安倍政権の世論調査「国民の7割以上が生活に満足」っておかしくないか? 佐藤健も古市憲寿との対談で疑問を

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佐藤建も『絶望の国の幸福な若者たち』(古市憲寿著)で反論!

 内閣府が先月24日に公表した「国民生活に関する世論調査」のデータに疑問の声が高まっている。すでにマスコミが盛んに報じているが、この調査において、現在の生活に満足していると答えた人が、全体の74.7%と過去最高を記録したというのだ。

 アベノミクスなるまやかしの経済政策の効果を庶民は一向に感じられず、格差が広がり、また安倍政権による公文書改ざんや“お友だち優遇”に政治・行政への不信感がつのるなか、国民の7割以上が「現在の生活に満足」と思っているとの数字は、直感的に理解に苦しむ。

 そんなことから、この調査に懐疑的な声がネット上を中心に広がっているのだが、実際、内閣府がホームページで公開している調査結果に目を通してみたところ、たしかにここ数年、同調査で生活の満足度が微増しているのは事実だが、首を傾げたくなる点がいくつかもみられた。

 まず、「『現在の生活に満足』74.7%、過去最高更新」(読売新聞)、「現在の生活『満足』74.7%で過去最高 内閣府調査」(産経ニュース)など、新聞やテレビが見出しに掲げる「74.7%」という数字だ。そもそもこの報じ方が正確ではない。

 内閣府の調査では、〈あなたは、全体として、現在の生活にどの程度満足していますか。この中から1つお答えください〉との設問に対して、「満足している」という回答が12.2%で、「まあ満足している」が62.5%となっている(「やや不満だ」19.5%、「不満だ」4.8%)。つまり、「満足している」と「まあ満足している」の合算が例の74.7%という数字なわけだ。

 これはちょっと変だろう。データを普通に読めば、回答の大半は「まあ満足」(62.5%)なのである。「まあ」という日本語表現を普通に解釈すれば「一応は」とか「十分とは言えないが」とか「どちらかというと」というニュアンスであって、「満足している」と言い切るのとは満足の程度がかけ離れているだろう。逆に言えば、「現在の生活」に「満足している」回答者はたかが1割強でしかなく、「やや不満だ」より少ないのだ。

 しかし、それ以上に考えねばならないのは、この調査における回答者が、特定の層に偏っているのではないかという疑念だ。

 そもそもこの「国民生活に関する世論調査」は今年の6月14日から7月1日にかけて18歳以上の日本国籍保有者10000人に対して実施し、5969人から回答を得たもの(回答率59.7%)。回答者がどのような人たちであったかについては、公開されている調査結果を見ればわかる。

 調査によれば、回答者の72%が「既婚(有配偶)」で、かつ、実に77.4%が「子どもがいる」。また、子どもがいる回答者のうち68.5%について、その子どもは「学校教育修了」であった。一方、親子や夫婦で暮らしていない「1人世帯」は11.4%だった。

 注目したいのが、回答者が住んでいる家の分類を答える項目だ。なんと、81.7%が「持ち家」(その内訳として「一戸建て」が82%)だというのである。ようするに、賃貸ではなく所有する家に住んでいる回答者が全体の8割を上回っているわけだが、この持ち家率は他の政府統計と比べると極めて高い数字なのだ。

 実際、総務省が5年ごとに実施している『住宅・土地統計調査』によれば、住宅全体に占める持ち家の割合は61.7%であった(前回2013年調査より。2018年調査は10月実施予定)。なお、総務省によれば、持ち家率は1967年から概ね60%前後を推移しており、その増減はプラスマイナス2%程度であることから、2018年現在もおおよそ2013年調査と同程度ではないかと推測できる。

 ようするに「国民生活に関する世論調査」における持ち家率(81.7%)は、「住宅・土地統計調査」と比べて20%も高いのだ。実際、「国民生活に関する世論調査」によれば「持ち家」と「賃貸住宅」を比較した場合、「満足している」「まあ満足している」と答えた比率において、ともに「持ち家」の回答者のほうが高かった(「満足している」で2.5ポイント、「まあ満足している」で8.4ポイント上)。同調査で生活の満足度が高くなるのは当然だろう。

