池江璃花子のツイートを菅政権やメディアが五輪反対運動封じと開催世論誘導に利用! これまでも池江を強行開催の広告塔に

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池江璃花子Twitter


 中止を求めるネット署名が30万筆を突破するなど、開催強行への批判が高まり続けている東京五輪。だが、ここにきて、池江璃花子選手のツイートをきっかけに、五輪反対の声を批判する動きが出てきている。

 池江選手は7日夜、ツイッターにこんなコメントを連投した(抜粋)。

〈Instagramのダイレクトメッセージ、Twitterのリプライに「辞退してほしい」「反対に声をあげてほしい」などのコメントが寄せられている事を知りました。〉
〈私に反対の声を求めても、私は何も変えることができません。〉
〈オリンピックについて、良いメッセージもあれば、正直、今日は非常に心を痛めたメッセージもありました。この暗い世の中をいち早く変えたい、そんな気持ちは皆さんと同じように強く持っています。ですが、それを選手個人に当てるのはとても苦しいです。〉

 ようするに、池江選手は自分に五輪の辞退や反対を求めるリプライが届いており、それに困惑しているということを表明したのだが、その後、メディアがこの池江選手のツイートを一斉に報道。リプライへの批判を繰り広げているのだ。選手個人に辞退を求めるのはおかしい、という主張はもちろん、「池江選手への誹謗中傷」「おぞましい匿名の圧力」などと報じるニュースサイトもあった。

 さらにSNSでは、こんな声があふれた。

〈オリンピック反対派は池江さんを虐めるなよ〉
〈「オリンピック反対派」の言葉の暴力は酷すぎる! 池江選手があまりにもかわいそうだ。〉
〈オリンピック反対派が池江選手を悪者に仕立て上げようとしている。〉
〈こんなことよくできるなぁ 人デナシとはこのことだわ〉
〈これはいじめに等しいのではないでしょうか? 難病を克服してオリンピックを目指す方に対しての攻撃、あまりにひどいと思う〉

 たしかに選手個人にリプを飛ばして辞退を求めるというのはやりすぎの部分はある。中止署名の発起人である宇都宮健児弁護士が〈五輪中止を求める相手は選手ではなく、主催者であるIOC、IPC、国、東京都、組織委である。当然のことながら選手にはいっさいの非はない。見通しの立たない辛い状況に置かれている選手をこれ以上苦しめてはならない。〉とツイートしていたが、そのとおりだろう。

 しかし、いま、メディアやネットが叫んでいる批判、まるで五輪反対派が束になって、池江選手に五輪辞退を迫り、池江選手を悪者にしようと誹謗中傷を繰り広げているかのような主張は、明らかにためにするフレームアップと言っていい。

 そもそも、今回の問題は池江選手がツイートする半日前の7日午後、ネットニュース『週刊女性PRIME』が「東京五輪ありきの強行施策に「辞退して」池江璃花子らアスリートに向く“矛先”」というタイトルでこの問題を取り上げ、すでにネット上で大きな話題になっていた。池江選手もこの記事や反響を見て、リプやDMの存在に気づいたものと思われる。

 しかし、チェックしてみると、報道以前にこうしたリプライが大量にあった形跡は確認できないし、ネットでもほとんど話題になっていなかった。

 また、『週女PRIME』の紹介した3つのリプを見るかぎり、いずれも医療崩壊や子どもの行事の自粛との矛盾を指摘し、五輪辞退や反対を求めるもので、前述したように直接、選手個人に送りつけるのはやりすぎだとは思うが、内容は誹謗中傷ではない。

 ところが、メディアはあたかも池江選手への個人攻撃、誹謗中傷が大量に殺到しているかのように騒いでいるのだ。

西村大臣がNHK で池江選手の名前を持ち出し、竹田恒泰は「池江選手の誹謗中傷を知って開催賛成の署名立ち上げ」

 こうしたフレームアップを見ていると、やはり、五輪開催強行派や本音では商売のために五輪をやってほしいマスコミが池江選手のツイートを利用して、反対派叩きや開催強行に利用しているとしか思えない。

