ロシアの侵略を「真珠湾攻撃」にたとえたゼレンスキー大統領を非難する日本のネトウヨの言い分がプーチンとそっくり!

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米連邦議会で演説したゼレンスキー大統領(ウクライナ政府公式サイトより)


 まったく呆れ果てるしかない。日本のネトウヨ、歴史修正主義者たちがここにきて、ロシアやプーチンではなく、ウクライナとゼレンスキー大統領に対して、難癖と悪罵を投げつけ始めたのだ。

 原因は、16日、ゼレンスキー大統領が行なったアメリカ連邦議会での演説だ。

 ゼレンスキー大統領はウクライナ上空での飛行禁止区域の設定を訴える際、ウクライナの現在の惨状を、1941年の旧日本軍による真珠湾攻撃、2001年のアメリカ同時多発テロになぞらえ、「真珠湾を思い起こしてほしい。1941年12月7日、あのおぞましい朝のことを。あなた方の国の空が、攻撃してくる戦闘機で真っ黒になったときのことを」「9月11日を思い起こしてほしい。2001年のあのおぞましい日のことを。悪があなた方の都市を、独立国の領土を、戦場にしようとしたときのことを」と語り、「私たちの国は、いままさに、この瞬間、同じことを毎日毎晩、何週間も経験している」と訴えた。

 これに対し、ネトウヨが「真珠湾攻撃とロシアの侵略を同列に語るなんて許せない」と怒り狂い始めたのだ。

〈こいつ何言ってるんだろう…。 真珠湾を今回のロシアの侵略と同義で扱うとか控えめに言って頭おかしい。 ウクライナに対する気持ちが一気に冷めた。〉
〈真珠湾攻撃を思い出せ?お前らを応援するのやめたわ、バカバカしい〉
〈正直、ウクライナには冷めた。〉
〈ゼレンスキー、日本に喧嘩を売っているのだろうか?〉

 演説内容が報じられた直後から、ツイッター上ではこんなウクライナ、ゼレンスキー攻撃であふれ、16日深夜、東北で大地震が起きても、「真珠湾攻撃」「パールハーバー」がトレンドワードに留まり続けた。

 さらに、在日ウクライナ大使館のツイッターアカウントに直接、こんな罵倒リプを飛ばす輩も現れた。

〈真珠湾攻撃を引き合いに出した時点でウクライナを支援する気持ちは毛頭無くなりました〉
〈真珠湾攻撃を例えにしたから支援は無理です。 旧ソ連同士潰し合いよろしくやってな!〉
〈まずは真珠湾攻撃発言の謝罪と撤回を。ヘイトスピーチをやっておいて支援をしろとは、ウクライナはヤクザ国家ですか?〉
〈お宅の大統領が米議会で真珠湾攻撃をネタにして演説したことに日本人は憤りを感じてますよ?〉
〈大統領が真珠湾攻撃云々という国に対して援助する必要はあるのだろうか。日本人はお人好しばかりだね。日ソ中立条約を破って北海道に侵攻した旧ソ連。ウクライナって旧ソ連だよね。〉

 そして、ゼレンスキー大統領が日本の国会で演説をするという計画についても反対意見が巻き起こっている。

〈ゼレンスキー何故いまそれを言う? 日本人舐めてんの? 日本の国会で何言って煽るの? この大統領アホかも?〉
〈ロシアの攻撃を日本の真珠湾攻撃に例えるようなやつを国会で演説なんてさせてはいけない。〉
〈テロと真珠湾攻撃を同等扱い。こんな奴国会で演説させんの、ど〜すんの笑〉

高須院長も…ネトウヨのゼレンスキー批判と真珠湾攻撃肯定論のトンデモぶり

 こうした発言をしているのは、一般ネトウヨだけではない。あの高須クリニック院長の高須克弥氏も〈ゼレンスキー大統領が嫌いになった。アメリカ人のウケ狙いで真珠湾攻撃を引き合いに出して日本国民に恥をかかせてる(怒)〉などと、ネトウヨっぷり全開でセレンスキーを批判していた。

 改めて指摘しておくが、ウクライナではいま、ロシアの爆撃や砲撃によって子どもを含む多くの一般市民が殺され、プーチンが核攻撃に及ぶ危険性さえ指摘されているのだ。にもかかわらず、連中にとっては、日本の過去の侵略戦争を正当化することのほうがはるかに重要なのだ。

 このことだけでも、日本の右派、ネトウヨがいかに戦争をリアルにとらえることができていないか、無責任に勇ましい言葉を発しているだけの幼稚な“なんちゃってナショナリスト”にすぎないかが、よくわかるだろう。

 しかし、もっと呆れ果てるのはやはり、その歴史の捻じ曲げ方だ。ゼレンスキー大統領を攻撃していた連中は総じて、以下のような理屈で、真珠湾攻撃を擁護、正当化していたのである。

〈真珠湾攻撃では民間施設攻撃してないからロシアの攻撃とは全くの別物だし、先祖侮辱されたみたいで不愉快だわ〉
〈日本にのみ原因を求めるのは不適当だし、真珠湾攻撃は書くまでも軍事施設への攻撃。いきなり首都を攻撃したロシアの侵略のものと同じにするのはおかしい。〉
〈はあ?真珠湾攻撃はアメリカによって仕掛けられやむなく行った事であり。民間を攻撃したものではない。〉
〈パールハーバー、パールハーバー五月蠅いわ! 世界中の戦争は「何月何日から戦争しましょう」とでも打ち合わせるとでも言うんか!? 軍事施設だけを攻撃した真珠湾攻撃は真っ当だと思うぞ!〉

