ワセダクロニクル「吉田調書報道の真実」後編

封印された朝日吉田調書報道の“続報”とは……検証を続け、新事実を明かした元特報部記者たちに朝日新聞が圧力、記事の削除要求

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新聞協会賞をとらせるため、「続報」を掲載させなかった朝日新聞の“危機管理ライン”

 池上コラムの不掲載が明るみに出たのは、『週刊文春』がネットで速報した2014年9月2日だ。それ以前は、吉田調書報道は朝日新聞社にとっての「看板」報道だった。

 その証拠に、朝日は吉田調書報道で新聞協会賞に応募した。翌年度の会社案内には取材班の木村英昭と宮崎知己の顔写真が掲載し、吉田調書報道をアピールした。その過程で犠牲になったのが本来やるべき吉田調書報道批判への反論や説明、「続報」だった。

 吉田調書報道の最初の記事の見出しは「所長命令に違反 原発撤退」だ。福島第一原発の所員が「『逃げた』と書いている」との批判が出た。だが記事には「逃げた」と一言も書かれていない。主眼は「原発の過酷事故のもとで誰が事故の収束に対処するのか」だ。

 批判は記事の主旨とズレたものだった。

 このため、朝日新聞社は続報を出すことで、記事の主旨と根拠を詳しく説明しようとした。そして、広報部を交えた編集サイドとの話し合いで、詳報を用意することが決まった。ところが、その続報はことごとく不掲載になった。

 最初に予定された掲載日は7月4日。総合面と特設面を使って、続報を展開する予定だった。しかし、7月2日に中止が指示された。中止を決めたのは、「危機管理ライン」と呼ばれる編集担当役員の杉浦信之、社長室長の福地献一、広報担当役員の喜園尚史だ。

 取材班には担当デスクから「理由は追って説明する」と伝えられた。翌日の7月3日に、新聞協会賞の応募の締め切りを控えていた。朝日新聞社の幹部は協会賞の審査を前に記事に傷をつけたくなかった、と幹部は言った。

 次の掲載予定日は7月24日に設定された。ところが、これも実現しなかった。協会賞の審査にプラスに働くのかマイナスになるのか、判断が揺れていた。

 7月25日に新聞協会賞の1次審査で吉田調書報道は落選した。吉田調書報道で新聞協会賞を受賞する目的はなくなったが、8月に入ると状況が刻一刻と変わっていった。

 まず、8月5日と6日に朝日新聞が慰安婦報道の検証を掲載した。ところが、ウソの証言をもとにした記事を取り消したのに謝らなかったことへ批判が起きた。

 8月18日には産経新聞が吉田調書を入手し、朝日新聞の報道内容を批判する。朝日新聞が5月20日に吉田調書を入手して以降、マスコミ各社は調書を入手できず報道できなかった。しかし、政府が吉田調書の公開を決定する前後から、他社が次々と手に入れた。そこからは堰を切ったように大手マスコミが吉田調書について報道する。

 それでも朝日新聞編集局はまだ強気で、再び詳報を掲載する計画を進めていた。批判を浴びている最中、特報部の担当デスクは取材班に編集担当役員の杉浦の言葉を伝えている。

「杉浦さんは『強く行け』『絶対に謝るな』と言っている」
 
 しかし、9月2日に池上コラムの不掲載が「週刊文春」にスクープされて、状況は決定的に悪化する。詳報が予定された最後の日は9月5日だったが、これも中止になった。

 結局7月から計4回、詳報の掲載が予定されたのに全て実現しなかった。

 報道内容に批判が寄せられることは、よくある。報道した側の意図が誤解される場合もある。その場合、私たちジャーナリストは追加で記事を出したり放送したりして内容を補っていく。捏造でない限り、それが読者や視聴者への説明責任だ。記事を取り消すことはありえない。

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