回答者になぜこんな偏りがあるのか。背景には調査方法の問題が

 しかし、だとしたら、問題はなぜ、「国民生活に関する世論調査」では回答者がこんな風に偏ってしまっているのか、だ。一般的に、世論調査は調査方法や調査数、回答率、あるいは設問の表現によって結果が大きく異なることで知られるが、ポイントは「国民生活に関する世論調査」が個別面接聴取法を採用していることだ。

 調査員が訪問・聴取するこの方法は“満足度”などの質問においてバイアスが生じることで知られる。実際、NHKが2008年に行った調査方法の違いに関する実験調査によれば、「生活全体についての満足感」について「満足している」との回答が面接法では27.6%であったのに対し、対象者が自分で記入する配布回収法(18.4%)や郵送法(19.8%)ではかなり低くなった。

 これら調査方法等によるバイアスを指摘している『世論調査とは何だろうか』(岩波新書)の著者・岩本裕(元NHK放送文化研究所世論調査部副部長)は、同書において〈調査員という他人に尋ねられたとき、本音を答えるよりも、「こう答えた方が他の人には格好がつくだろう」という答えを選びがちだということです〉〈突然訪ねてきた赤の他人に「生活に満足していない」と答えるのは、なかなか難しいものです。それが結果に表れているのでしょう〉と分析している。

 実は、意外な人物も同様の指摘をしている。それは俳優の佐藤健だ。

佐藤建も古市憲寿の「若者の七割が今の生活に満足している」に反論

 佐藤は2012年、古市憲寿の著書『絶望の国の幸福な若者たち』(講談社)の対談に登場。そのなかで、古市がまさに「国民生活に関する世論調査」をもちだして「今の二〇代の生活満足度はだいたい七割くらい。一見、不幸な時代なのに若者の七割が『生活に満足している』と答えている。(中略)この数字をどう思いますか?」と聞くと、佐藤はこのように語ったのだ。

「今の若者は『満足してる』って答えちゃうと思うんですよ。でも満足してるって言っている中で、ああだこうだ不満を毎日言ってると思うんです」
「僕も欲しいものとか色々あるけど、満足してるかって聞かれたら満足してるって答えちゃう」
「あとその『満足してます』って人たちは、周りがみんな同じくらいなところにいるのかなとも思います。もしかしてすごく近くに、明らかに自分より幸福だったりとか、そういう人がいたら満足してないって答えるのかもしれないですね」

 いみじくも佐藤が指摘している通りなのだろう。現在の政治や社会状況に不安や不満をもっていても、漠然と〈全体として、現在の生活にどの程度満足していますか〉と問われ、そこに「まあ、満足している」なるふんわりとした選択肢を見つければ、人はなんとなくそれを選んでしまいがちだ。

 内閣府がそうした結果を見込んで、意図的に個別面接聴取法を採用しているどうかはわからないが、いずれにしても、内閣府の「国民生活に関する世論調査」における「現在の生活『満足』74.7%」という数字は明らかにまやかしが含まれており、これをもとに「日本国民の4分の3は満足している!」と主張してもなんの意味もないことは明らかだろう。

 ところが、マスコミは冒頭で紹介したように、この内閣府調査をやたら喧伝するのだ。いや、メディアだけではない。ほかでもない安倍首相もしばしばこの調査結果をもちだしている。

 たとえば2017年1月25日の参院本会議では、共産党の小池晃議員が、OECDも使用する厚労省の「国民生活基礎調査」を取り上げ、「この20年間、生活が苦しいと答えた人が42%から60%となる一方で、普通と答えた人が52%から36%になりました。普通に暮らしていた人々が苦しい生活に追い込まれています。今や、リストラ、病気、介護などで、誰もが貧困に陥ってしまう社会になってしまいました。こうした社会の立て直しが政治の最大の責任なのではありませんか」と質した。

 すると、これに対して安倍首相は「昨年8月に公表された内閣府の国民生活に関する世論調査によれば、満足と回答した割合は1995年以来の70%を超える水準を2013年以降、つまり政権交代して以降、4年連続で維持しております」と答弁。自分にとって都合が良い「国民生活に関する世論調査」のデータにすりかえて、ごまかしたのだ。

 少なくとも、政権に都合のよいデータが示されたときには、それとは別の調査も考慮するというリテラシーが必要だろう。

最終更新:2018.09.04 12:09

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