たかじんのもうひとつの謎!反骨の芸人がなぜ安倍首相に擦り寄ったのか

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
takajin2_01_140920.jpg
『たかじんnoばぁ〜DVD-BOX THEガォー!LEGEND II』(東宝)

 先日、本サイトで『ゆめいらんかね やしきたかじん伝』(角岡伸彦/小学館)を紹介し、たかじんの小心な一面とコンプレックス、そして彼が「在日」というルーツをひた隠しにしていたこと取り上げた。だが、たかじんについては、どうしてももうひとつ触れておかなければならないことがある。それは安倍晋三総理をはじめとする政治家との関係だ。

 既に報道されているように、安倍首相は今年3月3日に行われた「たかじんを忍ぶ会」の筆頭発起人をつとめるなど、生前からたかじんと親しい関係にあった。安倍首相は『たかじんのそこまで言って委員会』(読売テレビ)に計10回も出演し、自民党総裁選への再出馬の際もたかじんの励ましがあったことを認めている。

 かつては、反骨の人というイメージの強かったたかじんがどうして、最高権力者である政治家とここまでべったりになってしまったのか。

 本書でもまた、たかじんと安倍の関係について言及している。2人の出会いは04年『委員会』の特番で当時、自民党幹事長だった安倍を訪ねたことだった。11年には、野党に転落して失意の安倍を訪ね、地元山口県の俵山温泉で、男2人仲良く温泉につかりながら親しげに政治談義を繰り広げた。たかじんの死後も、この温泉談義シーンは繰り返し放送されているが、この特番は明らかに当時、政治生命の危機にあった安倍の再生、イメージアップのために仕掛けたものだった。

「『委員会』では、日本共産党を含め、あらゆる政党関係者が出演している。しかし安倍を特番で登場させ、持論に同調し、ありがたがるたかじんと制作者側には、疑問を感じずにはいられなかった」
「政治家との仲良しぶりを見せるたかじんには、反骨精神のかけらもなかった」

 現大阪市長・橋下徹との関係も同様だ。たかじんは政治的野心を持ち始めた橋下を全面的にバックアップし、そして当選させた張本人でもあった。橋下はかつて『委員会』の常連コメンテーターだったが、08年の大阪府知事選に出馬し、圧倒的な強さで当選している。この時、橋下はたかじんの番組のおかげで当選したようなもの、とたかじんに対する謝辞さえ送っている。本書がいうように「たかじんはこのとき、いわば関西政界のフィクサー的な役割を果たしていた」。 

 しかし、たかじんはもともと政治家嫌いだったという。西川きよしが参議院選挙でトップ当選した際も、「そもそも庶民の“笑い”とは、ある意味権力と対峙したところにあるのではないだろうか?」と批判していたほどだ。だが、たかじんは明らかに変節していった。「庶民の代弁者は、いつの間にか権力者のそれに代わっていた」のである。

 たかじんの政治への接近に『たかじんのそこまで言って委員会』が大きな役割を果たしたことはたしかだ。本書も「『委員会』以降、たかじんは番組を通して、好むと好まざるとにかかわらず、政治に関与するようになった」と書いている。そして、保守派、右派的な主張を強めていく、

 たかじんは09年10月号の「クイックジャパン」(太田出版)でこんなことを語っていたという。

「僕自身は右寄りとは意識していないですよ。ただ気がつくとね、正論が右に寄っとんねん」

 “権力者”に喜んで摩り寄り、彼らの主張に同調するようなナショナリスティックな発言を繰り返すようになったたかじん。こうしたたかじんの“変節”の理由はつまびらかにはされていないが、しかし、これもたかじんの強烈なコンプレックスのひとつの現れだったのかもしれない。

 本書が指摘していたように、たかじんは「在日」というルーツに強いコンプレックスをもっていた。だからこそ、その裏返しとして「日本」という国家を強固にする思想、それを主張する権力者に傾倒していったのではないだろうか。「日本人より日本人らしく」ありたい、そういう思いの表れだったのではないのか。そんな気がしてならないのだ。

 だが、こうした分析とは異なるもうひとつのエピソードが本書には紹介されている。それはビートたけしとの関係だ。

 かつてたかじんは東京の大物芸人であるたけしに批判的だった。92年8月7日号の「フライデー」(講談社)でたかじんはたけしにこう毒づいている。

「たけしも明らかに疲れとる。ところが漫才をせえへん彼のフィールドはテレビにしかないから、走り続けなあかんワケや。映画や本をやるのは『オレはもうあかん』というエクスキューズにすぎんのやな。その一方でオレがやっているから大丈夫みたいな甘えもある」

 しかしその1年後、『たかじんnoばぁ〜』(読売テレビ)へのたけしの出演が実現する。番組内で「映画などは適当にやっても、お笑いだけは絶対に手を抜かない」などと話すたけしに、たかじんはそれまでのたけし批判などなかったかのように、称賛を繰り返した。

 そして、出演料はいらないというたけしに、番組収録後は北新地で接待し、ポケットマネーで付き人に200万円を渡し、同番組の最終回ゲストに再びたけしを招くという最大限の待遇をしたのだ。

