稲田朋美防衛相が南スーダンで自衛隊を“戦死の危機”に晒しながら自分は“アレルギー”で視察中止の無責任

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稲田朋美オフィシャルサイトより


 稲田朋美防衛相が、今月17日に予定されていた南スーダンでPKOの任にあたっている陸上自衛隊の視察を急遽取りやめた。訪問予定日の2日前という突然の発表で、防衛省は抗マラリア薬服用の副作用とみられる「アレルギー症状」が現れたとしている。テレビ朝日の報道によれば、稲田氏はじんましんを発症したという。

 そんななか、一昨日18日頃から「自衛隊が南スーダンで襲撃をうけた」なる情報が出まわり、ネット上が騒然としている。

 調べてみると、この「自衛隊が襲撃された」という情報の出所は「Pars Today」というウェブサイトだった。「Pars Today」は2016年1月に活動を開始したイランのニュースサイト(同サイトより)。18日付で「日本自衛隊、南スーダンで襲撃を受けたか」なるタイトルの記事を公開、このように報じていた。

〈ジャパンタイムズによりますと、自衛隊員が駐留している国連のキャンプ付近にて、武装勢力の襲撃が発生したということです。〉
〈また、南スーダンの治安筋の話では、日本の自衛隊員は、武装勢力の狙撃兵からの銃撃を受けたとされています。〉(「Pars Today」より)

 しかし、結論から言えば、「自衛隊が襲撃された」というのはガセの可能性が高い。記事が言及している英字新聞「Japan Times」は、たしかに18日付の記事(“Gunfire occurred near Japanese GSDF camp in South Sudan”)のなかで、南スーダンの自衛隊宿営地のすぐそばで政府軍と反政府軍の武力衝突があったことを伝えているが、これは今年7月に起きた戦闘を指し、共同通信などが同様のことを報じている。

〈日本の自衛隊員は、武装勢力の狙撃兵からの銃撃を受けた〉とする「治安筋」の話については、「Japan Times」その他通信社や新聞報道でも一切見当たらないので「Pars Today」の独自情報の可能性もあるが、ディテールはなく、やはり「Pars Today」の報道の信憑性は低そうだ。実際、本サイトでも取材してみたが、裏付けはとれなかった。全国紙の防衛省担当記者が言う。

「一応、防衛省関係者にあててみたところ、完全に否定されました。他紙も取材したみたいですが、どこも確認できなかったようです」

 とはいえ、「隊員が無事でホッとした」などと胸をなで下ろしている場合ではない。南スーダンでは自衛隊宿営地の目と鼻の先で銃撃戦が行われるなど、いつ、「自衛隊襲撃」という事態が起きてもおかしくない状態にある。

 前述のように、南スーダンは内戦によって治安が悪化しており、これまで市民を中心に5万人ともそれ以上とも言われるおびただしい数の死者を出している。11年にスーダンから独立した南スーダンに対し、日本は12年よりPKO参加による自衛隊の派遣を始め、主にインフラ整備を中心に活動している。だが、13年には政府側と反政府側の内戦に突入し、14年に一度は停戦合意が成立したものの、今年7月には首都ジェバで大規模な戦闘が勃発。この戦闘だけで兵士や市民300人以上が死亡したとみられている。

 ところが、日本政府はこうした事実を徹底して隠してきた。今年3月、陸上自衛隊福知山駐屯地の史料館が、南スーダンの日本隊宿営地で13年12月16日に着弾した小銃弾を展示していることがわかった。防衛省は「着弾したことは確認していない」としたが、こうしたかたちで問題が発覚するまで、宿営地で銃声音を複数の隊員が聞いていたことなどは伏せられたままだった。

 そして、今年7月10〜11日にかけては、あわや陸自が戦闘に巻き込まれかねない事態も発生した。2日間にわたって、陸上自衛隊の宿営地付近にある建設中のビルに立てこもった反政府軍と政府軍との間で銃撃戦が断続的に続いたのだ。少なくとも政府軍に2名の死者が出たと報じられているが、これは陸自宿営地からたった100メートルという目と鼻の先での戦闘だった。いうまでもなく、自動小銃の射程範囲内だ。

 この銃撃戦による弾頭が、陸自宿営地内で複数発見されたことも判明している。岡部俊哉陸上幕僚長は7月21日の会見で、「宿営地近くでの発砲にともなう流れ弾が上空を通過しているという報告は受けていた。弾頭は日本隊を狙って撃たれたものではないとみている」と述べたが、朝日新聞の報道によれば、銃撃戦の最中、自衛隊員は宿営地内で防弾チョッキやヘルメットをつけ、身を低く構えていたという。陸自が戦闘時における態勢をとっていたのは疑いようがなく、これは戦闘に巻き込まれる一歩寸前だったことを意味すると言える。

