日本人はなぜ「自己責任論」にはまるのか? 仕掛けられた政治の“罠”

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〈自己責任論は、「社会的責任」と「個人的責任」とを意図的に混同し、支配層にとっての不都合なことすべてを個人の「自己責任」に解消することで、社会的・公共的責任を放棄し、あるいは隠蔽しようとするもの〉

 このように記しているのは、北海道大学名誉教授である吉崎祥司氏の『「自己責任論」をのりこえる 連帯と「社会的責任」の哲学』(学習の友社)だ。本書によれば、自己責任論は以下のような流れでつくられていく。

 1.競争を当然のこととし
 2.競争での敗北を自己責任として受容させ(自らの貧困や不遇を納得させ)
 3.社会的な問題の責任をすべて個人に押しつけ(苦境に立たされた“お前が悪い”)
 4.しかもそうした押しつけには理由がある(不当なものではない)と人びとに思い込ませることによって
 5.抗議の意思と行動を封殺する(“だまらせる”)

 日本において自己責任論がここまで幅をきかせるようになったきっかけは、「新自由主義」思想に基づいて小泉政権が断行した構造改革にある。新自由主義とは〈景気を回復し、グローバル競争にうち勝つためには、長期不況の原因となっていた過剰な「規制」と「保護」を構造改革によって打破し、競争主義を徹底する必要がある〉というもの。すでに知っているように、この構造改革は大量の失業者を生み、非正規雇用労働者を増大させた大きな要因となったが、同時に、「すべては自己責任」という風潮もつくりあげた。

 前述したイラク人質事件での人質への自己責任論バッシングも小泉政権下でのことだった。

 若者が仕事に就けない、仕事があったとしても非正規でしか働けない。……こうした問題を解決するための責任を追うのは、無論、若者でも非正規雇用者でもなく、〈何よりもまず産業(企業)と国家(政治)〉にある。20世紀初頭にイギリスの社会保障制度づくりを主導したL.T.ホブハウスの理論でいえば、〈まっとうな仕事と賃金を保障するのは社会的・公的責任であり、失業や低賃金による生活困難は、企業や国家の「社会的責任」において解決すべきもの〉なのだ。本書によると、こうした考え方はイギリスに限らず、広くヨーロッパの政治思想と言っていいものだという。

 だが、新自由主義(ネオリベラリズム)はこれを許さない。たとえば、「社会などというものは存在しない」と言い放ち、福祉国家を解体しようとしたのは、安倍晋三首相も信奉するイギリスのサッチャー元首相だ。福祉や保障に頼るな、家族で助け合って生活しろ、国家や企業にたてつく運動などあってはならない──その考え方は、社会を否定し、社会と個人を切り離し、個人にすべての責任を押しつけるものだ。

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