バス事故で教え子を亡くした尾木ママが「あれは事故ではなく事件」「小泉政権の規制緩和のせい」

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
ogimama_01_160208.jpg
尾木直樹オフィシャルブログより


 年明け早々、15名の命が奪われてしまった軽井沢スキーバス事故。バス運行会社である「イーエスピー」では、運行指示書の不備や、法定の下限を下回る価格で受注していたことなど問題点が次々に発覚しているが、このバス事故を〈事故などではなく「事件」という気がしてなりません〉と訴えているのは、教育評論家の“尾木ママ”こと尾木直樹氏だ。

 大きく報じられたように、今回のバス事故では、法政大で教鞭を執る尾木ママのゼミ生4名が犠牲になっている。そのため尾木ママはマスコミの取材に対しても悲痛な心境を語ってきたが、現在発売中の「週刊文春」(文藝春秋)2月11日号の連載コラムでは、バス事故の構造的な問題に踏み込んでいる。

 スキーバス事故が起こってしまった構造的な問題──それは小泉内閣による「規制緩和」だ。

 今回のバス事故を起こした運転手は65歳だったが、バス事故において65歳以上の高齢運転手だったケースは〈おととしまでの十年間で二倍以上〉。軽井沢の事故のすぐ後の17日に兵庫県で起こった、観光バス運転手が走行中に意識を失った件では運転手の年齢は70歳、つづけて20日に乗客24名が怪我を負った東京・大田区のバス事故でも運転手は58歳。そうしたことから尾木ママは〈労働条件が厳しいバス運転手の仕事には、若者が寄り付かなくなっているのかもしれません〉といい、〈その背景にあるのが、二〇〇〇年の規制緩和〉だと述べるのだ。

 ご存知の通り、小泉純一郎・元首相は「聖域なき構造改革」をスローガンに掲げ、さまざまな分野で規制緩和を行った。バス会社についても、それまでは事業参入も免許制だったが、規制緩和によって認可制へと変更。新規参入が増加し、そのため価格競争が勃発した。尾木ママはこうした規制緩和による変化が、事故につながっていると指摘する。

〈自由競争を導入したことで運賃もグンと下がり、いい面もあるのでしょうが、コスト削減による低運賃化、激務化から運転手不足。安全への配慮を怠ってしまったのではないかと考えてしまいます〉

 このような指摘の声は他のコメンテーターや識者からも挙がっているが、しかしこれはバスだけに限った話ではない。それは、バス業界と同じように規制緩和が行われた、タクシー業界でも同様の問題が考えられるからだ。

 タクシー業界も00年に道路運送法が一部改正され、規制緩和が実施されたが、バスと同様に新規参入する会社が急増、タクシー台数は飛躍的に増え、運賃の値下げ競争が勃発した。『公共交通が危ない─規制緩和と過密労働』(安部誠治/岩波ブックレット)では、タクシー業界の「規制緩和がもたらした結果」を、このように解説する。

〈この業界で働く人々が最低限の生活さえも維持できない、遵奉精神のあるまともな経営は立ち行かない、そして、交通事故が大幅に増えた、という現実である。タクシーの場合、鉄道や航空機のような大規模事故にはならないために目立ちはしないが、不幸な事故は日々積み重ねられており、輸送の安全は確実に蝕まれている〉

 同書が発行されたのは05年であるためデータは古くなってしまうが、だが現在も問題は大きく変わってはいない。昨年発売された『潜入ルポ 東京タクシー運転手』(文春新書)を執筆したノンフィクション作家の矢貫隆氏も、「2013年に東京でタクシーが起こした人身事故件数は4157件。2000年の7226件からは減っていますがバブル時の1989年の3151件と比べると上回っています(警視庁調べ)。全自動車の事故数に占める割合も、1989年の5.8%から2013年は9.9%と増加しています」(「東京経済オンライン」矢貫氏インタビューより)と話している。13年の国土交通省の資料「事業の種類別の重大事故発生状況」でも、タクシー・ハイヤーの死傷状況は828 人で前年に比べ 44人増となっており、全体の交通事故数・死者数ともに年々減少傾向にあることを考えると、タクシー事故の増加は数字以上に際立っている。