 また、同月8日には国際協力機構(JICA)の車両が走行中に銃弾を受けている。菅義偉官房長官は会見で「人的被害はなかったとの報告を受けている」と説明した。同月13日、悪化するジェバの情勢を受け、JICA関係者ら計93人が民間機で隣国に退避。その翌日には航空自衛隊が輸送機を出動させ日本人4名を避難させた。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、戦闘が再燃した7月8日〜8月28日にかけて、スーダン国内の約12万人が周辺国に逃れ、難民数は約98万人に達したという(毎日新聞9月13日付)。

 誰がどう見ても、これは武力紛争状態であり、PKO派遣の条件である「停戦合意」は事実上、崩壊している。これ以上の自衛隊員の危険を考えれば、まずは即刻 PKOの引き上げを図るのが当然のはずである。

 ところが、安倍内閣は「活動地域において我が国のPKO協力法上の『武力紛争』が発生したり、(PKO)参加5原則が崩れたりしたとは考えていない」」(菅官房長官)と強弁し続けている。

 どういうことか。1992年に成立したPKO協力法の「参加5原則」には、〈紛争当事者の間で停戦合意が成立していること〉という条件が含まれているが、毎日新聞9月9日付によれば、ここでいう「停戦合意」は南スーダンが11年に独立した際のスーダンとの停戦合意を指す。したがって、スーダンとの合意が崩れない限り、どれだけ南スーダンで戦闘が発生しても「紛争当事者による武力紛争」とは見なさないという。むちゃくちゃな屁理屈としか言いようがない。

 しかも、政府は強行成立から1年が経った新安保関連法に基づく自衛隊の「駆けつけ警護」などを南スーダンにおける新たな任務として課そうとまでしている。「駆けつけ警護」とは、自衛隊が現地の武装勢力等から直接攻撃をうけなくとも、国連やNGO関係者が襲撃された際に現場に駆けつけて救助するというもの。当然、武器使用が想定されており、戦闘による隊員の死傷者が出ることが予想される。また、「駆けつけ警護」による武器使用で、結果的に一方の勢力に加担することになれば、これは《国際紛争を解決する手段として》武力行使等を禁じた憲法9条に明らかに違反することになる。

 しかし繰り返すが、安倍政権には、南スーダンを「駆けつけ警護」の先例とすることしか頭にない。事実、政府は早ければ来月10月にも国家安全保障会議(NSC)でその可否を判断する見通しで、今月14日には自衛隊がこれを想定した訓練を開始している。

 また、15日に行われた日米防衛相会談でも、稲田防衛相が訓練開始をカーター国防長官に伝えて「歓迎する」との言葉を引き出しているように、安倍政権にとって自衛隊の「駆けつけ警護」は、日米同盟強化のための“みつぎもの”の側面も強い。また、海外での武力行使の実例をつくりあげることで、9条を骨抜きにし、悲願の改憲につなげる狙いも透けてみえる。

 言うまでもなく、自衛隊派遣だけが国際貢献や平和活動ではない。いずれにせよ、安倍政権の政治的な配慮や思惑によって、自衛隊員の生命を危険にさらす行為に対して、わたしたちはこのまま黙っていていいわけがないだろう。

 しかも、自衛隊員にはこうした無茶を強要する一方で、そのトップである稲田防衛相は前述のように、南スーダン訪問をドタキャンした。15日のアメリカでの防衛相会談には予定通り出席し、同日にはオスプレイにも試乗したにもかかわらず、その2日後の南スーダンの陸自視察は「アレルギー」を理由に取りやめてしまった。

 稲田防衛相はこれまで、「自分の国を守るためには、血を流す覚悟をしなければならない」「靖国神社は『祖国に何かあれば後に続きます』と誓うところでないといけない」などと、盛んに“国のために命を捧げろ!”と号令をかけてきた。それが、自分はアレルギーで取りやめとは……。

 すでにネット上では〈怖くて逃げたか〉〈国の為にと威勢のいい事を言っていたがこの始末〉〈稲田センセーは安全地帯から戦争を煽る典型〉などという批判の声があがっている。

 また、防衛省周辺では、稲田氏の取りやめは、「アレルギー」ではない別の理由があったのではないか、とも言われている。

「稲田氏は7月に銃撃戦のあった宿営地も訪れる予定だった。もしかしたら、現地で再び大規模戦闘が行われるという情報をつかんでやめたのではないか、という憶測も流れてますね」(防衛省担当記者)

 いずれにしても、安倍首相や稲田防衛相は自衛隊員を“戦死”の危機に晒しながら、自分たちは安全地帯にいて「命をかける」気なんてさらさらないのは間違いない。しかもそれでいて、連中はさらに、危険な状態をつくりだそうとしているのだ。

 改めて繰り返しておく。今回の「自衛隊が襲撃された」という一部報道は事実でなかった可能性が高いが、これは近い将来、現実となり得る。自衛隊が紛争地域で死と隣り合わせの任務に従事させられている一方、「国民はお国のために死ぬのが当然」と雄叫びをあげ続ける安倍政権。その恐ろしさを、私たちはよくよく自覚するべきだろう。
(宮島みつや)

最終更新:2017.11.12 02:48

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