職場で急増中!「働かない」「使えない」オジサン問題をどうする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷
ojisan_01_140722.jpg
『働かないオジサンの給料はなぜ高いのか 人事評価の真実』 (新潮社)

 職場にこんな50代はいないだろうか? 営業部に在籍しているにもかかわらず、顧客を前にしても、ただうなずくだけの無気力な50代社員。上司からの信頼がまったくないにもかかわらず、部長の意向ばかりをうかがっている50代社員、過労気味の若手社員の相談にも乗らず定時になると帰ってしまう50代社員……。つまり、「働かない」「使えない」オジサンだ。会社勤めをする20~50代は、「働かない」「使えない」オジサンに対する不満で口を揃える。

 しかも、こうした「オジサン」の給料は会社の貢献度が少ないにもかかわらず、身を粉にして働く若手社員と比べるとなぜか高いという問題が若い世代からの風当たりを強くする。業種も規模も異なる多くの企業から出てくる「働かない」オジサン批判。
 
「人柄や個人的な問題だけで働かなくなっているのであれば、これほど共通した話題にはならないだろう。そこにはそうさせるような会社の仕組みが横たわっていると考えたほうがいい」というのは、『働かないオジサンの給料はなぜ高いのか 人事評価の真実』 (楠木新/新潮社)だ。

『人事部は見ている。』(日本経済新聞出版社)などの著書のある人事畑を歩いてきた現役サラリーマンである著者によると、働かないオジサンという問題は、新卒一括採用と終身雇用制という日本型雇用システムの生み出す弊害だという。

「新卒一括採用された社員の多くが、現場ミドルトップの階層を上位に向けて駆け上がろうとするので、結果としてポストが足りなくなる」「役職が上がるにつれてポストは減少し、元気のある後輩もいるので、どこかで権限のある役職から離れざるをえません。その時にオジサンは、頑張ってもこれ以上は給料が増えないし、出世もしないことに気付きます。同時にそれほど働かなくても給与はそんなに下がらないこと」に気がつくのだ。このため、本人のモティベーションも低下する。

「多くの日本企業では能力やスキルにそれほど焦点が当たっていないので、社員に対する評価もきめ細かく行われているとは言いがたい。そのため個々の社員に対して低評価を理由に給与を引き下げたり、退職勧奨を個別に行うことはやりにくい」(同書より)

 また、評価ができていないにもかかわらず極端なリストラを行なわざるをえなくなると、「追い出し部屋」でマスコミをにぎわせるなど、問題をこじらせる企業も出てくる。

 実際の貢献以上の給与が払われている理由も、かつては「社員が若い時には貢献度よりも低い賃金を払い、その差異の部分を中高年になって以降に支払っている」などと年功序列型賃金制度で理由付けられてきたが、これでは、将来の保障がほとんどなく、現時点での実力評価だけで給与が決まる成果主義的人事に直面している若い世代を説得できないのだ。

 この本の特色は、著者が若い世代ではなく、1954(昭和29)年生まれと今年60歳のズバリ“オジサン”世代だということだ。高給取りの働かないオジサンたちを「さっさと辞めろ」と糾弾したり、「だから日本企業は遅れている」式の批判は行なわない。著者は「中高年社員の場合には、人事評価が果たすことのできるマネジメント効果は、若手社員に比べて、それほど期待できない」と悲観的ながらも、風当たりの厳しい同年代の「働かない」オジサンたちの声を紹介する。

「働かない」オジサンたち自身も、「会社から期待されていないことは、うんざりするほど感じている」「仕事にも飽きたし、会社の中で面白いことは何もなくなった」「正直な話、俺たちのモティベーションを上げるなんて、もう無理だ」とダメ発言連発だ。

 やがて、オジサンたちにも希望が持てそうな1つのアイデアが出る。

「1年間の休暇がもらえれば、会社に戻って頑張れるかもしれない」「もちろん長期休暇の間は無給でいい。ただ1年後、職場に戻れるという保証さえあれば、何かに挑戦したいという」(同書より)。この“道草休暇”というべきアイデアに「今の自分を切り替えられることができるかもしれない」「何かチャレンジができそうだ」と、「働かない」オジサンたちも期待感が大きく膨らみはじめたという。

 このアイデアをもとに著者は、大学教員のサバティカル休暇のような7年程度に1度の長期休暇制度のほか、「副業禁止」よりも「専業禁止」を謳うなど、「働かない」オジサンたちのモチベーションをアップさせる方法を提案する。

