村上春樹「侵略は事実、謝るべき」発言はポーズじゃない! 初期作品にも東アジアへの罪の意識

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 しかし実は、こういった村上の政治への言及はここ最近になって始まったものではなく、過去の作品の中にもその歴史認識に起因する、政治的なメッセージが込められていたとする見方も存在するのをご存じだろうか。例えば『羊をめぐる冒険』(講談社)では旧満州でのことが描かれ、『ねじまき鳥クロニクル』(講談社)はノモンハン事件について書かれるなど、特に東アジア、中国と日本との歴史のかかわりを意識してきたのが村上文学の特徴であるというわけである。

 「文學界」(文藝春秋)15年7月号に掲載された、 ジャーナリストの小山鉄郎による評論、「村上春樹の『歴史認識』」では、村上の長編第1作『風の歌を聴け』が、8月15日からの1週間を意識して書かれたことや、長編第2作の『1973年のピンボール』における、「208」「209」というトレーナーを着た双子の女の子の登場を、それぞれ「昭和20年8月」「昭和20年9月」を示していると読み取り、第1作が日本の敗戦から1週間を、第2作が日本の敗戦から1か月のことを意識しているとし、以下のように書いている。

 「つまり第1作『風の歌を聴け』(講談社)も第2作『1973年のピンボール』(講談社)も、日本の戦争と敗戦というものを意識して書かれた作品であると受け取ることによって、旧満州や日露戦争のことを含んで書かれた第3作『羊をめぐる冒険』までの初期3部作を、一貫した歴史意識によって書かれた作品として読んでいくことができるのだと思う」

 村上が実は戦前日本の歴史を換骨奪胎し、あの一見オシャレでスタイリッシュな作品の中に、その歴史への思いを埋め込んでいたというのだから驚きである。
 また魯迅や中国文学の研究者で、村上作品の中国での受容についての著作を持つ藤井省三・東京大学教授は、06年に行われた村上作品をめぐる国際シンポジウムのワークショップで以下のように述べている。

「(略)中国への裏切りといった問題を、村上は最初の短篇で描いている。そもそも村上の父親は戦時中、学徒出陣で中国大陸に送られました。兵隊として大陸に行ったという日本の父たちの戦時体験を、村上春樹は「中国行きのスロウ・ボート」で自らの原罪として継承しようとしたのではないでしょうか。つまり村上春樹とは、近代日本の歴史の記憶を強く意識した作家なのです」 (『世界は村上春樹をどう読むか』文春文庫)

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