資産数十億円? ビートたけしの「孫を養子に」は相続税対策だった!?

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オフィス北野ホームページより


 2015年から改正された相続税。2つの大きな改正ポイントの1つめが相続税の算定から控除される基礎控除が現行の6割にまで大きく減少することだ。

 現在の基礎控除額である「5000万円+(法定相続人の数×1000万円)」が「3000万円+(法定相続人の数×600万円)」となり、標準的な「両親と子供が2人いる家庭」で父親が亡くなった場合、法定相続人は母親と子供2人の合計3人となり、これまでの基礎控除額「8000万円」が「4800万円」にまで下げられてしまうのだ。「相続税の申告者は今年度見込みの約7万人から首都圏を中心に約11万人に増える」と見られている。

 大きな改正ポイントの2つめが相続税の税率が引き上げられたこと。相続税は故人(被相続人)が残した財産にかかるものではなく、遺族が分けてもらった遺産にかかるもの。相続税は累進課税になっており、もらった遺産が多いほど税率が高くなる仕組みだ。今回の改正で遺産の取得金額の6億円超部分(最高税率)が55%になったのだ(これまでは「50%」だった)。

 こうした厳格化の方向に対して、出来る限り納税額を少なくしようという節税も盛んだ。

 資産家の間でよくある対策としては、法定相続人を増やそうと、親(被相続人)が養子縁組をすること。養子も実子のほかに1人までは法定相続人として認められるため、子どもが一人っ子であれば、通常、その配偶者を養子にすることで、子どもの法定相続人を2人にすることができる。

 かつては、この節税対策のために、多くの養子を抱える富裕層が続出したことから、現在では、法定相続人にプラスできるのは1人までと制限されている。また、孫を養子縁組することで、子ども世代への相続を一世代スキップする方法もあるが、孫1人だけを特別扱いすることになるので、家族間がギクシャクしかねない。

 法定相続人を増やしておくことのメリットは相続の際の生命保険の非課税枠にもある。生命保険金の非課税枠は「500万円×法定相続人」。法定相続人が1人増えれば、生命保険金の非課税枠も500万円増えることになるのだ。

 こうした相続税対策は有名人も行なっている。

「たけし氏は孫を養子にしておいてよかったとにんまりしているかもしれません」というのは、元国税調査官の大村大次郎氏。『やってはいけない相続対策』(小学館新書)では、改正後の相続税対策を指南しているが、節税のケースとして自分の長女の子供(つまり孫)を養子にしたビートたけし(北野武)のケースを紹介している。たけしの長女はいったんは芸能活動をしたものの、その後、引退し2004年に一般男性と結婚。夫とは出産と同時に別居、その後離婚し、長女は実家に戻っている。

「『たけしが孫を養子にした』と報じられたとき、芸能レポーターなどは『娘が子どもの面倒を見られないので、たけし夫婦が養子にしたのだろう』などと憶測していました。しかし、たけし氏が孫を養子にしたのには別の理由があると筆者は思っていました。
 たけし氏が、数十億円の資産を持っているとしましょう。もし彼が死んだ場合には、当然、遺族にはかなりの相続税がかかります。しかし、孫を養子にすれば相続税が安くなります」

 孫を養子にする前の法定相続人は3人(妻、長男、長女)。その資産を「20億円」と仮定した場合、その財産を3人で分配すれば、一人あたり7億円。2015年より改正された相続税率では「6億円超部分」には「55%」の相続税がかかることになる。

「孫を養子にすれば、相続者がもう一人増えることになり、3人で分配するものを4人で分配することができます。20億円を3人ではなく、4人で分けることができるのです。つまり一人当たりの分配額は7億円から5億円程度になります。(略)一人当たり5億円であり、税率も50%で済みます」

 格差拡大、富の集中という資本主義への処方箋として、グローバル累進資本課税が必要だとしたトマ・ピケティの『21世紀の資本』が話題となっているが、そもそも金持ちの節税が横行している現状では格差は縮まりようがないのかもしれない。
(小石川シンイチ)

最終更新:2015.02.17 12:21

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やってはいけない相続対策 (小学館新書)

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