武井咲主演『エイジハラスメント』は安倍政権批判ドラマ!? 「女性が輝く」「女性の活躍」は口だけで実態はセクハラ三昧って安倍内閣そっくり

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テレビ朝日『エイジハラスメント』HPより


「てめえ、五寸釘ぶちこむぞ」

 軒並み低調な今期のテレビドラマだが、にわかに流行語化しているのが、この台詞。テレビ朝日で木曜21時から放送されている『エイジハラスメント』で、ヒロインを演じる武井咲が毎回ぶっ放している決め台詞である。

 タイトルからもおわかりになるかと思うが、この『エイジハラスメント』は、一流商社に入社した新人の武井咲が、男性上司からは「若くてきれい」と消費され、一方、女性社員からは若さを武器にしていると疎まれる“エイハラ地獄”で奮闘するという物語。視聴率は振るわないものの、『半沢直樹』ふうの勧善懲悪ストーリーにハマっている人も多い、らしい。

 しかも、この『エイジハラスメント』の脚本を手がけているのは、「女→女の嫉妬を描かせたら右に出る者はいない」とも称される、あの内館牧子御大。そのため、男性からのハラスメント以上に女性が若い女に抱く嫉妬もねっとりと描写し、武井は上司の稲森いずみから入社早々に「嫌われバイ菌撒き散らしすぎなの!」と怒鳴られる理不尽を経験。その上、武井は武井で稲森と不倫中の上司・小泉孝太郎と「出会って5秒で合体」ぐらいの素早さで関係をもったりするので、毎度ツッコミが追いつかない展開となっている。

 だが、このドラマの注目すべき点は、そうした“ネタ感”だけではない。というのも、安倍政権が掲げる「女性の活躍」というキーワードの胡散臭さが、なんともコッテリと描かれているからだ。

 たとえば、物語の舞台となる一流商社では、次期社長を狙う常務役の風間杜夫が安倍首相よろしく、頻繁に「女性の活躍」「女性を輝かせる」と口にする。が、社内の実態は、女性社員がなにか口答えすると「更年期」と言われ、「25(歳)以上は女じゃない」「30過ぎた女に彼氏いるかどうか聞けない」「女子社員はうーんと若いか、できるブスのほうがいいよね」「女はジューシーでなくなるとシーサーになるんですね」などと男性が堂々と話すという、どうしようもない状態。そうした状況を許せない正義漢の武井が、毎回、父親の座右の銘である「てめえ、五寸釘ぶちこむぞ」という決め台詞を合図にブチ切れるのである。

「女性の活躍」と言ったって、それを提言する政治の場でさえ、地方議会では女性議員の52%がセクハラ被害を受けているというデータもあるし、セクハラヤジもなくならない。そんな現状なのだから、一般企業に「女性の活躍」を求めてもすんなり上手くいくわけがない。ドラマには、そうした批判が込められているかのようだ。

 さらにドラマのなかの常務は、「女性の活躍」や「男性の育児休暇の充実」を喧伝するものの、いざ武井が問題提起をすると「乙女の感傷で物を言われても困る」と一蹴するような人物。そのため、会社が女性の登用を進めようとしても、武井たちは信用ならない。

「型どおりに女性登用を売りにすると安心なんだろうな」
「ですから女性が大きい役に就くと能力がないのに女だから就けたと言われたりするんです」

 この台詞は、まるで先月28日に国会で採決された「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」の批判にも聞こえる。「女性活躍推進法」は、企業や団体が女性管理職の割合などといった数値目標を設定・公表することを義務づけているが、このように法案で女性を管理職に押し上げても、現場では「能力もないのに」と言われるだけだと、ヒロインの武井は憤っているのだ。

 現実でも「女性活躍推進法」に対しては、管理職を増やす前に待機児童やマタハラ問題など、働きやすい環境をつくるための具体的な解決策を盛り込むべきだという批判も起こっている。安倍首相は本気で「女性の活躍」を考えているのか?という世間の疑問、そして「女性の活躍」という言葉の実態のなさを、このドラマは描いているように思えるのだ。

 くわえて、ドラマではさらに、課長という役職に就く稲森いずみが、風間の完全なイエスマンとして描かれているところも気になる点である。女が出世するには上司である男に楯突くことは許されない、従順であるべしというその関係は、まるで安倍首相と女性閣僚たちを見ているようだからだ。

 そもそも、安倍内閣は“オトモダチ人事”であることは有名な話だが、安倍首相が「女性の活用」を謳って入閣させた女性閣僚たちは、揃いも揃って安倍首相と思想を同じくしている。

 たとえば、高市早苗総務相や山谷えり子拉致問題担当相、有村治子女性活躍担当相の3人は、安倍首相と同じく極右団体・日本会議の懇談会メンバーであり、川上陽子法務相は日本会議とも近い、安倍首相が会長をつとめる神道政治連盟に所属している。また、自民党政務調査会長という重要ポストに就く稲田朋美も同様で、彼女たちはいずれもゴリゴリのタカ派発言を繰り返し、有村、高市、山谷、稲田は、今年の終戦記念日にそれぞれ靖国神社を参拝。その姿は、まるで「参拝したいのにできない安倍首相の代わりにお役目を果たしました」と言わんばかりの忠誠心にあふれていた。

 こうした安倍内閣の態度を見ていると、結局、現政権で女が“活用してもらう”ためには、上司が喜ぶ言動を心がけ、お気に入りになるしか道がないように思えてくる。だいたい安倍首相がヤジを飛ばすのは、辻元清美や蓮舫といった女性議員ばかり。安倍首相は、自分の思想とは異なる気の強そうな女を嫌っているから、ついついヤジってしまうのではないか。そんな了見の人物がいくら「女性の活躍」を謳ってみても薄ら寒いだけで、ドラマのなかで常務を演じる風間は、そういう意味でも安倍首相とダブって見えるのだ。

 口ばっかりの「女性の活躍」は信用できない……武井がドラマ内で浮かべる怪訝な表情は、それこそいま、社会で働く女性の晴れない気持ちを表現しているかのようである。

 ちなみに、今回このドラマが取り上げた「エイジハラスメント」と呼ばれる行為は「エイジズム」とも呼ばれている。エイジズムとはおもに高齢者に向けられる偏見や差別を指す言葉だが、女性の若さに価値を見出すこともエイジズムの一種であり、これはセクシズム(性差別)と組み合わさった状態。ここで思い出されるのは、またしても安倍首相の言葉である。じつは、安倍首相は以前、猪瀬直樹が東京都知事を辞任した際に「都知事候補は若い女性がいい」と発言している。これぞまさしくエイジズム+セクシズムの2点盛り、立派な「エイハラ」発言だ。

「女性の活躍」「女性を輝かせる社会」と言うのなら、安倍首相にはもっと自身の差別意識に注意を向けてもらいたい。じゃないと、五寸釘ぶちこまれますよ?
(大方 草)

最終更新:2015.09.03 02:00

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