「働かない」オジサンたちの「1年後、職場に戻れるという保証さえあれば」などということ自体、若い世代から見れば、会社組織のぬるま湯にどっぷり浸かっている発想であることはいなめないが、たしかにオジサンたちが、「挑戦」や「チャレンジ」といった言葉を前向きに語るあたり、現在の会社組織が「挑戦」や「チャレンジできる」環境を用意できていないという事実を暗に物語っている。

 つまり、「働かない」オジサン問題は会社が、ひいては日本経済全体が、オジサンたちを活用できていないという問題なのではないか。「使えない」ではなく「使いこなせていない」日本経済の問題なのかもしれない。
(小石川シンイチ)

最終更新:2014.07.22 07:04

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

この記事に関する本・雑誌

働かないオジサンの給料はなぜ高いのか: 人事評価の真実 (新潮新書)

新着 芸能・エンタメ スキャンダル ビジネス 社会 カルチャー くらし

職場で急増中!「働かない」「使えない」オジサン問題をどうするのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。中年新卒格差の記事ならリテラへ。

人気記事ランキング

総合
ツイート数
1 安倍首相「桜を見る会」中止で私物化問題の幕引き図るも新証拠続々
2 「桜を見る会」で田崎史郎と産経が失笑のスリカエ詐術で安倍擁護
3 「桜を見る会」ケータリングは安倍首相、昭恵夫人のお友達の会社
4 即位パレードで安倍首相が“天皇きどり”で窓を開けお手振り!
5 葵つかさが「松潤とは終わった」と
6 警視庁捜査、ジャパンライフと安倍政権
7 即位パレードで「雅子さまの足跡」を振り返るマスコミが触れなかった深刻な事件
8 即位パレードで天皇夫妻が通った自民党本部に巨大垂れ幕!
9 即位礼に天皇の「安倍首相への抵抗」を示す招待客が
10 安倍首相「桜を見る会」私物化に会計検査院元職員も「招待範囲を逸脱」
11 グッディ高橋克実が北朝鮮危機で本音
12 美智子皇后が誕生日談話で安倍にカウンター
13 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(前編)
14 皇室記者が明かす雅子妃の真実
15 『報ステ』小川彩佳降板は政権批判が原因か
16 安倍首相「桜を見る会」の税金を使った不正が国会で明らかに!
17 安倍政権御用ジャーナリスト大賞(後編)
18 マンガ『スシローと不愉快な仲間たち』第7話
19 嵐メンバーの意外な恋愛事情
20 恵俊彰が田崎史郎を「政権の代弁者」と
1 久米宏が「テレビが反韓国キャンペーンをやってる」と真っ向批判
2 安倍政権・厚労政務官が外国人在留申請で口利き「100人で200万円」
3 玉川徹がGSOMIA破棄で加熱するテレビの嫌韓煽動を批判
4 明石家さんまが吉本上層部と安倍首相の癒着に痛烈皮肉!
5 『ゴゴスマ』で今度は東国原英夫がヘイト丸出し、金慶珠を攻撃!
6 『報ステ』の“安倍忖度”チーフPがアナやスタッフへの“セクハラ”で更迭
7 『ゴゴスマ』で「日本男子も韓国女性が来たら暴行しなけりゃいかん」
8 文在寅側近の不正に大はしゃぎの一方、安倍政権が厚労政務官の口利きに無視
9 埼玉知事選で警察が柴山文科相への抗議を排除!柴山も表現の自由否定
10 安倍首相がトランプからトウモロコシ爆買い
11 菅官房長官「トウモロコシ大量購入は害虫被害対策」は嘘
12 GSOMIA破棄は安倍のせい 慰安婦合意から始まった韓国ヘイト政策
13 安倍が後に先送り財政検証の酷い中身
14 GSOMIA破棄で日本マスコミの「困るのは韓国だけ」の嘘
15 松本人志や吉本上層部批判の友近、近藤春菜にバッシング、報復か
16 『週刊ポスト』の下劣ヘイト記事は「小学館幹部の方針」の内部情報
17 GSOMIA破棄!八代・有本ら安倍応援団は「嫌なら来るな」
18 『モーニングショー』で「暑さに耐えるのが教育」元高校野球監督は右派論客
19 古市憲寿の芥川賞候補作「参考文献問題」に選考委員が猛批判
20 『関東大震災「朝鮮人虐殺」はなかった!』のデマとトリックを暴く

カテゴリ別ランキング


人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