山本貴光+吉川浩満トークイベントレポート

ネット時代こそ本を読め! でもどうやって…膨大な数の本に戸惑っている人のための読書術

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吉川自作の「新刊カレンダー」

「次に、これは大昔からある技術なんですが、RSSフィードを読む、というのがあって。こちらが指定しておけば、特定のサイトの新しく更新された情報が、放っておいても勝手に流れてくる、というものです。私は“本”というカテゴリをつくっていて、この中には主要五紙の書評と、図書新聞などの書評新聞と、主要ニュースサイトと、個人の書評サイト、こうしたサイトを登録しています。これを見ておけば、まあ、どんな書評が出て、どんな本が話題になっているかわかる。……なにがなんだかわからないという方もいると思うのですが、私が使っているRSSフィードを、とりあえず哲学の劇場のサイトに載せておいたので(http://logico-philosophicus.net/?p=60)、とりあえずそれをインポートしてもらって、試してみて、必要があればカスタマイズしてもらえたらと思います」

「三つ目はいわゆるツイッター。まあ、いつも見ているわけではないのですが。オンライン書店ビーケーワン(現honto)さんが出版社のアカウントのリストを作ってくれているので、それをみると、出版社のアカウントがどんなことを言っているのかわかります(https://twitter.com/bk1_jp/lists/publisher)」

 ウェブサイトの更新情報を個別にいちいち見に行かなくても、手元の端末に情報が届く。自分の郵便受けに手紙が届き、たまっていくようなもので、それをまとめてスキマ時間にチェックすればいい。これは便利だ。家に帰ると、さっそく登録してみた。


■いかに本を読むか──“底意地”を考える

 読むべき本が見つかったら、次は、いかに読むか。二人がここで持ち出したのは、大学のゼミ以来、20年近くにわたって教えを受けている科学史家・赤木昭夫氏のエピソード。いつも「底意地を考えろ」と言われたと語る。

「“底意地”ってなんですか? と先生に尋ねると、例えばシェイクスピアの演劇のことを考えてみるといいと言われるんですね。みなさん、戯曲の台本をお読みになることがあると思うんですが、それを見るとセリフが書いてある。しかし、人物が舞台のどこに立つのか、どういう位置関係なのかということは書いていない」

「しかし演じる人は、具体的にどこかに立たなければならない。では、あるセリフを口にする際、相手のほうを見て言うのか、相手に背を向けて言うのか――どう演じるかによって、大きな違いが生じるわけです。果たして台本を書いた人は、どういう空間を想定していたであろうか。それが底意地だ、というわけですね。書かれていないことを、書かれたことから類推する、そして解釈する。同じようになにか本を読む折などにも“この底意地はなんですかな”という検討をするわけです」(山本)

 山本は、夏目漱石のエッセイ「余が一家の読書法」の中に、今回「いかに読むか」というテーマで伝えたかったことのほとんどすべてが書かれている、という。そこで、当日配布された小冊子中の「余が一家の読書法」を開いてみると、こんなふうに書いてある──「曰く自己の繙読しつゝある一書物より一個の暗示を得べく務ることこれ也。唯漫然として書の内容を記憶し、理解するに止まらば、読書の上に何の効果あらんや」。

「ここで漱石先生は、一言でいうと、読書というのは示唆を得るためにするのがよい、と言っています。示唆を得る、というのはつまり、自分がモノを考えるきっかけを本の中に探す、という読み方です。だから、仮にぜんぶ読み通さなくても、なにか“そうか、ということは……”と考えるタネと出会う、それが大事だということです。また別のエッセイでは、そういうふうにして得たものを元にして小説を書く、とも言っています」(山本)

 耳が痛い話だが、ただ漫然と読んでいても、なんの栄養にもならないということだ。そこで「この本の底意地は何だろう?」と考えてみる。あるいは、「ここからどんな示唆が得られるだろうか?」と考えてみる。

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