辻仁成が日和る太田光に説教!「安倍首相に直接会っても意味がない」「太田さんの批判はフランスでは優しいほう」

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左「タイタンホームページ」プロフィールより/右「Jinse TSUJI Hitonari Official Web Site」より


 笑福亭鶴瓶、美輪明宏、長渕剛、中居正広、SHELLY……安倍政権による“戦争法案”に対し、多くの勇気ある芸能人・著名人が声を上げ始めている。

 そんな中、なんともだらしない姿をさらしているのが爆笑問題の太田光だ。かつては、戦争否定と護憲を強く訴えていたのに、今は歴史認識についても安保法制についても口を濁し、安倍首相からお花見のお誘いがあれば、ホイホイ応じて記念撮影におさまって喜んでいる。それどころか、安保法制反対のデモに「やっても無駄」と水をさし、安倍政権批判をする制服向上委員会に対しては「痛々しい」などと妨害とも思える発言をする始末だ。

 ところが、そんな太田が最近、意外な人物に説教された。説教したのは、太田の事務所・タイタンに所属している作家の辻仁成。

 それは「週刊プレイボーイ」(集英社)の戦後70年企画で太田と辻が「「笑い」と「戦争」」と題する対談を行ったときのことだ。

 太田はこの対談でも、安倍首相の花見会に参加した問題を持ち出し、こんなことを辻に語っていた。

「俺、あのバカヤロー発言の後に花見会に行ったら、世間から『太田は懐柔された』って言われたんだけど、そのとき、『でも、会って、直接話した方がいいじゃん』って思ってたんですよ」

 花見会の直後、太田は大橋巨泉にラジオで「お前、利用されてるんだよ」と批判され、「直接本人に会うことが意義がある」と言い張ったが、この対談でもまったく同じ主張を繰り返したのだ。

 しかも、唖然としたのは、その「直接会った意義」の中身だ。太田はこう続けたのである。

「それで花見のときに『今度、僕のテレビに出てください』って伝えたら、『もちろん出ますよ』と言ったんです」
「だから、(中略)会ったから話せることがある、進展することもあるんですよ」

 おいおい、いったいどこまでおめでたいんだ、と言いたくなるが、しかし、辻はこうした太田のくだらない言い訳に対して、直接、強い批判をしたわけではない。

 むしろ、対談のほとんどは「そうだったんだ」「そうかもしれないね」などと相づちをうっていた。

 ところが、太田が瀬戸内寂聴に会った際のエピソードを話した時のこと。

「『先生、デモの先頭に立つぐらいなら、安倍(晋三)さんと寝てくださいよ』っていったら、『あの人は、あたしの趣味じゃないのよ』って」
「俺、寂聴さんに会った時に言ったんですよ。『平和運動ということで相変わらずデモに行っていますけど、そういうスタイルってどうなんですか。先生ならマイクを使って外からアピールする必要はないでしょ。直接、本人に会って言えばいい』」

 太田は瀬戸内にこんなツッコミをいれたことを自慢げに語ったのだが、これに対して辻は、こう切り返したのだ。

「寂聴さんは、個人的に会って話をして約束しても、それが守られるとは思っていなんじゃないの」

 そして、自身が安倍首相に会ったことという経験談を語りだす。辻はフランスのオランド大統領からパーティに招待された際、ばったり安倍首相に会った。このとき、辻は安倍に「辻さんは、パリに住んでいるんですか」と訊かれたのだが、「はい」としか答えなかったという。そして、その理由を自らこう解説したのだ。

「その時に僕が『戦争反対です』と言ったところで『ああ、そうですか』で終わっちゃうでしょ」

 辻は太田に「直接、安倍首相に会って何かが変わるなんてことはないよ」と諭したのだ。そして、他にもっとやるべきことがある、とでも言うかのように、フランスの言論状況について語り始めた。

「爆笑問題のように人気があって、社会的影響力が強いコメディアンはフランスにもたくさんいます。それはフランス人は『批判精神を失ったら生きていけない』という覚悟が人気を支えているからだと思うんです」
「フランスでは『批判でもなんでも言えることが素晴らしい』という伝統が何百年も続いているんです」
「だから、それを暴力で潰そうとするとフランスの国民を立ち上がるんですよ。実はテロに遭った『シャルリ・エブド』はフランス政府に一番牙を剥いていた新聞なんです」

 太田が『シャルリ・エブド』について、「まあ、行きすぎたものもあったようですけど」と腰の引けたツッコミを入れてきても、辻はまったくひるまず、こう返す。

「だから、行きすぎたことをしたら抗議される。でも、その抗議によって新しい議論も生まれるんです」

 そして、太田に対しても、もっと政権批判をすべきだと叱咤するように、こう語ったのだ。

「日本で強い発言力を持っているのはコメディアンの人だと思うんです」
「太田さんは非常によく頑張っている。でもフランスと比べたら、まだまだ批判は優しいほうです」
 
 正直、辻仁成という作家がここまで言論に対する高い意識をもっているとは思っていなかった。たしかに辻はバンド「エコーズ」時代はニューヨークパンクをルーツにした音楽を手がけ、社会性のあるメッセージソングも歌っていたし、作家になった後も、言論の重要性について語ったことはある。しかし、なんとなく、スタイルを模倣しているだけ、という印象がぬぐえなかった。

 それが、この対談では、数少ない発言ながら、生活や体験の中から出てくるようなリアルな意識を感じたのだ。やはり、中山美穂との結婚と離婚によるさまざまな圧力、そしてフランスでの生活が彼に本物の強さを与えたのだろうか。

 しかも、意外だったのは、大橋巨泉に批判された時はむきになって反論していた太田が、批判精神の重要性を説く辻に対しては、「そうなんですか?」「それはすごい」などとしきりに同意。その主張に説得されていたことだ。

 冒頭でも指摘したが、太田はもともと、強い批判精神をもった芸人だった。とくに2000年代はじめには雑誌連載や単行本、さらにはラジオで、憲法や教科書問題、靖国神社などに踏み込み、右傾化の風潮を徹底批判していた。

 しかも、それはたんに過激というだけでなく、中沢新一との共著『憲法九条を世界遺産に』(集英社新書)のタイトルが象徴的なように、今までにない新しいかたちの表現をとっていて、強い訴求力をもっていた。

 それが、右翼団体の抗議を受けて以降、一気にトーンダウン。以降のだらしなさは本サイトでも何度か指摘したが、しかし、今からでもけっして遅くはない。太田にはぜひ、同じ事務所の辻にしょっちゅう会って、影響を受け、その批判精神を取り戻してほしい。

 憲法解釈による集団的自衛権容認、安保法制の制定という10年前とは比べようもないほど戦争への危機が高まっている現在こそ、「憲法九条を世界遺産に」と叫んだ太田のセンスが必要なのだから。
(伊勢崎馨)

最終更新:2015.08.17 07:02

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