GoToの東京除外では感染拡大は防げない! 徹底した検査の拡大で経済活動との両立を目指す韓国やNYと対照的な日本政府

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新型コロナウイルス感染症対策推進室(内閣官房)Twitterより


 反対の声が巻き起こっていた「Go Toキャンペーン」について、政府が「Go Toトラベル」の運用を見直し、東京発着の旅行と東京都在住者を対象から外す方針だと発表した。

 だが、東京を除外したところで問題は何も解消されていない。東京都の新規感染者数ばかりに注目が集まっているが、本日の国内新規感染者数は610人(16日20時時点。以下同)と、4月10日以来はじめて600人を超えた。その内訳は大阪府で66人、埼玉県で49人、神奈川県で47人、愛知県で21人、兵庫県で16人、宮城県で14人など、首都圏や都市部を中心に感染が広がっていることがわかる。東京都を外したからといって、「Go Toトラベル」が感染を広げる危険性はなくならないのだ。

 4月7日に閣議決定した緊急経済対策では、「Go Toキャンペーン」の実施は〈感染症の拡大が収束し、国民の不安が払拭された後〉だとされていた。感染がおさまってもいないこんな状況で「Go Toキャンペーン」を始めようとしたこと自体が大間違いであり、即刻中止すべきだろう。

 こういうと、必ず出てくるのが「経済を回す必要がある」という反論だが、しかし、感染拡大のなかで「Go Toキャンペーン」を実行するような中途半端な対策を繰り返しても、逆に感染拡大を招き、再び自粛強化をせざるを得なくなるだけで、経済が回るようにはならない。

 感染を防ぎながら、経済を回すことのできる状況をつくり出すというなら、必要な業種には補償をした上で、やはりPCR検査を大規模に実施し、感染を広げる無症状者を把握、隔離・療養をおこなうことで職場や学校での感染リスクを低くし、そのうえで経済や社会活動を再開させるしかないのだ。

 実際、海外ではそうした検査の徹底によって経済活動との両立をはかろうとしている。

 たとえば韓国のソウル市では、感染経路不明者の増加を受けて、6月から無症状でも市民なら誰でも無料でPCR検査を受けられるようになった。ソウル市では集合検査法(プーリングテスト)を採用し、5〜10人分の検体をまとめて検査することで、短期間での大量検査を可能にしているほか、検査費用の70%を節約しているという(8日放送BS-TBS『報道1930』より)。この検査実施について、ソウル市保険政策チーム長であるヤン・ジホ氏が「無症状感染者や感染経緯を知ることができない感染者を事前に探し、彼らによる静かな伝播を遮断するため」(ハフポスト6月12日付)と述べているように、これは無症状の感染者をあぶり出すことで感染拡大を防止しようというもの。韓国の新規感染者数は16日発表で61人だったが、このうち47人は海外からの入国者。ソウル市の新規感染者数は6人となっている。

 同様に、一時は感染拡大地だったアメリカのニューヨーク州でも、市民への無料検査を実施。陰性だった場合、希望すれば何度でも無料で再検査が受けられるといい、その検査数は1日に6万6000人だ(Business Insider Japan 7月10日付)。この結果、経済活動の再開によって感染者が増えつづけているアメリカのなかでもニューヨーク州は感染を抑え込みつつあり、今月11日には3月以降初となる死亡者ゼロとなった。

 ところが、安倍政権はまったく逆で、いまも無症状者の大規模検査を否定するばかりか、ここにきて、またぞろ検査を抑制するためのあの論理を持ち出し始めたのだ。

今頃になって「PCR検査の偽陰性、偽陽性」を持ち出して検査拡大否定に躍起な政府と分科会

 政府の分科会の初会合後におこなわれた7月6日の西村康稔コロナ担当相と尾身茂会長の記者会見でのこと。尾身会長が無症状者への大規模なPCR検査実施について「PCR陰性であってもその時点での陰性を示すのみで、実際には感染しているのに陰性となる偽陰性の場合もあり得る」などと説明。試算として感度が70%、特異度99%と仮定し、「1%の人が感染していると思われる1万人に検査を実施すると、99人は感染していないのに陽性(偽陽性)となり本来不必要な自宅待機、入院などの措置が取られてしまう可能性あり。また30人の人は感染していても陰性(偽陰性)となり、知らずに感染を広げてしまう可能性あり」と述べたのだ。

 西村コロナ担当相も同様だ。昨日の衆院予算委員会で「無症状者で、じつはPCR検査も陰性と判断されても、そのなかには3割は本当はかかっている方おられるんで。偽陰性もあります。きょう陰性で安心しても今晩かかってしまうかもしれません。やるなら全員が毎日毎日受けなきゃいけないことになってしまいます。これは現実的には難しい」と答弁した。

 いったいこの人たちはいまさら何を言っているのか。一部検査に誤りが出るからといって検査の実施を否定すれば、いまやっている「夜の街」の無症状者に対する検査も、Jリーグが2週間に1度おこなっている検査も、病院で入院患者に実施している検査も、全部無意味だということになる。そんなに偽陽性・偽陰性を心配するのならば、陽性と判断された無症状者には2度検査をおこなうとか、陰性と判断されても安心しないよう周知徹底させ、ニューヨーク州のように繰り返し検査を受けられるようにすればいいだけの話だ。

 だが、西村コロナ担当相や尾身会長はもちろん、PCR検査拡充否定論者の医師たちも偽陽性・偽陰性の問題を持ち出しては検査の拡大を否定し、感染がどんどん広がる状況になっているのである。

 これは、コロナの感染が拡大し始めた3月ごろとまったく同じだ。安倍政権が中途半端なクラスター追跡にばかり固執しているあいだに市中感染が広がり、症状があるのにPCR検査も受けられないという人が溢れた。だが、このときも厚労省、専門家会議、御用ジャーナリストが声を揃えて「PCR検査は多くすればいいというものではない」「必要な検査はおこなわれている」などと検査拡大を否定した。

 これは、検査体制の不備をごまかしたい厚労省、東京五輪開催中止を避けたい安倍首相や小池百合子都知事らの意向などが影響したと考えられるが、しかし、その結果、何が起きたか。感染は急拡大し、検査を受けられない、医療にアクセスできない人の症状が悪化して死に至るという不幸なケースが頻発したのではなかったか。

逼迫する東京の医療現場 日本は前回の失敗からも海外の実績からも何も学んでいなかった

 実際、今回もすでにそれに近い状況が起きつつある。東京都は医療現場や保健所が再び逼迫するという状況に陥っているのだ。たとえば、軽症者や無症状者の療養施設としてきたホテルの部屋がほぼ埋まったというのもそのひとつだ。本日になって池袋のホテルを借り上げ150室が新たに使用可能というが、新規感染者の増え方を見れば焼け石に水だ。

 結局、この国は前回の失敗から何も学んでいなかったのだ。ずっと叫ばれつづけてきた保健所機能の強化・支援も医療提供体制の整備も遅々として進まず、他国の実績を目の当たりにしてもなお、頑なに大規模検査を拒む。その一方で「Go Toキャンペーン」には1兆7000億円を投じる。この状況でそんなことをやっても、経済の復活の呼び水になることなんて絶対ないだろう。

 この国の国民には、無能で無責任な政府とともに、奈落の底に落ちていくしか選択肢はないのだろうか。

最終更新:2020.07.16 10:39

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