ラグビー日本代表への“日本の心”押し付けがひどい! 外国籍の選手もいるのに神社でさざれ石を見学し君が代合唱、合宿に模造刀

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ラグビーワールドカップ2019日本大会公式HPより


 現在開催中のラグビーワールドカップ。日本代表の快進撃が大きな話題となっている。13日には、決勝トーナメント進出と日本初のベスト8入りを懸けたスコットランド戦が行われる予定で、その熱はこれからますます高まっていくことだろう。

 ラグビー人気が高まるのはけっこうだが、気になるのが、メディアがやたら「チーム全員が日本の心をもっている」といったことを強調する点だ。

 ご存知の通り、今大会を戦う日本代表チームは31人中15人が外国にルーツをもつ選手で、出身地もトンガとニュージーランドが各5人、南アフリカが2人、韓国、オーストラリア、サモアから1人ずつと、多岐にわたる。

 サッカーや野球など多くのスポーツとは違い、ラグビーは日本国籍をもっていなくても代表チームに入ることができる。本人が日本で生まれた、両親・祖父母のうち1人が日本で生まれた、3年連続もしくは通算10年日本に居住している、この3つのうちどれかひとつの条件を満たせば日本代表チームに選出される資格をもつことになる。


 そういうわけで日本代表は多様なルーツをもつ選手が集まったチームになっており、それは日本のみならず多くの国の代表チームが似たような状況にある。

 それにも関わらず、メディアはやたらと「選手が日本の心をもっている」と強調するのである。

 典型的だったのが、6日放送『真相報道バンキシャ!』(日本テレビ系)である。

 番組では、今年7月中に合宿中の日本代表が訪れた場所として、宮崎県日向市の大御神社をレポート。この神社は君が代の一節「さざれ石の巌となりて」の“さざれ石がある神社”とされているといい、神社の新名光明宮司が「しめ縄が張ってある、あれが、さざれ石。細かな石が集まって、砂やら粘土やらと入り交じりながら、大きな巌となりました。塊はさざれ石の巌となりて、巌でしょうね」と解説。

 宮司は、7月に同所へ訪れた日本代表チームにも同様の解説をしたのだろう。「リーチ・マイケルキャプテンがひと言おっしゃいました。『心を固めて大きな巌になろうじゃないか』」などと、当時の選手たちの様子を振り返った。

 番組では7月に日本代表チームが訪れた際の実際の映像も流されたのだが、そこには選手たちがこの“さざれ石”の前に立ち、神妙な表情で君が代を合唱する様子が映し出されていた。

 練習で忙しいなか、わざわざ、さざれ石がある神社まで足を運んだ理由について、合宿に参加していた山本幸輝選手は「マイケル・リーチさんがリーダーとなって、週に1回少ない時間をとって、その時間で日本の歴史とか文化を学ぶ時間っていうのをつくったりしてやっていました」と、日本代表チームの教育方針を証言する。実際、『バンキシャ』では他にも、“日本の心”を理解するために代表チームが遠征先や合宿に甲冑と模造刀を持ち込んでいる様子も紹介していた。

 その後、VTRが終わってスタジオに戻るとこうした代表チームの取り組みについてMCの夏目三久アナウンサーは「日本の文化を学ぶことがチームづくりにとてもよく効いていますよね?」と評価し、コメンテーターのラグビー元日本代表選手・大畑大介氏も「日本の文化を知る。そして、自分たちがこの国で戦っていることを考えて、母国じゃなく日本代表、日本を選んだという、熱い男たちの集まりなんですよね」と肯定的に語った。

 こうした論調は『バンキシャ』に限ったものではない。7日放送『モーニングショー』(テレビ朝日系)も「サモア撃破で3連勝! 悲願の8強へ多国籍JAPANをまとめる和の心」「日本の“輪”を強くする“和”の心」とタイトルをつけてラグビーを取り上げ、先に述べた神社の件などを紹介。また、レメキ・ロマノ・ラヴァ選手による「君が代を聞くと泣きそうな気持ちになる。この国のために戦う覚悟があるから、日本のジャージを着ている」というコメントも好意的に紹介していた。

