もう一度言おう。「イスラム国」を「ISIL」と言い換える必要はない

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 そう考えると、イスラム国がほころびだらけの「国」などという文脈に乗っかっているのは滑稽かもしれない。しかし「国」が虚構であるからといって、無視できるものではない。

 実際、一方ではイスラム国を国としてとらえ、対処することを提唱している識者もいる。たとえば、北欧諸国政府の対テロリズムのコンサルタントを務める女性ジャーナリスト、ロレッタ・ナポリオーニ氏は『イスラム国  テロリストが国家をつくる時』(文藝春秋)でこう指摘している。

「彼らが好きなように中東の地図を書き換えてしまう前に国際社会に取り込み、国際法を守らせるほうが賢明ではあるまいか」

 この「イスラム国」という物語を、いくら他者が「認めない」とないことにしても、この物語じたいがもう力をもってしまっていて、消えることはない。欧米中心の社会で「イスラム国」という言葉だけを隠蔽したところで、この物語はなくならない。ますます力を強くする可能性もある。宣伝になるとして各国メディアが、イスラム国の動画を使用しないというのも同じだ。

 個人がISILと呼ぶことを否定するつもりはない。しかし少なくともわたしたちは、「イスラム国」という呼称を葬り去るのでなく、あるものとして対峙し、批判し続けたいと考えている。
(エンジョウトオル)


【検証!イスラム国人質事件シリーズはこちらから→(リンク)】

最終更新:2017.12.13 09:20

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

イスラム国 テロリストが国家をつくる時

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

もう一度言おう。「イスラム国」を「ISIL」と言い換える必要はないのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。イスラム国人質事件エンジョウトオルテロ宗教の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