 実際、SNSを見ると、たんに誹謗中傷扱いするだけでなく、露骨な意図を持ったものが散見される。

 たとえば、前出の署名の発起人である宇都宮弁護士には「池江選手への誹謗中傷が起きたのは、あんたのせいだ」といった攻撃が殺到。さらには、こんな投稿も多数見られた。

〈池江璃花子ちゃん頑張れ。反対派ってホントにこういう事ばっかりするね。こうなったら絶対オリンピック開催して欲しい。池江ちゃんメダル取って欲しい。〉
〈オリンピック反対派が池江選手にあんな事したのを知ってオリンピック賛成派になりました。 恥を知れ。〉
〈この池江選手擁護の流れで、五輪反対派の声が小さくなることを願う。〉

 もっと露骨だったのは、五輪招致をめぐる不正疑惑で辞任した前JOC会長を父にもつ竹田恒泰氏だ。竹田氏は9日、〈池江選手への誹謗中傷を知って、東京五輪開催「賛成」の署名を立ち上げないといけないと思いました。以下のキャンペーンに賛同をお願いします!「人々の夢と希望をつなぐため、東京五輪の開催を支持します」〉とツイートし、池江選手にかこつけて東京五輪賛成のネット署名を始めた。

 政権も完全に池江選手への同情論に乗っかろうとしている。本日9日、『NHK日曜討論』に出演した西村康稔コロナ担当相は五輪について問われ、わざわざ池江選手の名前を出し、「池江選手のがんばっておられる姿を見て、活躍する姿を見たいと思っている人もいる」などとコメントしていた。

 ようするに、彼らは池江選手に同情し、応援しているふりをして、池江選手を五輪反対封じ込め、五輪開催強行の世論誘導に利用しようとしているだけなのだ。

渡辺直美をブタに見立てた佐々木宏が1年前に池江選手をセレモニーに起用

 実際、これまでもそうだった。とくにこの一年間は、池江選手を東京五輪開催の象徴・広告塔として、矢面に立たせてきた。

 象徴的だったのが、昨年7月に行われた1年前セレモニーだ。延期された東京五輪まで1年となった昨年7月23日、組織委は開催の機運を高めるイベントに池江選手を起用し、国立競技場からメッセージ動画を配信。池江選手は白い衣装で聖火の入ったランタンを掲げ、「世の中がこんな大変な時期に、スポーツの話をすること自体、否定的な声があることもよくわかります。ただ、一方で思うのは、逆境からはい上がっていくときには、どうしても希望の力が必要だということです」とメッセージを発信した。

 このメッセージ自体は池江選手が考えたものだというし、池江選手の思いがたしかに伝わるものだった。しかし一方で、池江選手起用の背景には、池江選手の「闘病」という「逆境」を組織委が利用し、「東京五輪に襲いかかったコロナ」を「逆境」として重ね合わせようとする意図があったのはあきらかだ。

 実際、この動画の演出を担当したのは渡辺直美をブタに見立てたルッキズム全開の演出案が問題になった佐々木宏氏だが、佐々木氏は池江選手を起用した理由について「強いメッセージを発する適役をやって頂ける方」と語り、「1年後、オリンピック・パラリンピックが開かれる未来のために、努力している世界中のアスリートたちが、どのような想いでいるのかを、アスリートの視点にたって、発信する必要があると感じました」とコメント。関係者も「池江選手が立ち向かう困難、逆境は東京五輪とも重なる」と口にしていたという(毎日新聞ウェブ版2020年3月14日付)。

 コロナによって開催を危ぶまれるなか、世論を高めるために池江選手の闘病という「アスリートの思い」を利用したのである。

復活優勝し東京五輪出場を決めると「五輪中止と池江璃花子に言えるのか?」と批判封じに

 さらに今年4月の池江選手の復活劇も五輪強行の正当化に利用された。

 池江選手は競泳の日本選手権で、池江選手が女子100メートルバタフライ決勝で3年ぶりの優勝を果たすなどし、リレーメンバーとして東京五輪代表入りを内定。白血病を乗り越えてのこの復活劇に感動した人は少なくないだろう。ところが五輪強行派たちはこの復活劇を、五輪反対の声を封じ込め五輪への機運を高めるのに利用した。ネットでは五輪強行派たちから「東京五輪開催に反対している人は、池江選手にそれを言えるのか?」という声まで噴出したのだ。