多様なルーツを持つ選手たちに“日本の心”押し付けはエスノセントリズム

 チームスポーツにおいてチームの結束力を高めることは必要なのかもしれないが、なぜそこに「日本の心」「和の心」が持ち込まれなければならないのか。

 しかも、君が代の歌詞に縁があると喧伝する神社を訪れて君が代を合唱させるというのは、単に日本の伝統文化に親しむというレベルを超えて、政治性を帯びた国家主義・ナショナリズムの発露そのものだ。

 上述のとおり、ラグビーの日本代表チームには、日本人選手だけでなく、トンガとニュージーランド、南アフリカ、韓国、オーストラリア、サモアと多様なルーツを持った選手が在籍している。選手たちが互いを理解し合うために、それぞれの文化的背景に理解を深めることは重要なことだが、人数の多寡にかかわらず、日本文化と同じよう、トンガやニュージーランド、南アフリカ、韓国、オーストラリア、サモアの文化への理解やリスペクトを深めることも同様に重要だろう。

 実際、ニュージーランド代表チームが披露することで知られる“ハカ”は、マイノリティである先住民マオリの伝統文化に由来するものだが、それはニュージーランドの多様性と連帯を象徴するものだ。

 にもかかわらず、日本代表チームは、日本以外のルーツをもつ選手に対して、自国の文化を押し付けるなど、エスノセントリズム(自民族中心主義)そのものであり、まるで戦中の同化政策ではないか。

 リーチ・マイケル選手自身の発案だと言うかもしれないが、そうしなければ受け入れられないという日本社会の排外的な空気が外国人選手たちにそうした言動をさせていることは想像に難くない。選手たちの愛国発言は、むしろ代表チームのナショナリズム的空気の強さの反映と見るべきだろう。

 しかしメディアでは、このスポーツにナショナリズムを持ち込む代表チームの取り組みに、懐疑的な見方は皆無で、むしろ、あたかもそれが素晴らしいことのように報じられている。

 チームスポーツにおいてメンバーが互いに理解しあい結束力を高めることが重要だとしても、その手段がナショナリズムである必要はないし、また競技がナショナリズム発揚に利用されることもあってはならない。スポーツとナショナリズムが結びつくことによる弊害や悲劇は、歴史上枚挙にいとまがない。

国籍主義を採用せずナショナリズムを越えようとするラグビー

 スポーツとナショナリズムの親和性の高さはよく指摘されることだが、しかし上述のとおり、ラグビーは他のスポーツと違って国籍主義を採用していない、ナショナリズムから最も遠いスポーツと言ってもいい。もともとはラグビー発祥国である大英帝国から植民地に入植した人々が現地の代表チームにも入ることができるようにつくられた仕組みといわれているが、ひるがえって現在では、多文化共生を目指すこれからの国際社会においてひとつのモデルとなる可能性を見出す向きも多い。

 日本代表選手にもそうした意識はある。ウェブサイト「nippon.com」によれば、日本代表のキャプテンを務めるリーチ・マイケル選手が、こんな言葉を残しているという。

「これからの日本は、外国から来た人たちと一緒に社会をつくっていかなきゃいけない。ラグビー日本代表は、日本の社会に対して、いいモデルをつくれるんじゃないか。いいメッセージを発信できるんじゃないかと思うんです」

 こういったアンチナショナリズムの姿勢はラグビー選手にとって広く共有されているものである。ワールドカップイングランド大会で一躍時の人となった五郎丸歩選手が〈ラグビーが注目されている今だからこそ日本代表にいる外国人選手にもスポットを。彼らは母国の代表よりも日本を選び日本のために戦っている最高の仲間だ〉とツイートして話題となったのはまだ記憶に新しい。

