『沖縄スパイ戦史』三上智恵監督・大矢英代監督インタビュー

「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根だ!『沖縄スパイ戦史』監督が語った”スパイ”という名の分断

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
okinawaspysenshi_01_180727.jpg
7月28日より東京でも公開されるドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』を監督した大矢英代氏(左)と三上智恵氏(右)

 県民の約4分の1が死亡した沖縄戦。6月23日の慰霊の日に行われた沖縄全戦没者追悼式で、翁長雄志知事は「辺野古に新基地を造らせないという私の決意は県民とともにあり、みじんも揺らぐことはない」と力を込めた。

 一方、安倍首相は「基地負担軽減に全力を尽くす」と述べた。嘘だ。政権に辺野古新米軍基地の建設強行を止める気配は微塵もない。石垣島、宮古島、与那国島への大規模な自衛隊とミサイル基地の配備も推し進めており、石垣市では中山義隆市長が7月18日に陸自配備受け入れの方針を正式に表明した。

 安倍政権の建前は「防衛強化」だ。過去最大、約5兆3000億円の来年度予算を要求する防衛省の長・小野寺五典防衛相は、沖縄全戦没者追悼式の直後に「我が国の平和と安全は自衛隊が担っている」との訓示を出した。

 しかし、“戦争に備える軍隊”は、本当に人々を守るのか。

 7月公開のドキュメンタリー映画『沖縄スパイ戦史』は、過去と現在の双方からこの問題をえぐった。沖縄米軍基地や自衛隊ミサイル基地配備問題などを追い続ける三上智恵監督と、三上監督の琉球朝日放送時代の後輩にあたる大矢英代監督、ふたりの女性ジャーナリストによる共作だ。

 両監督の丹念な取材で一次証言や資料を集めた本作は、沖縄戦における少年ゲリラ兵、軍が住民を強制移住させた「戦争マラリア」の問題、本土から送り込まれた陸軍中野学校出身者の暗躍、そして、軍統制下での秘密保持と相互監視のもとで起きた「住民虐殺」の真相に迫る。

 共通するキーワードは、表題にあるとおり「スパイ」。周知の通り、昨今では新基地や自衛隊配備に反対する人々が、右派やネット右翼から「工作員」「回し者」と攻撃され、テレビや新聞などのマスメディアまでもが沖縄をめぐるデマに加担している。両監督はそうした安倍政権下の状況をどう見ているのか、自衛隊の問題にも踏み込んで話を伺った。ぜひ、最後まで読んでもらいたい。

********************


──これまで『標的の村』や『戦場ぬ止み』『標的の島 風かたか』で、高江のヘリパッドや辺野古新基地の建設、先島諸島の自衛隊・ミサイル基地配備の問題を描いた三上監督が、今作では大矢監督とともに沖縄戦を扱いました。なぜいま沖縄戦、それも「スパイ」をテーマに選んだのでしょう。

三上 みなさんそれを聞きますよね(笑)。三作の映画をつくってみて、まだこれではダメだと思ったからです。辺野古や高江の問題は、沖縄が大変だということではない。もう日本自体が壊れていて、民主主義も国民主権も三権分立も手放そうとしている。そのことの警鐘としてやってきました。
 だけれども、その危機感はほとんど浸透していない。たとえば一作前の『標的の島 風かたか』は、具体的に始まっていく宮古・石垣の自衛隊による要塞化が日本の運命をどう変えていくかということを打ち出したのに、ほとんど後追いもされませんでした。だから、基地建設反対運動や沖縄や離島の文化というのを絡めてドキュメンタリーとしていく手法は、もう甘いんだなって思ったというのがひとつ。
 もうひとつは、日本人は「次の戦争はピカっと光って終わりの核戦争だ。いまどき白兵戦をやるわけがない」と決めつける人が多いですけど、いま、世界中で戦われている戦争って、実際には核戦争じゃないですよね。テロであり、ゲリラであり、スパイによる秘密戦なんです。秘密戦というのは恐ろしい世界で、言わば、敵兵の顔も見ずに、弾に当たる前に殺される人が出る。そうしたいま起きている、起ころうとしている恐怖を知ってもらうために、私たちが放送局時代から取材してきた沖縄戦に何を学ぶべきかと考えて、この題材を選びました。

