麻生太郎の“単一民族”発言への擁護とアイヌヘイトが跋扈するなか、アイヌのアイデンティティを描いた『熱源』が直木賞を受賞!

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
麻生太郎の単一民族発言への擁護とアイヌヘイトが跋扈するなか、アイヌのアイデンティティを描いた『熱源』が直木賞を受賞!の画像1
アイヌを描いた直木賞受賞作『熱源』


 麻生太郎財務相が13日、「日本は2000年の長きにわたって一つの場所で、一つの言葉で、一つの民族、一つの天皇という王朝が続いている国はここしかない」と発言し、大きな批判の声があがっている。言うまでもなく、日本は単一民族国家ではない。沖縄はかつて琉球王国だったし、日本列島にもたとえばアイヌなどの先住民族がいた。アイヌが先住民族であることは学術的に議論の余地のない事実であり、政府も昨年5月に施行した「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(いわゆる「アイヌ新法」)で明確に認定している。

 ところが、SNSではネトウヨたちが麻生太郎の「単一民族」発言に同調している。昨日19日放送の『サンデーモーニング』(TBS)で青木理氏が麻生氏の発言の間違いと差別性を指摘したところ、ネットは青木氏への攻撃で溢れ返った。

 さらにネトウヨたちは「アイヌは先住民族ではない」「アイヌは存在しない」「アイヌへの差別はなかった」「アイヌは嘘をついて特権を享受している」なるデマまで盛んに吹聴している。この“アイヌヘイト”とも呼ぶべき状況は、とりわけ、アイヌが先住民族であることを明記した「アイヌ新法」成立後に加速している。北海道新聞1月18日付によれば、政府が昨夏おこなったアイヌ新法施行に伴う基本方針案のパブリックコメントに寄せられた6305件のうち大半がアイヌ民族を否定するなどの差別的な表現で占められていたという。

 こうしたゆゆしき状況のなか、アイヌを否定するレイシズムと歴史修正主義に真っ向から対峙した小説が注目を浴びている。今月15日、半期恒例の芥川賞と直木賞の受賞作品が発表され、樺太のアイヌたちを中心に描いた『熱源』(川越宗一/文藝春秋)が直木賞に輝いたのだ。

 作者の川越宗一にとって第二作目にあたる『熱源』は、日本発の南極探検隊に参加したアイヌの一人として知られるヤヨマネクフ(和名・山辺安之助)と、ポーランド共和国の初代国家元首の兄で文化人類学者のブロニスワフ・ピウスツキという、実在した二人の人物が主人公。純粋なノンフィクションではないが、巻末の主要参考文献には様々な史料が並べられており、読後感は重厚な歴史小説のそれだ。

 ヤヨマネクフとブロニスワフという同世代の二人を中心として、物語は明治初期から第二次世界大戦までの極東とヨーロッパを股にかける。ロシアから独立を果たしたポーランド共和国“建国の父”ユゼフ・ピウスツキや、大隈重信、二葉亭四迷、金田一京助らが絡んで織りなすスケールは圧巻。導入だけでも紹介しておこう。

 物語は西暦1880年代後半、明治初期から始まる。ヤヨマネクフは樺太(サハリン)生まれのアイヌ。日本とロシアが1875年に締結した樺太千島交換条約で、樺太はロシア領となっている。ヤヨマネクフは9歳のときに北海道へ渡らされ、同じ樺太アイヌの親友・シシラトカ(和名・花守信吉。のちに南極探検隊に参加)や、和人とアイヌの血を引く千徳太郎治(のちに『樺太アイヌ叢話』などを著す教育者)ら仲間とともに、対雁の開拓地で青年期を過ごす。だが、その対雁と来札のアイヌ集落を疫病が襲う。ヤヨマネクフは、ある思いを胸に故郷である樺太へ帰還する。

 一方のブロニスワフは現在のリトアニア生まれ。リトアニアは中世に隣国・ポーランドと連合したが、戦争によって18世紀末にポーランド・リトアニア共和国は解体。大部分がロシア帝国の領土となっている。ポーランドの独立・革命志向を持つ大学生のブロニスワフは、アレクサンドル・ウリヤノフ(レーニンの兄)らとロシア皇帝暗殺を計画した罪で樺太へ流刑となる。入植囚として労役するなか、現地のニヴフ(ギリヤークとも。少数民族)の人々との交流を始めるブロニスワフ。あるきっかけから、樺太アイヌら少数民族を研究する学者となる。

