『24時間テレビ』でヒロミがリフォーム“子ども食堂”の放送されなかった顔! 実はホームレス支援も素晴らしい

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日本テレビ『24時間テレビ「愛は地球を救う」』番組ホームページより

 25日から26日夜にかけて放送された、毎年恒例の『24時間テレビ「愛は地球を救う」』(日本テレビ)。屋外での運動は危険だと気象庁がアナウンスしているなか、お笑い芸人のみやぞんが24時間どころか30時間かけてトライアスロン・100㎞マラソンをやらされるなど、今年も様々な恒例企画が展開された。

 そのひとつが、タレントのヒロミと滝沢秀明が24時間かけてリフォームするという、「ヒロミの24時間リフォーム~亡き妻の夢!子ども食堂を大改造~」という企画。

 ヒロミらがリフォームしたのは、東京都豊島区の「要町あさやけ子ども食堂」。店主の山田和夫さんは、5年前から自宅を開放し、月に2回子どもたちに100円で食事を提供している。築50年の建物でいろいろガタがきているということで、ヒロミらの手によってダイニングとキッチンがリフォームされ、25日17時ごろには完成した姿がお披露目、店主の山田さんと近所の子どもたちが喜ぶ様子が放送された。

 一方で、なぜか24時間テレビではあまりクローズアップされなかったが、ヒロミらがリフォームしたこの「あさやけ子ども食堂」にはもうひとつの顔がある。


●『24時間テレビ』がスルーした、山田さんのホームレス支援

 それは「池袋あさやけベーカリー」という一風変わったパン屋さんで、そこはホームレス支援の場だ。

 山田さんの妻の和子さんは2009年にすい臓がんで亡くなったのだが、亡くなる2、3週間ほどまえ、山田さんにこんなお願いをしたという。

「パンを焼いてくれない?」「あなたが焼けるレシピを考えたの」

そう言って、1枚のレシピを遺して亡くなった。和子さんは生前、自宅でパン屋を営んでいたが、路上生活をしている人たちのために、支援団体を通して、無料でパンを配る活動をしていた。しかしすい臓がんになり体調が悪化するなど、ホームレス支援のパン作りができなくなったことを気にかけていたのだという。

 定年したばかりで妻を失い生きる気力を失いかけていた山田さんだが、妻のレシピを頼りに、妻の遺したオーブンでパン作りを始め、支援団体を通してホームレスの人たちにパンを提供するようになる。しかし、1年ほど経った2011年8月、転機が訪れる。

 山田さんの著書『妻が遺した1枚のレシピ』(青志社)によると、この年の3月に起きた東日本大震災以降、パンを焼かなくなっていた和夫さんのもとに、ホームレス支援団体「てのはし」から電話がかかってきたのだという。

「パンを焼いてください。お手伝いしますから。パンを焼くお手伝いをしたい人がたくさんいるんです」
 
 震災以降気分が落ち込みパンを焼く気持ちを失っていた山田さんだったが、誰か手伝いに来てくれるならまたパン作りができるかもしれないと申し出を受け入れる。ところが当日、団体スタッフとともに手伝いに山田さん宅を訪れた人たちは、山田さんの予想とは様子が違った。

〈手伝いたいというから、多少はパンのことを知っている人たちなのかと思っていたら、パンの知識は全くない。話しかけても目も合わず、ほとんど返事をしない人もいる。そうかと思うと、ずっと話し続ける人もいた〉(以下、ヤマカッコ内は『妻が遺した1枚のレシピ』より)

 実は、彼らは元ホームレスの人たちで、連絡をくれた「てのはし」や国際NGO「世界の医療団」などの団体の支援を受け、生活を立て直した人たちだったのだ。

元ホームレスの人たちを自宅に迎え入れ、一緒にパンを作る

 それまでもホームレスの人のためにパンを作っていたとはいえ、山田さんも、彼らの存在をすんなり受け入れられたわけではない。そのときの戸惑いをこう明かしている。

〈パンがどこかで少しでも誰かの助けになればいいとは思っていても、ホームレスと呼ばれる人たちについてあまり関心はなかった。ホームレスになってしまうのは、サラ金に追われている人や、ただ働きたくない怠け者なんじゃないか、どこかそんなとんでもない思い込みもあった。サラリーマン時代には、池袋駅で見かけても、何となく関わりあいを避けるようにして見ていないふりをして通り過ぎるようなところがあった〉

〈「今日は支援者が付き添ってくれているけど、彼らだけで来られると困るなあ。何かあったら、支援者が収拾してくれるんだろうか」
 問題を抱えている人たちだけにいろいろ心配になって、緊張していた〉

