『半沢直樹』今度の敵は民主党! 小沢一郎、前原誠司、蓮舫に倍返し?

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『銀翼のイカロス』(池井戸潤/ダイヤモンド社)

 大人気を博したドラマ『半沢直樹』(TBS)はいつまでたっても続編が始まらず、最近はファンもあきらめぎみだが、小説の半沢直樹シリーズ(池井戸潤/ダイヤモンド社)のほうは続編が次々と出版され、絶好調だ。シリーズ第3作『ロスジェネの逆襲』は映像化されないまま100万部を突破。さらに、先日は新作の『銀翼のイカロス』が発売され、即、ベストセラーになった。

 その新作『銀翼のイカロス』だが、今回、半沢が腕をふるうのは経営破綻寸前の状況におちいった大手航空会社・帝国航空の再建。准メインバンクである東京中央銀行では審査部が再建を担当していたが、業績悪化に歯止めがかからない。そして、頭取直々の指名で、半沢直樹が担当を命じられた──こんなシーンから、物語ははじまる。

 実は今回の半沢直樹シリーズは、かなりの部分が実話に基づいている。帝国航空のモデルは、数年前に経営破綻した日本航空=JALだ。JALといえば、親方日の丸の官僚的な経営体質、経営陣のお家騒動と粉飾決算、会社側組合と自主組合5組合の激しい対立、さらには長年の自民党政権との癒着がもたらした不採算路線進出やアメリカからの機体大量購入など、さまざまな問題を抱えており、“伏魔殿”とも呼ばれていたナショナルキャリアフラッグ。経営が悪化してからもこうした社内の構造が複雑にからんで再建が進まず、とうとう2010年に会社更生法の申請をするにいたった。

 当然、今回は半沢がその“伏魔殿”に切り込み、JAL経営陣や労働組合幹部らに「倍返しだ!」と啖呵を切るんだろうな……と思いきや、そういったシーンはほとんどない。JAL、帝国航空は序盤で半沢らの再建案をのみ、あっさりと協力関係になる。

 メインはその後だ。半沢たちが再建を進めようというところで、憲民党から進政党への政権交代が起き、政権を握った進政党は前政権下で半沢らがまとめた再建案を白紙に戻してしまうのだ。そして、再生タスクフォースという新しい諮問機関のもとで再建案の肝として打ち出されたのが、銀行団への債権放棄。東京中央銀行も500億円もの債権放棄を求められるが、半沢たちは債権放棄せずとも自主再建は可能だとして、進政党に対して徹底抗戦を挑む。

 この政権交代による混乱も実話に近い。進政党というのはもちろん民主党のことで、民主党は09年に政権交代を果たすや、前原誠司国土交通大臣が自民党政権下でJAL再建策を検討していた有識者会議を廃止。小説と全く同じ名称の諮問機関JAL再生タスクフォースを立ち上げ、銀行に再建放棄を迫っている。

 つまり、今回の半沢の敵は、政権交代でJALの再建策の主導権を握った民主党と前原国交相、そしてタスクフォースなのだ。

 もっとも、小説に出てくる国交相は白井亜希子という女性議員で、「華やかなテレビ業界でキャリアを積んで政界へ進出、転がり込んできた政権交代劇の流れに乗ってとんとん拍子に大臣の椅子を手に入れてサクセス・ストーリーの主人公」という経歴は、むしろ同じ民主党の蓮舫に近い。あるいは、甲高い声で常にけんか腰で要求をつきつけてくる、などの描写を読むと、前原国交相の下で副大臣をつとめていた辻元清美のキャラクターをミックスさせているような印象も受ける。だが、大臣就任会見の描写などをみると、やはりメインのモデルは前原といっていいだろう。

 いずれにしても、この『銀翼のイカロス』の白井国交相=前原と進政党=民主党への批判は痛烈で、半沢にこんな心情や台詞を語らせている。

「白井の目的は、帝国航空の再建というより、前政権の完全否定なのではないか。それによって進政党の優位性、憲民党との違いを国民にアピールする。ただそれだけのために、有識者会議と修正再建プランを葬り去ろうとしたのではないか。だとすれば、帝国航空を政治の道具に使うに等しい行為だ」
「この大臣の目には、再建プランの修正を受け入れた帝国航空の苦渋も、なんとか同社を再生させようと必至で努力してきた銀行担当者たちの熱意も、なにも映ってはいない。あるのはただ、前政権への敵愾心と、自らの功名心だけだ」
「帝国航空のためといいつつ、連中の最終目的は、自らを利することだけだからな。唾棄すべき政治屋どもだ」

 半沢の親友・渡真利や部下たちの台詞も辛辣だ。

「政権交代といえば、聞こえはいいが、素人たちがやりたい放題やってるだけにしか見えねえぞ」
「なに勘違いしたこと言ってんだよ。気でも狂ったのか」

 しかも、『銀翼のイカロス』では、白井大臣の後ろ盾として、進政党の創設者である箕部啓治なる超大物政治家が登場するのだが、その箕部は重大な金銭スキャンダルを抱えているという設定になっている。こちらは明らかに小沢一郎がモデルだろう。実際の小沢は前原の後ろ盾ではなかったが、小説で箕部はこう描写されている。

「そもそも、箕部は人というものを信用しない。箕部にとって、人とは裏切るものであり、そして自分もまた人を裏切ってきた。かつて仲間だった憲民党と袂を分かち、派閥の議員たちとともに進政党を旗揚げしたのも、そうした裏切りのひとつだ」

 白井と白井の諮問機関であるタスクフォース、そしてこの箕部が悪辣なやり口で東京中央銀行に債権放棄を迫ってくる。それに対して、半沢は敢然と立ち向かい、いつものあの台詞を発するのだ。

「たとえ相手が政治家だろうと、関係ない。この際、きっちり片をつけてやる。――やられたら、倍返しだ」

 その意味では今回は銀行を舞台にしたビジネスドラマというより、強大な政治権力を相手にした政治活劇。いつも以上に胸のすくことうけあいだろう。

 だが、経済ジャーナリストの間ではこの『銀翼のイカロス』におけるJAL再建の描き方はあまりに一方的すぎるという指摘もある。

 実は現実のJAL再建でも、多額の債権放棄を迫るタスクフォースの再建案を銀行団が拒否。タスクフォースは解散に追い込まれている。そして、JAL再建は企業再生支援機構に引き継がれ、稲盛和夫京セラ名誉会長がCEOに就任。それからJALはV字回復を果たして12年に再上場を果たした。一見、「債権放棄せずとも再建できる」という半沢たちの主張の正しさが証明されたかにみえるが、実際はタスクフォースの方針が必ずしも間違っていたわけでなく、むしろ銀行団が再建の足をひっぱっていたという指摘があるのだ。

 そのあたりの話はぜひ、別稿で紹介したい。
(田部祥太)

最終更新:2014.09.16 07:56

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