読売の朝日誤報追及は拡販のため?販売店に朝日の読者を奪えと攻撃指令

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読売新聞が朝日新聞のネガティブキャンペーンで購読者を奪い取る?(画像左・『読売新聞』14年8月30日東京朝刊/画像右・同9月5日東京朝刊)


「A紙作戦→千載一遇のチャンス!」

 さる8月20日、読売新聞の新聞販売店各店に、同社支社の販売部からこんな暗号のような見出しの内部文書が送られてきたという。その見出しの後には、こんな文章が書かれていた。

「地図にわかる限りのA 紙読者落とし込み実施。読者センターには連日、A 社への批判やA紙から読売への購読切り替え申込が寄せられています。A社、A販売店が一番苦しい時に徹底的に攻撃を仕掛ける!」

 ここまで読めば、なんのことかおわかりだろう。「A紙」とはもちろん、ライバル朝日新聞のことだ。この2週間ほど前、朝日新聞は従軍慰安婦問題の吉田清治氏の証言を虚偽だったと認めて、各方面から厳しい批判を浴びた。国会でも追及の動きが出て、一部では不買運動まで起きはじめた。そこで、読売新聞のある支社の販売部がこの機に乗じて地域の朝日新聞購読者を勧誘し、読者を奪い取れと販売店に通達を出したのである。しかも、その中身は同じ報道機関の誤報を「千載一遇のチャンス!」と大喜びして、「(朝日が)一番苦しい時に徹底的に攻撃を仕掛ける!」と煽る、なんとも露骨なものだった。

 もちろん、これは一支社が先走ってやったことではない。文言はちがっても全国の販売店に同じような指示が出されていた。さらに、8月末にはそのためのツールも用意された。「慰安婦報道検証 読売はどう伝えたか」という、朝日の誤報を検証する記事や朝日を非難する読者の声、識者のコメントをダイジェストしたリーフレットが会社の費用で作成され、各販売店に配布された。つまり、これを朝日の購読者に見せ、こんなひどい捏造をする新聞は止めて、うちの新聞に変えなさい、というネガティブキャンペーンを社をあげて展開しているのである。

「ちょうどこの頃、臨時国会で“吉田証言”が取り上げられ、朝日の木村伊量社長が参考人招致される見込みが出てきたため、上層部はネガティブキャンペーンを決断したみたいだね。販売部門で朝日の購読者を奪い取る拡販作戦を展開し、紙面では朝日を徹底追及するネガティブキャンペーンをはる。両者は完全に連動している。リーフレットを巻き始めた28日から紙面では『検証 朝日「慰安婦報道」』という連載を始めたけど、これも報道局の判断でなく経営判断ですよ。読売ではこういう姿勢でやっていますよということを新規読者に見せるのが目的でしょう」(読売新聞関係者)

 さらに、読売は朝日潰しのために、もうひとつの「誤報」を追及し始めた。8月30日、一面で、福島第一原発の吉田昌郎所長の「吉田調書」の内容が、事故当時、職員が「待機命令に違反して退避」したとする朝日の報道とはちがっていたと大々的に報道したのだ。

「朝日の記事にフレームアップがあるのは、吉田所長の本を書いた門田隆将や産經新聞がすでに指摘していた。ところが、上層部からうちでも大々的に追及するよう指令が下ったんです。ようするに従軍慰安婦問題に続いて第二弾で畳みかけ、さらに読者離れを加速させようと言う作戦です。民主党と朝日を叩きたい官邸とも利害が合致して、ああいう記事になったということでしょう」(同)

 実際、従軍慰安婦の件とはちがって、吉田調書に関する朝日の報道はフレームアップではあるが、誤報とはいいがたいものだった。しかも、産経の後追い。少なくとも一面を使って大々的に報道するような話題ではなく、「なんで今さら?」と首をかしげた業界関係者も少なくなかった。むしろ、吉田調書で、誤報が明らかになったのは読売の「菅直人元首相の海水注入」報道のほうだった。

 にもかかわらず、無理矢理こんな大キャンペーンを展開すあのはやはり、商売上、朝日をどうしても追い落としたいという意志によるものだったらしい。

「とにかく、今の読売は朝日潰しのためには手段を選ばないという感じだね。吉田調書の誤報についても拡販ツールにする計画を進めているし、朝日叩きをして、朝日から広告拒否された『週刊文春』などの週刊誌に同じ料金で大きいスペースを提供したという話もある。さらに近々もうひとつ朝日スキャンダルを用意しているという噂も流れているね」(別の新聞社幹部)

 読売新聞の販売部数は、昨年11月時点で1000万7440部だったのに対し、今年6月には927万9755部に落ち込んだ(日本ABC協会調べ)。前出の読売関係者によると、読売にとって“1000万部回復”は至上命題で、部数減の穴埋めとして朝日の購読シェアを奪う戦略が練られたようだ。

「日本人の誇りを傷つけた」だの「報道機関の信頼を失わせた」だのといった御託が並べられた朝日の誤報問題も、一皮向けば、“オワコン”新聞の縮小するパイの分捕り合戦にすぎなかったということなのだろうか。しかし、その結果、国民が原発事故の本質から目をそらされてしまったとしたら、あまりに救いのない話である。
 (田部祥太)

最終更新:2015.01.19 06:09

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