 この“故郷”を求める二人が、20世紀始めの樺太で邂逅する。そこから、大国ロシアと新興国日本に翻弄されるアイヌたち少数民族の人々の生活を中心に、日露戦争、第一次世界大戦、第二次世界大戦と年月を重ねながら、まるで運命の歯車とでも呼ぶべき物語が本格的に始動していくことになる──。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

麻生太郎の“単一民族”発言への擁護とアイヌヘイトが跋扈するなか、アイヌのアイデンティティを描いた『熱源』が直木賞を受賞!のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。アイヌサンデーモーニングヘイト川越宗一熱源直木賞編集部青木理麻生太郎の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍政権がまた「災害ないがしろ」!被災地に耐久性不十分の段ボールベッド
2 「東京でコロナ感染224人」は本当に検査を増やしたせいだけなのか
3 東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望も、安倍政権は
4 東京の感染者は7月1日から100人超、発表67人を139人に修正
5 「桜を見る会」で昭恵夫人、菅官房長官と写真の“大物半グレ”が逮捕
6 森友公文書改ざんで安倍首相を守った太田充主計局長が財務省トップに
7 GoToキャンペーンは、 “影の総理”今井補佐官と菊池桃子の夫が経産省の利権に
8 葵つかさが「松潤とは終わった」と
9 アパホテルのトンデモ極右思想の正体
10 安倍政権がコロナ増税の動き! 新会議に震災で復興税導入を主張した経済学者
11 河井克行の買収に安倍事務所が関与の新証言!現金渡した相手を首相秘書が訪問
12 小池百合子が当選後、コロナ対応担う都立病院の合理化計画
13 香港問題で安倍首相と自民党の二枚舌
14 マツコがいじめ、弱者叩きの構造を喝破
15 大谷医師が明かしたネトウヨの電凸攻撃!「反日」と怒鳴り込まれたことも
16 小池百合子都知事が東京アラート解除のため陽性者数を操作していた疑惑
17 田崎史郎が『モーニングショー』から消えた! 原因は玉川徹?
18 嵐の暴露本出版!メンバーの不仲話も
19 吉村洋文知事がコロナワクチン開発でもペテン手口!
20 年金積立金が1~3月期で18兆円マイナス! 国民の年金を溶かした安倍政権の責任
1東京の感染者は7月1日から100人超、発表67人を139人に修正
2 年金積立金が1~3月期で18兆円マイナス! 国民の年金を溶かした安倍政権の責任
3小池百合子都知事が東京アラート解除のため陽性者数を操作していた疑惑
4小池百合子が当選後、コロナ対応担う都立病院の合理化計画
5森友公文書改ざんで安倍首相を守った太田充主計局長が財務省トップに
6GoToキャンペーンは、 “影の総理”今井補佐官と菊池桃子の夫が経産省の利権に
7大谷医師が明かしたネトウヨの電凸攻撃!「反日」と怒鳴り込まれたことも
8 河井克行の買収に安倍事務所が関与の新証言!現金渡した相手を首相秘書が訪問
9「専門家会議廃止」の裏に緊急事態宣言の解除をめぐる安倍官邸と専門家の対立
10 安倍政権がコロナ増税の動き! 新会議に震災で復興税導入を主張した経済学者
11東京都の感染者100人超で小池知事、加藤厚労相、安倍首相の仰天言動
12吉村洋文知事がコロナワクチン開発でもペテン手口!
13東京女子医大がボーナスゼロで400人の看護師が退職希望も、安倍政権は
14安倍首相がイージス・アショア停止を悪用して「敵基地攻撃能力」保有へ
15安倍政権がまた「災害ないがしろ」!被災地に耐久性不十分の段ボールベッド
16「桜を見る会」で昭恵夫人、菅官房長官と写真の“大物半グレ”が逮捕
17河井事件でバービーが「安倍首相の名前で金を受け取らせたのは圧力」
18「東京でコロナ感染224人」は本当に検査を増やしたせいだけなのか
19小池百合子、小野泰輔の“ヘイト”に津田大介が切り込んだ
20香港問題で安倍首相と自民党の二枚舌

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