〈「東京オリンピックなんか中止にしろ」とか言ってる人たちは池江璃花子にもそう言えるのかい?〉
〈ほんとこれからオリンピック反対や中止を言ってた著名人の方々はどうするんですかねあんな素晴らしい奇跡を起こした池江さんに対して同じ事が言えるのかと〉
〈「オリンピックは中止したらいい」と言うコメンテーター。池江さんの前で言ってみろ。〉

ジャーナリスト・門田隆将氏は、〈池江璃花子選手の奇跡と涙は五輪が“勝負の世界に生きるアスリート”の為にある事をマスコミや反対勢力に教えた。アスリートの努力に敬意を払い、最高の舞台を用意したい〉とツイート。東京五輪はアスリートのためのものであり、開催に反対する者はアスリートの努力を踏みにじっていると主張した。

 自身の政治的思惑で1年延期にこだわり現在の混乱を生んだ元凶である安倍晋三・前首相も、〈池江選手、本当におめでとうございます〉〈白血病から復帰し、オリンピックの代表へ。ここまで重ねてこられた努力は本当に並大抵のものではなかったと思います〉とねぎらい、〈そして、いよいよ夢の舞台。感動と勇気をありがとう。オリンピックでのご活躍を祈念しています〉とツイート。池江選手の感動的な活躍をもって五輪開催に弾みをつけようとした。

 このように五輪強行派は、コロナ下で五輪反対の声が高まるなか、その批判の声を封じるために、池江選手の闘病と復活を利用してきたのだ。

医療崩壊の一方、五輪への医療資源投入・ワクチン優先の“五輪優先主義”が国民とアスリートを分断

 そういう意味では、今回問題になった池江選手への辞退や開催反対を求める声は、このように政府や組織委員会と五輪利権共同体の一員であるメディアなど五輪強行派が、批判を交わすための盾として池江選手を矢面に立たせてきたことが招いたというべきだろう。

 しかも、困惑を表明した池江選手のツイートをさらに利用している。IOCバッハ会長の来日も見送りになるなど、反対世論が最高潮に高まるなか、乗じて、反対世論の封じ込めをはかろうとしているのだから、呆れるしかない。

 そもそも東京五輪の開催強行に反対の声が高まっているのは、大阪をはじめとして医療従事者不足などから医療崩壊が起こっているというのに約1万人もの医師や看護師を大会運営のために駆り出そうという「国民の命よりスポーツイベントを優先させる」姿勢にある。

 さらにここにきて確定的になった、五輪選手へのワクチン優先接種。周知のとおり、日本ではワクチン接種がまったく進んでおらず、一般市民どころか医療従事者へのワクチン接種すら完了していない。そんななか、コロナの最前線にいる医療従事者や重症化リスクの高い高齢者、医療の脆弱な発展途上国の人々などよりも、五輪選手のワクチン接種を優先させるなど、倫理的にも公衆衛生の観点からもあり得ない話だ。

 この五輪優先主義が、一般市民とアスリートの分断を引き起こし、組織委や政府、東京都だけでなく、選手に対する風当たりまで強くさせているのだ。

 ところが五輪強行派は、自分たちが五輪強行正当化のために池江選手を矢面に立たせてきたことへの反省も自戒も一切ない。ことここに至っても、逆に賛成署名を始めた竹田氏に代表されるようにまたしても反対世論の封じ込めに、池江選手を利用しているのだ。もはや「アスリートファースト」ですらない。

 多くの人が五輪に反対しているのは、コロナ状況を冷静に見ているからだ。選手を盾にした情緒や空気で覆せるような次元はとっくに超えている。コロナがこれだけ厳しい状況にある以上、今回の池江選手のようにむしろ矢面に立たされた選手への悪感情を引き起こすことは十分起こりうる。池江選手にしろ、ほかの選手にしろ、五輪強行のために利用するのは一刻も早くやめるべきだ。

最終更新:2021.05.09 09:24

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