朝ドラ『なつぞら』が宮崎駿・高畑勲も闘った「東映動画・労使紛争」を矮小化! 労働組合の意義、会社との対立をなかったことに

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高畑勲初監督作品『太陽の王子 ホルスの大冒険』も労働組合があってこそ生まれた

 この長編映画は、坂場のモデルとなっている高畑勲の映画初監督作品『太陽の王子 ホルスの大冒険』が下敷きになっているはずだが、この作品制作は労働組合の活動があってこそ生まれたといってもいい作品だ。奥山氏はこのように振り返っている。

「それまでの演出は、アニメーターに大胆に任せる作画主導型でした。この作品では初めて演出主導の中央集権的なスタイルになったわけです。思いつきのアイデアを連ねるのではなく、作品本意でアイデアを演出が取捨選択する。キャラクターは公募したものを大塚(康生・作画監督)さんの個性でまとめて形にする。そうした新体制と「きちんとした作品を作りたい」という組合の意志の下に、賛同する人が集まりました」(前掲『日本のアニメーションを築いた人々』より)

 同様に、作画監督の大塚康生氏もこう綴っている。

〈東映動画の長編アニメの歴史のなかに、突然変異のように生まれた『太陽の王子 ホルスの大冒険』を考える時、労働組合の存在をぬきにしては語れない部分があります。高畑さんも私も、その他すべてのスタッフが、それまでの組合活動を通じて、いい映画を作りたい、では、いい映画というのは何なのかということをよく話しあっていました。そして、その問いに答えようとしたのがこの映画だったのです〉
〈制作過程でも、高畑さんは組合民主主義を体現していました。この映画に参加した私には、それまでのどの映画よりも、自分の持っている可能性が生かされたという喜びがありました。たぶん、全員に同じような感激があったと思います〉(大塚康生『作画汗まみれ』文春ジブリ文庫より)

 大塚氏によると、当時の東映動画は〈各パートのあいだ、アニメーターのあいだの交流がなく、相互不信がひろがっていて、作品をいっしょに作っていくという結束に欠けていた〉が、〈組合の組織化の過程で自然とほどけていきました〉という。このようななかで制作された『ホルスの大冒険』はその結晶とも言えるものだったのだ。

 だが、『なつぞら』では労働組合の活動をなかったことにしてしまったため、こうしたアニメーターの結束や「きちんとした作品を作りたい」という意志、これまでになかった制作スタイルといった重要な部分が掘り下げて描かれなかった。『なつぞら』は、女性アニメーターとして先駆的存在である奥山氏をモデルにし、さらには高畑・宮崎をモデルにした人物まで登場させながら、「アニメ制作の現場の話よりも恋愛模様ばかり」という意見もあがっているが、その要因のひとつには、現実にはあった労働組合の存在を無視したことにあるのではないかと思わずにいられない。

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