプス少女さいぷ〜』(寅ヤス/集英社)など、長身女性をヒロインに据えた作品が相次いで登場している。
なかでも、『このマンガがすごい!2014』にランクインした『富士山さんは思春期』(オジロマコト/双葉社)では、“マイクロ巨女”の魅力がとことん描かれている。
ヒロインの富士山さんは、顔立ちは可愛いのに180cmの長身のため、男子からは「女じゃない」と言われてしまっている女の子。幼なじみの上場君だけは、そんな富士山さんの魅力に気づき2人は付き合うことになる。身長差カップル2人の甘酸っぱい日常が淡々と続くが、素晴らしいのは上場くんが富士山さんを見つめる視点で描かれていることである。自分のかわりに高いところの物をとる富士山さんを見上げ長い手足を振り回す富士山さん、大きな体をちいちゃく屈める富士山さん……。富士山さんが持つ、頼りがいと安心感と可愛らしさが、上場くんと同じ目線で味わうことができるのだ。
“ウルトラ巨女”は、『ウルトラマンタロウ』(1973〜74年放送)で登場したウルトラの母をはじめ、特撮や漫画の中で時折登場していたが、勿論ブームになったことはかった。しかし、ひとつの性癖のジャンルとしては古くから認知されていたとされる。インターネット草創期の97年頃にはすでに巨大娘専門サイトの老舗「巨大娘普及委員会」が設立されている。このマニアックな“ウルトラ巨女”も、『ONE PIECE』や『七つの大罪』といった大メジャー作品で取り上げられ、読者をあらたな萌えの世界へと誘っているのだ。
『まりかセヴン』(伊藤伸平/双葉社)は“ウルトラ巨女”に変身する主役に据えた作品だ。ひょんなことから宇宙人“セヴン”と融合してしまった女子高生まりかが、身長38mの“まりかセヴン”に変身して地球侵略の怪獣と戦うというストーリー。特撮のお約束を踏襲しつつ、パロディにしつつ、ほんのりシリアス展開もあり、特撮好きなお父さんにはたまらない作品だ。
まりかセヴンは見た目も女性らしい、柔らかいフォルムをしている。そんな巨大美少女が、ビルの合間にそそり立つ。地響きをあげながら巨大怪獣に突進し、ビルを足場に怪獣に飛びつき、怪獣を足蹴にするまりかセヴン。一般人が見上げるとそこに、まりかセヴンの下乳、尻、ひざの裏……。そんな非現実な萌えを味わえる。
“マイクロ巨女”に“ウルトラ巨女”、パターンは様々だが、なぜいま巨女ブームなのか。いや、決して巨女人気は、きのうや今日始まったものではない。日本のマンガ草創期から巨女に魅せられた者たちがいた。
■あの巨匠も巨女マンガを描いていた!
手塚治虫と藤子・F・不二雄、実はこの日本を代表する2人の大マンガ家も巨女マンガを描いているのである。
『ドラえもん』や『パーマン』など児童向け漫画で有名な藤子・F・不二雄は、「カンビュセスの籤」や「ミノタウロスの皿」といったダークな短編を残したことでも有名。その中のひとつに「やすらぎの館」(藤子・F・不二雄〈異色短編集〉2『気楽に殺ろうよ』所収/小学館)という作品がある。内容はこうだ。
「やすらぎの館」は、政治家や大企業の社長といった一般人には計り知れない、強いプレッシャーの中で仕事をするエリートばかりが所属する会員制クラブ。そこには一人の非常に大きな女性がいる。母のような彼女の前にいると、男たちは悩みもなにもなかった幼少期へ、だんだんと退行していく……。そこで男たちはあらゆる責任とプレッシャーから解放された、幸せな子ども時代を再体験するのだ。
ここで描かれている巨女は、大人の男性にとっての母だ
あらゆる二次元萌の元祖ともいわれる手塚治虫の「こじき姫ルンペネラ」(『手塚治虫漫画全集』128「タイガーブックス」第8巻所収/講談社)は、もっと直接的だ。
追われる美少女ランプの精と、そうとは知らず恋に落ちた予備校生のドタバタ活劇がこの作品のストーリーだが、敵兵に追い詰められたランプの精が使う「ロマンポルノ術」がスゴイ。とんでもなく巨大化したランプの精が、敵兵を自身の女陰へと誘いこみ、胎内に閉じ込めそのまま押し潰してしまうというものだ。
手塚治虫にしか描けない究極の母体回帰願望である。巨女=母性とまでは言えないけれど、やはり大きいことは強いことの証明であることは間違いない。
自分より強くて安心できる女の子に憧れる男の子の気持ちは、今、どこにあるのか? 本格的な巨女ブームが来た時にそれははっきりするのだろう。
(伊作里士夫)
最終更新:2018.10.18 04:31
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