デーモン閣下が相撲ファンの差別に苦言「相撲を支えてきた白鵬にファンはそんな態度かよ」一方、相撲協会は差別を放置・助長

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
demon_170728_top.jpg
『デーモン閣下 悪魔的歌唱論』(リットーミュージック)

 通算1050勝という前人未到の記録を打ち立てた横綱・白鵬。7月24日に放送された『クローズアップ現代+』(NHK)では、「白鵬が語る 史上最多1050勝への道」と題した特集を放送。彼の相撲人生を振り返った。

 そのなかで語ったデーモン閣下の言葉が、いま大きな話題を呼んでいる。

「感謝しなければならないのは日本人のほうでしょうと思いますよね。あれだけ相撲界が苦難のときに一生懸命屋台骨を支えて頑張ってきた白鵬にファンはああいう態度かよと。日本人はもうちょっと了見の広い気持ちで白鵬のことを見てやらないといけないと思うし、北の湖がいくら強かったからといって、負けてバンザイは出ませんでしたよ。イチロー選手がメジャーリーグでなにかやったときにブーイングが起きたら悲しいですよね? そういうことを思って相撲を見ていかなければいけないんじゃないかなと」

 知っての通り、白鵬はここ数年、相撲ファンからヒールのような扱いを受けるようになっている。それは、彼が圧倒的な強さを誇る横綱であるからということだけでなく、モンゴル出身の力士であるからだ。そんな差別的な振る舞いが許されるわけがない。

 番組内では、その象徴的な事件として、2013年の大相撲九州場所、当時はまだ大関だった稀勢の里との一番を紹介。この取り組みでは、稀勢の里が白鵬に勝利し、会場ではファンからのバンザイコールが起きるという異例の事態となった。そのときの白鵬の胸中を元横綱審議委員会委員で作家の内館牧子はこのように推し量っている。

「白鵬にしてみれば、あのバンザイっていうのはすごくショックだったと思うんです。色々なことで日本のために、国技のために、損得抜きに頑張ってきたというのが実際あると思うんです。だけれども、『こういうときになるとバンザイなのか』というのはあったと思うんですね」

 こういった客席の反応について、番組のインタビューを受けた白鵬は寂しげな笑みを浮かべつつ「応援の仕方というのは、来ている人たちの思いがありますからね。双葉山関の言葉を思い出すんですね。『勝って騒がれるのではなく、負けて騒がれる力士になりなさい』」と語っていたが、先に引いたデーモン閣下の発言でも少し触れられているように、2010年から相次いで発覚した野球賭博や八百長問題で大相撲自体が存亡の危機に立たされていたとき、なんとか支えようと奮闘したのは、他ならぬ白鵬だったはずだ。そんな白鵬にこんな思いをさせていいはずがない。

大相撲における差別問題は白鵬だけではない

 ただ、こういった差別に関する問題は白鵬だけのものではない。他の外国人力士にも向けられているものでもある。

 とくにひどかったのが、今年3月、モンゴル出身の大関・照ノ富士に対し、観客から「モンゴルへ帰れ」とのブーイングが浴びせられた事件だ。

 この大相撲春場所は、稀勢の里がケガを押して劇的な逆転優勝をおさめ、大きな注目を浴びたものとしても記憶に新しいが、その稀勢の里と優勝を争っていた大関・照ノ富士と関脇・琴奨菊との取組で騒動は起きた。

 左膝にケガを抱えた状況で臨んだこの一戦で照ノ富は立ち合いで変化、はたき込みで琴奨菊を破ったのだが、この内容を受けて観客は大ブーイング。「そこまでして勝ちたいんか」といった罵声が飛んだ。そのヤジのなかには「金返せ」「勝ったら何でもいいんか」というものに加え、「モンゴルへ帰れ」というヘイトスピーチそのものまであったという。

 たとえ取組の内容に不満があったとしても、「モンゴルへ帰れ」という差別ヤジが許されるはずがない。そもそも、照ノ富士にこれだけ強いヤジが飛び交ったこと自体に、差別的な側面がある。というのも、千秋楽で稀勢の里は照ノ富士に対し立ち合い変化を見せて勝利しているが、これには前述のような怒号は飛ばなかったからだ。

 また、この問題に関してはメディアによる報道もひどかった。照ノ富士と琴奨菊の一戦を報じたウェブ版のスポーツ報知は、なんと「照ノ富士、変化で王手も大ブーイング!「モンゴル帰れ」」と見出しをつけて報じた。

 ヘイトスピーチのヤジを好意的に受け止めているとも読めるこの見出しには批判が殺到。津田大介氏もツイッターで〈法務省がガイドラインとして「アウト」と示しているのにそれを否定せず(何なら肯定的な文脈で)見出しに使う報知新聞が一番アウトではこれ……。「美しい国」だよまったく。〉と苦言を呈するなどしていた。

排外主義がはびこる状況を後押しする日本相撲協会の問題

 これを受けて報知新聞社は翌日、見出しから「モンゴル帰れ」の部分を削除。また、記事本文にある「モンゴルに帰れ!」「恥を知れ!」などのヤジ紹介部分も削除したうえ、29日にはウェブサイト上に〈大関・照ノ富士関の記事と見出しで、観客のヤジを記述した部分に、ヘイトスピーチを想起させる表現がありました。人権上の配慮が足りず、不快な思いをされた皆様におわびします。〉と謝罪のコメントを出した。