「ビートたけしに対する批判も、的を射ているからこそ関西人は拍手喝采を送ってきたはずである。ところが批判していた東京の大物タレントが自分の番組に来てくれただけで、手のひらを返したかのようにありがたがっている。その変わり身の早さは、御都合主義、権威主義に見えなくはない」

 気に入らないものに対しては容赦ない毒舌を浴びせかけたたかじんだが、“権力者”に直接会ってしまうと、態度を豹変させ、まるで揉み手をするように摩り寄ってしまう。そんなところがあったのだ。もしかしたら、政治家への擦り寄りも、単純にそういう性格が出たというだけなのかもしれない。

 しかしいずれにしても、無頼で豪快、毒舌と反骨というイメージとは全く別の側面をたかじんが持っていたことは間違いない。著者は多くの関係者を取材してこんなことを思ったという。

「『ややこしい人やなあ』という印象である。繊細かつ純粋で、思ったことをすぐに行動に移す一本気な人物である一方、内気で見栄っ張りで打たれ弱く、だからこそ大きく見せようとするところがあった」

 そして、そんな人物が安倍晋三の再登板を後押しし、橋下徹という政治家を生み出した。ある意味では、彼の存在が日本の政治の方向性を大きく変えたといってもいいかもしれない。それがこの国にとって幸福だったのか不幸だったのか。できることならば、天国のやしきたかじんに、いつか改めて聞いてみたいところではあるが……。
(一場 等)

【考察!人間・やしきたかじん→(第1弾)(第2弾)】

最終更新:2015.01.19 05:35

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

ゆめいらんかね やしきたかじん伝

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

たかじんのもうひとつの謎!反骨の芸人がなぜ安倍首相に擦り寄ったのかのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。やしきたかじんビートたけし一場 等安倍晋三の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍前首相はやはり仮病だった!読売のインタビューでケロッと「もう大丈夫」
2 菅首相が山口敬之氏への資金援助を親密企業「ぐるなび」会長に依頼か
3 菅首相の叫ぶ「規制緩和」は30年前の流行語
4 東京五輪招致をめぐるICC買収に新証拠! 菅首相も賄賂に関与か
5 ジャパンライフの広告塔に田崎とNHK島田も
6 山口敬之氏が詩織さんに卑劣すぎる反論
7 山口達也の事件をNHKが隠蔽していた
8 釜山総領事更迭の裏に官僚監視秘密警察
9 菅義偉首相が使った官房機密費の“ヤミ金”は合計78億円!
10 大坂なおみを賞賛し黒人差別に抗議した自民党議員がツイートを削除し謝罪
11 デジタル担当相・平井卓也は電通と組んでネット情報操作を始めた張本人
12 安倍首相が昨晩、フルコースを完食しワイン、ゴルフの約束まで! 
13 河野太郎のパフォーマンスがひどい! 行政改革目安箱を私物化
14 ジャパンライフ山口会長逮捕 焦点は消費者庁の立入検査中止問題だ
15 詩織さん全面勝訴でも山口敬之氏と安倍首相の関係に触れないテレビ
16 安倍政権が消費者庁のジャパンライフ立入検査ツブシ、内部文書が
17 安倍「股関節炎は仮病」証明のゴルフ
18 葵つかさが「松潤とは終わった」と
19 俳優・伊勢谷友介が自殺した近畿財務局職員の手記を読み危機感表明
20 詩織さんに寄せられた山口敬之氏と安倍官邸の特別な関係の新情報!
1 安倍前首相はやはり仮病だった!読売のインタビューでケロッと「もう大丈夫」
2 菅政権で「公費不倫」の和泉洋人首相補佐官が“再任、官邸官僚のトップに
3 菅義偉首相が使った官房機密費の“ヤミ金”は合計78億円!
4 菅官房長官がテレビでもポンコツ露呈!『報ステ』では徳永有美に陰険クレーム
5 安倍首相は本当に病気だったのか? 辞任表明以降一度も病院に行かず
6 デジタル担当相・平井卓也は電通と組んでネット情報操作を始めた張本人
7 ジャパンライフ山口会長逮捕 焦点は消費者庁の立入検査中止問題だ
8 安倍首相が昨晩、フルコースを完食しワイン、ゴルフの約束まで! 
9 東京五輪招致をめぐるICC買収に新証拠! 菅首相も賄賂に関与か
10 菅首相が山口敬之氏への資金援助を親密企業「ぐるなび」会長に依頼か
11 菅首相の叫ぶ「規制緩和」は30年前の流行語
12 菅政権の官房長官に決定 加藤勝信厚労相がコロナ対応で見せた無能
13 菅義偉“総理”誕生で権力のために不正を働く「忖度官僚」だらけに
14 総裁選で自民党がまた新聞社に圧力文書!
15 大坂なおみを賞賛し黒人差別に抗議した自民党議員がツイートを削除し謝罪
16 大坂なおみの黒人差別抗議マスクに冷ややかなマスコミとスポンサー
17 菅内閣が「第三次安倍政権」化! 6月の時点で密約説
18 河野太郎のパフォーマンスがひどい! 行政改革目安箱を私物化
19 三浦瑠麗が特別講師「N高政治部」で麻生太郎が民主主義否定の暴言
20 『バイキング』坂上忍パワハラ報道は政権批判潰しだった!

カテゴリ別ランキング

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