 また、前述した『公共交通が危ない』では、〈タクシーにおいては、規制緩和論者が主張する「市場原理による需給均衡」はもたらされないのである〉と警鐘を鳴らしているが、これはバスも同じこと。参入者が増え、低価格競争に晒された結果、運転者の健康管理や適性問題、さらに安全面への対策にかかる時間やコストが削られ、それが重大事故につながっていっているのだ。

 無論、バスやタクシーだけではなく、こうした構造的な問題は他分野でも起こっている。事実、CoCo壱番屋の廃棄ビーフカツ不正転売問題では、セブン&アイ・ホールディングスやローソン、イオンなどの大手企業のプライベートブランドの廃棄商品も横流しされていたことが発覚したが、これもまた食品業界の苛烈な価格競争によって引き起こされた事件といえよう。

 尾木ママは前出の連載コラムで、〈今回の事故だけでなく、利益を追求するあまりひとりひとりの人間が置き去りにされているように感じます。日本全体がどこかおかしくなってきている〉と見解を述べている。新自由主義が経済だけでなく人命さえ脅かす──いまこそ本質的な議論が必要なのではないだろうか。
(水井多賀子)

最終更新:2016.02.08 09:02

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

公共交通が危ない―規制緩和と過密労働 (岩波ブックレット (No.665))

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

バス事故で教え子を亡くした尾木ママが「あれは事故ではなく事件」「小泉政権の規制緩和のせい」のページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。事故水井多賀子規制の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
いいね! 数
1 萩生田発言が大阪12区補選に影響!安倍首相が窮地に
2 週刊誌の秋篠宮バッシングは官邸が発信源か?
3 ウーマン村本がよしもと社長からの圧力を激白!
4 ブラックホール会見でNHK記者“日本スゴイ”質問に世界が失笑
5 橋下徹が岩上安身リツイート裁判で矛盾を追及され逆ギレ!
6 萩生田光一の問題は消費税延期論でなく「ワイルド改憲」発言
7 橋下徹に恫喝された女子高生が告白!
8 美智子皇后が誕生日談話で安倍にカウンター
9 上野千鶴子「東大祝辞」へのワイドショーコメントが酷い!
10 松尾貴史「日本を壊しているのは安倍さん」
11 秋篠宮が「大嘗祭」には秘密の儀式が
12 マツコ「安倍首相は馬鹿」にネトウヨが
13 吉本興業が社をあげて法務省PR!
14 安倍首相の改憲キャンペーンに松本人志、小藪千豊らが協力?
15 ピエール瀧逮捕でワイドショーが石野卓球に「謝れ」攻撃の異常
16 秋元康の東京五輪に椎名林檎が危機感
17 維新応援団・野村弁護士が懲戒、橋下徹にも請求が
18 ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける経産省メール
19 東電が福島原発の廃炉作業を外国人労働者に押しつけ
20 報道特集が中曽根の慰安所作りを報道
1 国民健康保険料が大幅値上げ、年間10万円増額も
2 安倍首相と省庁幹部の面談記録ゼロ!安倍政権“公文書破壊”の実態
3 石野卓球がワイドショーに勝利した理由
4 忖度道路めぐり安倍の直接指示の新事実が
5 安倍首相が「桜を見る会」に『虎ノ門ニュース』一行を堂々招待
6 安倍が“忖度道路”の要望書を提出、山陰自動車道でも利益誘導
7 上野千鶴子「東大祝辞」へのワイドショーコメントが酷い!
8 塚田「忖度」発言は事実! 麻生利益誘導の疑惑
9 イチローに国民栄誉賞を断られ安倍政権が赤っ恥
10 野党議員をデマ攻撃「政治知新」の兄・自民党県議を直撃!
11 NHKで国谷裕子を降板に追い込んだ人物が専務理事に復帰
12 維新勝利で橋下徹が「反対した年配の人が死んじゃった」
13 中村文則が安倍政権批判に踏み込む理由
14 『あさイチ』の「中高生に韓国が人気」企画炎上の異常
15 安倍首相「桜を見る会」招待状が8万円で売買との報道!
16 菅官房長官「令和おじさん」人気の正体!
17 ゴーン逮捕“国策捜査説”を裏付ける経産省メール
18 「あつまれ!げんしりょくむら」以外も…原子力ムラの醜悪SNS戦略
19 衆院補選で安倍自民党が大惨敗の予想が!
20 ピエール瀧出演の『麻雀放浪記2020』に“安倍政権への皮肉”

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