 ただ、そもそも問題なのは、こういった出自を理由とした差別がはびこっている状況を放置している日本相撲協会だ。

 いや、むしろ日本相撲協会はそういった状況を積極的に後押ししていると断じてもいいかもしれない。その最たるものが国籍問題だ。

 白鵬は引退後も角界に残り一代年寄になりたいとしているが、日本相撲協会の規約には〈年寄名跡の襲名は、日本国籍を有する者に限ることとする〉とあり、その障壁が横綱を苦しめ続けている。この問題はメディアでもしばしば議論となっているが、日本を代表する国技が、その大変な功労者である白鵬に対しこのような排外主義的な姿勢を取り続けることに疑問の声をあげる人は多い。

「週刊新潮」(新潮社)17年8月3日号には、その規則をもち出し、白鵬に特例もかたくなに認めない理由として、「モンゴル勢に日本相撲協会が乗っ取られかねないと危惧したからです」とのコメントを北の湖前理事長に近かった人物からとっている。本当にそのような保身的な理由なのだとすればあんまりだろう。

 前述した『クローズアップ現代+』のなかで白鵬は、これからの相撲人生についてこのように語っていた。

「大相撲のおかげでここまで皆さんに愛されることができたし、その恩返しをしなければいけない。自分の国と、自分の両親、家族を愛せなかった人は、他の国の人々を愛せないと思うんですよね。モンゴルという国を私は愛しているからこそ、日本の大相撲でここまでがんばれていると思うし、そして、この国の人々に愛され、自分も愛していると思うんですよ。できるだけ長く、横綱を務めることが国の架け橋、また、世界中の相撲ファンのためであるのかなと思いますね」
 
 そもそも愛国心をもたなければならないとも思わないが、愛国心と排外主義をはきちがえたような差別思想は、一部の相撲ファンだけの問題でなく、現在日本中に蔓延しているものだ。白鵬の言葉も、デーモン閣下の言葉も、相撲界だけの問題と片づけるのでなく、いま日本を覆う排外主義や差別についてあらためて考え直す契機としたい。

最終更新:2017.12.06 04:29

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

デーモン閣下が相撲ファンの差別に苦言「相撲を支えてきた白鵬にファンはそんな態度かよ」一方、相撲協会は差別を放置・助長のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。デーモン閣下白鵬相撲編集部の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 文通費問題で「やる気なし」なのは維新!松井代表がセルフ領収証OKに
2 万博でも維新がインチキ!「税金使わない」はずが周辺整備に30億円
3 伊藤詩織氏への名誉毀損ははすみとしこ氏だけじゃない、国会議員も
4 クーポン券事務費967億円「過大でない」は嘘 子ども食事支援は22億円
5 玉川徹が『ドクターX』に出演して岸部一徳に言われた一言
6 『バイキング』坂上忍パワハラ報道は政権批判潰しだった!
7 葵つかさが「松潤とは終わった」と
8 吉村知事がコロナ協力金めぐる税金無駄遣いを棚上げし岸田クーポン批判
9 橋下徹がれいわ・大石あきこ議員に粘着攻撃で「大石パニックおじさん」の異名
10 安倍晋三に中国電力から原発マネーが 
11 羽田雄一郎参院議員の死が示すコロナ検査の現実
12 三原じゅん子が「政権を握っているのは総理大臣だけ」と無知発言
13 吉村知事「1日で文通費100万円、記憶ない」は嘘! 違法流用の証拠も
14 竹田恒泰の「差別主義」を認めた東京地裁の判決文を改めて紹介
15 小倉優香の番組中「辞めさせてください」の本当の理由は番組のセクハラ
16 岸田首相のオミクロン対策はザルだ! 入国禁止は外国人だけで差別性丸出し
17 政治資金報告書で「維新」議員の文通費横流しとデタラメ使途が続々判明
18 産経が沖縄報道で“ネトウヨまとめ”拡散
19 吉村知事への批判がテレビでも…北村教授、日本城タクシー社長、小木博明も
20 瀬戸内寂聴が生前、「美しい憲法を汚した安倍政権は世界の恥」
1 吉村知事がコロナ協力金めぐる税金無駄遣いを棚上げし岸田クーポン批判
2 クーポン券事務費967億円「過大でない」は嘘 子ども食事支援は22億円
3 安倍晋三に中国電力から原発マネーが 
4 橋下徹がれいわ・大石あきこ議員に粘着攻撃で「大石パニックおじさん」の異名
5 コロナ禍で困窮のさなか介護料を月6.8万円爆上げの鬼畜
6 吉村知事が府の施設に「表現の不自由展」使用許可を取り消すよう圧力!
7 文通費問題で「やる気なし」なのは維新!松井代表がセルフ領収証OKに
8 政治資金報告書で「維新」議員の文通費横流しとデタラメ使途が続々判明
9 伊藤詩織氏への名誉毀損ははすみとしこ氏だけじゃない、国会議員も
10 岸田首相のオミクロン対策はザルだ! 入国禁止は外国人だけで差別性丸出し
11 万博でも維新がインチキ!「税金使わない」はずが周辺整備に30億円

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