秋元康の総合演出決定? 東京五輪に椎名林檎が“日本が恥かく”と危機感表明

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 この椎名の指摘は、きっと多くの人が感じている不安な点だろう。しかも、ひとり熱さをほとばしらせる椎名を前に、秋元と同じく組織委員会理事の蜷川が「とりあえずわたしが何かできること、ありますかね?」と弱気になると、

「リーダー決めましょうって(言う)ことじゃないですか」
「トップ決めましょうって言いましょう!」

 と一喝。旧知の仲である蜷川にも不信感が拭えないのか、またしても蜷川が「ほんと言うなら『そんなの超ダサいし、ないっしょ』とか言えればいいんだけど、理事っていう名刺いただいてるからさ、それをちゃんと全うしようと思ってるの。それには、真ん中にまず入んなきゃいけなくて」と組織の論理で言い訳じみた話を始めると、椎名は露骨に醒めた顔を浮かべていたほどだった。

 ここまでオリンピックにこだわりを見せるのなら、いっそ椎名が理事になったほうがいいのでは……。彼女の発言を追っているとそんな気さえしてくるが、しかし椎名にもひとつ不安要素がある。それは“椎名林檎=ネトウヨ説”だ。

 椎名といえば、昨年、サッカーW杯のNHKテーマソング「NIPPON」を手がけ、その歌詞が「純血思想では?」「右翼的だ」と賛否を呼び、11月に発表した5年半ぶりのアルバム『日出処』もジャケットに配されたデザインが旭日旗に見えると話題になったばかり。そこでネット上にもちあがったのが「椎名林檎がネトウヨ化」という声だ。この東京オリンピックへの並々ならぬ懸念も愛国心から生まれているらしく、前述した『SONGS』では、「すごい極端なものが両方あるってところが、ほかの国の比じゃないじゃないですか」「日本が恥をかかないように、日本らしく」と“日本の誇り”を語っている。

 とはいえ、指摘される椎名の「右翼性」とは、そのじつ、無自覚なものだ。問題となった「NIPPON」だって、“スポーツ=戦い”という短絡的な発想に古風なフレーズを掛けあわせたらああいう歌ができあがっただけ。スポーツの熱狂がナショナリズムと密接につながっているという考えにおよばない(それをテーマにした野田秀樹の舞台『エッグ』で劇中歌の作曲まで務めたのに、だ)のは問題だと思うが、本人に確固とした思想性があるわけでもなく、たんなる“和風好き”のレベルだろう。実際、椎名が『SONGS』で東京オリンピックへの具体的な提言としてあげたのは、「ただなんか、花火の自慢だけはしていただきたいっていうのはある」(『SONGS』より)という拍子抜けするものだ。

 もっとも、椎名が東京オリンピックにかかわる確率は低く、それよりずっと深刻なのはやはり、秋元康のほうだ。いま、秋元こそがもっとも開会式プロデューサーに抜擢される可能性が高いわけだが、それこそ秋元が開会式を手がければ、日本の散々たる文化状況が白日のもとに晒されてしまうだろう。椎名が憂う“日本が恥をかく”ときが、刻一刻と近づいているのである。
(水井多賀子)

最終更新:2017.12.09 05:11

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