 怠け者なんじゃないか。自己責任なんじゃないか。多くの人が持ちがちな認識だろう。しかし、山田さんと活動をともにする「てのはし」や「世界の医療団」といった団体でつくる「東京プロジェクト」の紹介パンフレットによると、ホームレス状態にある人のなかには、様々な精神障がいがあると推定されるケースが約6割、知的障がいや発達障がいがあると推定されるケースが約3〜4割あるという。実際は、雇用状況の悪化や社会保障制度の不十分さから、社会で居場所を失い、様々な生きづらさを抱え、ホームレス状態に至っているのだ。

 山田さんも週に1度パン作りをともにするなかで、しだいに、自分とは全然別世界の人間だと思っていたホームレスの人たちが自分と変わらないひとりの人間だと思うようになっていく。

〈元ホームレスで心に障がいのある人たちと、冗談を言い合ってパンを焼く。
 最初のうちは自分がそんなふうになれるとは昔の私からして想像できなかった〉

〈彼らにとって、わが家でパンを焼く手伝いが、社会に復帰するためのステップにつながれば幸いである。
 社会から長く離れていた人や心に障がいがある人が、突然何も知らないところに一人で飛び込んで仕事をするのはかなり難しいことである。周りの目も気になるだろうし、初日の僕のような反応をする人もたくさんいる。安心できる場所で、サポートしてくれる人が付き添って仕事をしながら、人との接し方や仕事の仕方を少しずつ練習し、生活のリズムやコミュニケーションや、自信を取り戻していく〉

 彼らとの交流を通して、山田さんの偏見は取り払われ、価値観がどんどん新しく塗り替えられていったという。そうして元ホームレスの人たちとパンを作り、ホームレスの人たちに夜回りで配布するという「あさやけベーカリー」の活動と並行して、2013年からは子どもたちのために「あさやけ子ども食堂」も始める。

「生産性」と対極にある「あさやけベーカリー」のホームレス支援

 以前本サイトでも報じたが、渋谷区がLGBTフレンドリーな施策を講じる一方でホームレスを排除するような施策をとるなど、ホームレスや貧困者は多様性を尊重するダイバーシティ政策からも疎外されているケースが往往にしてある。その背景のひとつには、マーケティングに結びつくかどうか、利益を生むかどうかという視点があるだろう。ようは「生産性」だ。

 しかし山田さんの「あさやけベーカリー」は、「生産性」や「効率」とは対極にある。

〈一般的には、誰が何を担当するか分担をはっきりと決めたほうが、作業がスムーズに進むと思うが、あさやけベーカリーではあえて担当は決めていない。そのときにいるメンバーで、やりたい人ができることだけをする。だから、大きな責任がかからない。
 その日になって「行きたくないなあ」と思えば来なくてもいいし、遅刻しても構わないし、早退してもいい。そのゆるやかな感じの中で、自分の意志で来るかどうかを決められるところもうまくいっている秘訣だと思っている〉

〈パンのことだけを考えると、もっと難しいパンに挑戦し、販売の機会を増やして彼らの収入を増やすという手もあるかもしれない。しかし、販売用のパンとなると、ある程度の技術がある人じゃないと務まらない。そうなると、彼らもストレスになってしまうし、メンバーがどうしても固定化されてしまい、新しい人を受け入れる余裕がなくなり、本来目指している活動とは少し違ったものになってしまう〉

 そこでは〈支援者も当事者も、みんなフラットな関係〉だ。

〈あさやけベーカリーのみんなにとっても、僕にとっても、自分の居場所があるというのは大事なことで、それに加えて自分の存在が誰かの助けになっているという実感が、何よりも自分を支えてくれた〉

 ホームレスをはじめ疎外された人々をコミュニティがどう包摂していくか。どうすれば彼らが居場所や役割をもてるか。貧困は自己責任だという考えが跋扈している今の日本社会で、その課題に向き合い続ける山田さんの活動から学べることは非常に多い。

 だからこそ、『24時間テレビ』でも、ホームレス支援についてももっと掘り下げてくれたらとよかったと思うのだが……。

 ちなみに山田さんと活動をともにしている「世界の医療団」ツイッターアカウントによると、今回の『24時間テレビ』でのリフォーム企画について、「パン焼きメンバーも、リフォーム後のお宅でパンを焼くのを今か今かと楽しみにしています」という。

 もともとヒロミのリフォーム企画をやっている『有吉ゼミ』(日本テレビ)でもいいから、ぜひ続編を放送してもらいたい。

最終更新:2018.08.27 06:44

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