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SKY-HIが日本の“精神的、文化的鎖国”に危機感! 社会的メッセージがタブーの状況は「まさに監獄」

SKY-HI『JAPRISON』2018年12月12日リリース
「クイーンは、世界に先駆けて日本が見出した」「韓国のレーダー照射は日本に嫉妬しているから」……相変わらず日々新たな「日本スゴイ」が量産される日本。一方で、司法制度や外国人労働者の問題などで、人権について後進性を指摘されても見て見ぬフリ、「韓国の陰謀」「国連は反日」などとトンデモ陰謀論でフタをしてしまう。精神的な鎖国状態がどんどん進行する日本だが、SKY-HIがこうした状況を鋭く批評する作品を発表したのをご存知だろうか。
SKY-HIは昨年12月にアルバム『JAPRISON』をリリースしているが、その制作の背景には、日本全体にまん延する「鎖国感」「閉塞感」があると語っている。
「『2018年の東京に住むというのは、緩やかな自殺行為だ。人間が病んでいく要素しかそこにはない』っていうことを言ってる人がいたんですけど、それに対して全面的に同感という訳ではないものの、『わかるな』というのはあって。あと、日本を客観的に見た時に、精神的、文化的な鎖国感みたいなことは、すごく感じていて。それは息苦しさであると同時に危機感なんです」(「ROCKIN’ON JAPAN」2019年1月号/ロッキング・オン)
アルバムタイトルの『JAPRISON』は、「JAPAN+PRISON」と「Japanese rap is on」の意味が込められたダブルミーニングの造語だが、「日本+監獄」という過激な表現が生まれたのは、東アジアのなかで日本だけがひたすら内に内にこもっていき、自家中毒的なガラパゴスになっている絶望感があるからだ。
日本国内のメディアだけを追っているとほとんど実感することがないが、実は2018年は全世界的に東アジアのポップカルチャーが大ブレイクした年だった。
その象徴がBTSだ。BTSは『LOVE YOURSELF 轉 'Tear'』と『LOVE YOURSELF 結 'Answer'』で2作連続ビルボード総合アルバムチャートの1位を獲得。また、BTSはニューヨークの国連本部にて開かれた、すべての若者に質の高い教育、技能研修、雇用を与えるための新たなパートナーシップ「Generation Unlimited(無限の可能性を秘めた世代)」の発足イベントでスピーチを行うなど、社会的にも高い注目を集めるグループへと成長した。
K-POPの躍進はBTSだけにとどまらない。BLACKPINKはミニアルバム『SQUARE UP』でビルボード総合アルバムチャート40位に、また、NCT 127はアルバム『NCT #127 Regular-Irregular』でビルボード総合アルバムチャート86位を記録した。
本国アメリカ版「Billboard」のウェブサイトでは、最新ニュースを扱うカテゴリーに「R&B/Hip-Hop」「Pop」「Rock」「Country」「Latin」といった項目に加えて「K-Pop」が追加された。これはK-POPが一時的なブームではなく、アメリカの音楽業界において完全にひとつのジャンルとして定着したことを示している。
そういった動きは音楽だけではない。シンガポールを舞台にしたラブコメ映画『クレイジー・リッチ!』は、ハリウッド映画にも関わらず主要キャストをアジア系の俳優だけで固めるという試みを行い、しかもそれが3週連続で1位を獲得し、興行収入も1億ドルを突破するという前代未聞の快挙を成し遂げた。
だが、こういった大きい波のなかに日本はまったく入っていない。それどころか、昨年末に起きたBTSのTシャツ騒動など逆に足を引っ張ろうという動きすら見られる。一時期さかんに叫ばれた「クールジャパン」なる掛け声も、最近では金の無駄遣いや内紛、計画失敗など聞こえてくるのは不祥事ばかり。
SKY-HI「アジアの音楽家も評価される時代に日本人だけがいない」
本来であれば相当に危機感を募らせるべき状況だが、しかし、現実はそうなっていない。どころか、日本の音楽業界はむしろ、外で起きていることから目を背け(そもそも始めから興味もない)、ひたすら内に内にこもることを選んだ。SKY-HIは前掲「ROCKIN’ON JAPAN」のインタビューでそのような状況を嘆いている。
「日本には『日本の音楽は日本の音楽。海外のものとは別だから日本独自のものをやるべきだ』っていう論調が根強くあるんですけど、それをずっとやってる内に何が起こったかというと、音楽家の影響力がどんどん失われていったんですよね。(中略)アジア系の音楽家も評価されるようになっている時代なのに、日本人だけがそこにいないというのは事実なんです」
こういった文化的鎖国は、社会的な閉塞感にもつながっていく。SKY-HIは「ELLE」日本版のウェブサイトのインタビューで「文化的な意味での閉塞感もそうだし、精神的な意味での息苦しさですよね。こうでなくちゃいけない、ああでなくちゃいけない。特に芸能界はそれで押しつぶされる人をよく見る」と語っているが、内向き指向の強化は、少しでも枠から外れる発言や思想を許容しない傾向を強めている。
その典型が、「音楽に政治をもちこむな」のフレーズに象徴されるような、芸能人の社会的発言をタブー視する傾向だろう。
SKY-HIは共謀罪成立までにとった安倍政権の強権的な姿勢を批判した楽曲「キョウボウザイ」を発表したり、韓国のラッパー・Reddyと共にヘイトスピーチを批判し多様性を賛美する「I Think, I Sing, I Say feat. Reddy」をリリースするなど、社会的なトピックに踏み込んだ楽曲を多くつくってきた。
無難なラブソングばかりのJ-POPを「それを僕はJAPRISONと言う」
エンタメ系ニュースサイト「音楽ナタリー」で、インタビュアーから「社会的なトピックを表現に混ぜると反発が生まれるため、結果的に無難なラブソングばかりになるJ-POPの傾向」を指摘されたSKY-HIはこのように語っている。
「それを僕は「JAPRISON」と言ってるんです。それはまさに“監獄”であって、心あるミュージシャンはそこから抜け出したいと思っている。それを僕の時代で食い止められるかわからないけど、もしちょっとでも風向きを変えることができれば、俺も幸せになるし、何よりもまず若いミュージシャンが幸せになるかなっていう気がしますね。(中略)自分であろうとして音楽に向き合う人が苦しめられてるっていう例がホント多くて。「こういうこと言うと反発を食らってしまう」とか、「こういうことしてはいけない」とか。それこそSNSもそうだし。そういう人たちが“JAPRISON”から抜け出して、苦しまないようになればいいと思います」
カルチャーの分野でしばしば見られる「ヨソ(海外)はヨソ。うち(日本)はうち」の考えは、社会的言説も歪ませる。「芸能人は社会的な発言をしてはいけない」という日本独自の風習もそうだし、東アジア諸国の人々に対しての侮蔑的な発言が横行しているのも、植民地時代を未だ引きずる前近代的な差別感情とそれを許す徹底した国外への無関心が根っこにある。
こういった状況を「JAPAN+PRISON」と表現して警鐘を鳴らすSKY-HIの危機感がもっと広く共有されることを切に願う。
(編集部)
最終更新:2019.02.11 01:34
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