『560五郎丸歩 PHOTO BOOK』(マガジンハウス)のインタビューによると、五郎丸選手はこのツイートをきっかけに、さらにグローバルな考え方をするようになったことを明かしている。

「オリンピックの日本代表は日本国籍の選手がなるものですよね。ラグビーは国籍が違ってもなることができる。2013年にウェールズ、2014年にイタリアという強豪国に勝っても、評論家をはじめ、多くの方々から外国人のおかげだという言い方をされる。2019年に向けてクリアしなければいけない問題だと思っていました、南アフリカに勝って注目されるのがわかっていたので、いま自分が発信しなければいけないと思ったのです。
 ただし、そのときはラグビーをオリンピックの枠で理解してもらおうという意識でした。ツイートして以降、いろんなことを考えました。すると、自分の中で考えが逆転したのです。宇宙飛行士が宇宙から地球をながめたとき、『国境はなかった』と言う。でも、現実には世界中で人種差別があり、国対抗の大会をやっている。ラグビーは、プレーしている場所に3年住めば国籍を変えずとも代表になることができる。どちらがスポーツの本質をとらえているかというと、ラグビーではないかと思うようになったのです。国籍にとらわれないラグビーは、いい意味での『スペシャル』です、ツイートによって自分の考えが逆転した。このことは自分のラグビー人生にとって非常に大きかったと思います」

ラグビーを愛国ナショナリズムに利用する愚、試合会場では旭日旗の持ち込みも

 このようにアスリートたちはスポーツを通して偏狭なナショナリズムを乗り越えている。それに比べると、メディアの感覚はあまりに前時代的である。

 ただし、メディアだけがナショナリズムを勝手に煽っているというわけではない。ほかならぬ、日本ラグビーフットボール協会が、こうした愛国ナショナリズム路線を打ち出しているフシがある。

 たとえば、今回のワールドカップのパンフレットやポスターには、日の丸や富士山がデザインされている。当たり前だが、ワールドカップに参加するのは日本だけではない。大会の目的はラグビーであって、日本をアピールすることではない。にもかかわらず他国の存在を無視し、自国の国旗をあしらうなど国際感覚の欠如甚だしい。周知のとおり、この協会の会長を2005年から2015年まで務めて、ワールドカップを日本に招致し、今年4月まで名誉会長の座に座っていた森喜朗元首相の存在感が、ラグビー界において非常に強い。ラグビー愛国路線の背景には、首相在任中の「神の国」発言でも明らかなように極右思想の持ち主である森氏の影響も大きいだろう。

 そして恐ろしいのは、メディアも含め、国民がこうしたスポーツのナショナリズムへの利用に違和感をもたなくなっていることだ。

 今回のワールドカップでは、試合会場への旭日旗の持ち込みまで散見されているが、こうしたナショナリズムの空気が後押ししているのは間違いない。好調な日本チームが決勝トーナメントに勝ち進んでゆけば、このムードがさらに強くなる可能性もある。旭日旗の持ち込みについていまだ主催者は明確な対応を示しておらず、今後も旭日旗の持ち込みが繰り返される可能性はあるだろう。

 来年には東京オリンピック・パラリンピックが待っている。そこではさらなるナショナリズムの扇動があるだろうが、この調子ではそこに疑問を差し挟むメディアは皆無であろう。オリンピックにおいても組織員会は旭日旗の持ち込みを禁止しない方針を打ち出し、橋本聖子・五輪担当相もその方針を追認している。

 権力側がこのようにナショナリズムを扇動しメディアも便乗、国民もそれに疑問をもたず熱狂しているようでは、オリンピックの会場で旭日旗が大量に振られるというグロテスクな光景が展開される可能性も決して低くはない。このナショナリスティックな空気のままオリンピックを迎えることは本当に深刻な事態だ。

 ワールドカップでの日本代表の活躍にはしゃぐのもいいが、無自覚にナショナリズムが煽られている現状の危険性にも目を向けてしかるべきだろう。

最終更新:2019.10.08 04:24

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