大矢 実は当初のタイトル候補は「沖縄裏戦史」だったんですよ。でも「裏」というよりかは、全編を通して「スパイ」の話なんですね。陸軍中野学校という本土でスパイや秘密戦、ゲリラ戦などの教育を受けた青年将校が沖縄に赴任し、10代の少年たちを集めてゲリラ兵にした「護郷隊」。私が学生時代から取材してきた戦争マラリアの問題もそうです。たとえば、波照間島の住民は日本軍によって悪性マラリアの蔓延する西表島に強制移住させられ、島民の3分の1が命を落としましたが、実は、その前に中野学校出身者が学校の先生として偽名で赴任してきて、住民の生活を秘密裏に監視していました。強制移住は住民を守るためではなく、食料確保や情報を漏洩させたくない軍の都合だった。
 つまり「スパイを防止する」という名目で住民のスパイをしていたのです。人々を守るためじゃなくて、日本の国体を守るためですよね。軍が住民に住民を監視・密告をさせて作成した「スパイ容疑者リスト」の存在と、疑心暗鬼になった住民同しによる虐殺も、背景には機密を保持するという軍の論理がありました。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

「反基地運動は中国のスパイ」デマも同根だ!『沖縄スパイ戦史』監督が語った”スパイ”という名の分断のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。インタビュー三上智恵大矢英代沖縄沖縄スパイ戦史編集部の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 菅首相が所信表明演説でごまかした原発の新増設の可能性
2 橋下徹が日本学術会議デマの取材に「無償インタビューに応じていない」
3 保釈 河井案里被告と菅首相の特別な関係を物語る”パンケーキ動画”
4 安倍が徴用工問題で「ファクト示すのが一番」とツイートしツッコミ殺到
5 三浦瑠麗が松本人志の悪質セクハラ発言を「問題ない」と擁護
6 菅首相のベトナムでのスピーチが露呈した「教養のなさ」
7 橋下徹が都構想で使った詐術を検証!
8 自民党がネトサポに他党叩きを指南
9 三浦瑠麗CM出演でアマプラの解約運動が……DaiGoは批判も的外れ
10 菅首相の著書改ざんは“都合の悪い記録は残さない”という宣言!
11 「日本学術会議」任命拒否問題で平井文夫、志らく、橋下徹、八代英輝が…
12 ケントギルバート、ネトウヨ化の理由
13 宮台真司「ネトウヨは感情の劣化」
14 ホリエモン擁護のロンブー淳が「切り取り」反論も…発言はもっと一方的
15 フジテレビがお台場カジノ開発を計画
16 菅政権「成長戦略会議」恐怖の顔ぶれ! 竹中平蔵、三浦瑠麗、アトキンソンも
17 欠陥だらけ GoToイートの背景に菅首相と「ぐるなび」会長の特別な関係か
18 渡辺謙も批判!安倍のアンチ核軍縮路線
19 青木理に官邸の仕掛けで不倫情報
20 維新応援団・野村弁護士が懲戒、橋下徹にも請求が
1杉田和博官房副長官「公安を使った監視と圧力」恐怖の手口!
2欠陥だらけ GoToイートの背景に菅首相と「ぐるなび」会長の特別な関係か
3菅首相のベトナムでのスピーチが露呈した「教養のなさ」
4 中曽根首相「1億円合同葬」強行、教育現場に弔意強要 「前例踏襲」の嘘
5甘利明、下村博文、高橋洋一、橋下徹も……日本学術会議攻撃のフェイク
6菅政権「成長戦略会議」恐怖の顔ぶれ! 竹中平蔵、三浦瑠麗、アトキンソンも
7菅首相の著書改ざんは“都合の悪い記録は残さない”という宣言!
8 フジテレビがお台場カジノ開発を計画
9二階幹事長はリアル『半沢直樹』? 日本航空がらみの土地取引疑惑も
10安倍が徴用工問題で「ファクト示すのが一番」とツイートしツッコミ殺到
11菅首相が所信表明演説でごまかした原発の新増設の可能性
12橋下徹が日本学術会議デマの取材に「無償インタビューに応じていない」
13 保釈 河井案里被告と菅首相の特別な関係を物語る”パンケーキ動画”

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