中年男性200人を10年間にわたって定点観測してみたら…浮かび上がる男たちの怯え

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 40代前半の建設会社で働く会社員は、複数の20代の「セフレ」と独身生活を満喫している。とはいえ「衰え」は否めない。ネットで個人輸入した怪しげなED治療薬で急場をしのいできた。いわく「女の子が前ほど満足してくれていないように感じたのがもう、耐えられなくて」。

 しかし思わぬ落とし穴があった。ED治療薬をうっかり切らすと、元に戻ってしまう。当たり前と言えばそうなのだが、それが情けなく、塞ぎ込み、ついには鬱病を発症。心療内科に通い抗鬱剤を処方されているが、鬱の症状は改善するものの薬の副作用で性欲は低下してしまう、というスパイラルに突入してしまった。

 いずれも「老い」を自然なこととして受け入れられない気持ちと、それに拍車をかける企業やサービスの「アンチエイジング賛美」的なアピールが、事態を悪化させているように思える。

 人生の様々な局面において、男たちの悩み、苦しみ、おびえがいかに深く、重いものであるか。その現実を思い知らされつつも、どこか違和感を覚えるのだ。

 それは、男たちがおびえているのは、結婚や育児、介護など困難を強いられる状況そのものだけではないということ。「その状況にいる自分」が周囲からどう思われているかという不安、問題を「解決できない自分」を受け入れられない鬱屈など、具体的に存在するかどうかあいまいな懸念材料を自ら作り出しておびえているように見えるからだ。想像力(ときには妄想)によって生み出された「見えない影」、現実には存在しない幻影と闘っているかのようだ。

 驚くほどナイーブで、他者との比較に過敏に反応する。ポジティヴな意味での「鈍感さ」や「俺は俺」という開き直りが恐ろしく欠如している。人間、やれることには限界はあるのだが。

 しかしこれは言うまでもなく、メディアや企業や行政さえも、巧妙な「意図」において男たちを誘導しているのがこうした災難の導火線となっている。「婚活」「イクメン」「ケアメン」を喧伝し、タクシーには「精力アップ」「アンチエイジング」を訴えるパンフレットが待ち構えている。景気の回復が官邸発表以外からは聞こえてこない状況において、家計の担い手として存在感の危うい男たちが、迫られるままに何かに縋るのは自然なことなのかもしれない。
(相模弘希)

最終更新:2015.06.01 08:04

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