 どこまで自分たちに都合のいい解釈をしているのか。真珠湾攻撃は宣戦布告すらしないで奇襲攻撃をかけるという、明らかに国際法を無視した戦争犯罪だった。ネトウヨ連中は軍事施設を攻撃しただけで民間人を無差別攻撃したわけじゃないというが、真珠湾攻撃でも民間人犠牲者は多数出ている。

 しかも、日本は今回のロシアと同様、民間人への無差別攻撃も行なっている。たとえば、真珠湾攻撃より3年前の1938年から数年の間には、重慶へ200回以上も無差別爆撃も行なった。この重慶への無差別爆撃は死傷者が数万人にのぼり、ナチス・ドイツによるスペインのゲルニカ爆撃(1937年)とならんで、人類史上初の無差別都市爆撃として歴史に刻まれているものだ。

 それだけではない。プーチン・ロシアのやっているウクライナ侵略と旧日本軍がやったアジア諸国への侵略との類似性は、この間、様々な方面で指摘されている。

たとえば、ロシアはウクライナ東部のドネツク州とルガンスク州を勝手に独立承認し、ウクライナに傀儡政権をつくろうとしているが、これは日本が傀儡政権として満州国政府をつくったのと同じ手口だ。

 プーチンはロシア系住民の保護を名目にウクライナに侵攻していったが、旧日本軍も、盧溝橋事件以降、在中国の日本人保護を大義名分に軍隊を増派し戦線拡大させていった。また、ロシアはいま、「偽旗作戦」を展開しているといわれているが、満州事変の発端となった関東軍による自作自演の鉄道爆破事件「柳条湖事件」こそ、この偽旗作戦の代表例といわれるものだ。

 そして、プーチンの侵略の根っこにある大ロシア主義や新ユーラシア主義と、大日本帝国が掲げていた八紘一宇、大東亜共栄圏──。共通性や類似点は尽きない。

真珠湾攻撃を「経済封鎖されたから」と正当化するネトウヨの主張はロシアの侵略肯定の論理にそっくり

 そういう意味では、民主主義や基本的人権、法の支配といった現在の国際秩序の原則を踏みにじったロシアのウクライナ侵略を論じる際に、同じような無法な侵略国家だった大日本帝国やナチスドイツの行為が持ち出されるのは、当たり前の話なのだ。

 むしろ、日本の右派は、いまのロシアがやっていることを見て、自分たちの「先の戦争は侵略ではない」「正しい戦争だった」という主張がいかにナンセンスであるかを自覚すべきなのである。

 ところが、日本のネトウヨや歴史修正主義者たちは、日本だけがあたかも一切民間人を狙ったり傷つけていないように歴史を捻じ曲げて、ゼレンスキー大統領を攻撃しているのだから、開いた口が塞がらない。

 いや、それどころか、例の「日本は戦争に追い込まれた被害者」論まで持ち出すネトウヨたちも多数いた。
 
〈真珠湾攻撃したのは確かだけど、アメリカに石油とかの輸入止められて黙ってられる日本でもなかったでしょう 引き合いに出すのはおかしいな〉
〈はぁ?なぜか... ウクライナから流れ弾が飛んできたが... 真珠湾攻撃と今回のロシアによる ウクライナ侵攻は全く違う。 日本は当時、アメリカに石油と鉄を止められ追い込まれたから...ロシアの事情とは全く違います。〉
〈真珠湾攻撃なった経緯は日本への石油だの経済封鎖が引金だけどな〉
〈石油を止められ、国民が飢えるのを防ぐための自衛戦争。 相手の作戦にまんまと載せられた。(真珠湾攻撃情報はつかんでいた) 当時の上層部は、世界で初めて、人種差別撤廃と言う考えをもって、植民地諸国に対しても、占領搾取されてきた近隣アジア諸国に対しても、解放する、という信念があった。〉

 言っておくが、日本が経済封鎖をされたのは、中国などアジア諸国を侵略したからだ。だいたい経済封鎖、経済制裁が真珠湾攻撃を正当化する理由になると言うなら、いま世界各国から経済制裁を受けているロシアが、アメリカやヨーロッパ各国、日本に報復攻撃してくることも正当だということになってしまう。

 それを「ABCD包囲網のせい」とか「経済封鎖されたから」とか「アジア諸国を解放するため」とか言うのは、それこそ、「NATOが拡大しているから」「ロシアの安全保障のため」「ウクライナを解放するため」とウクライナ侵略を正当化するプーチンの論理とまったく同じではないか。

 しかし、考えてみればそれも当然なのかもしれない。もともと日本の極右・ネトウヨの間では、その侵略・強権主義への親和性に加え、連中が崇拝する安倍晋三・元首相の影響で、プーチン大統領の人気が高かった。ウクライナ侵攻の動きが起きても、右派からはほとんどプーチン批判は聞かれなかった。

 プーチンが実際に侵略を強行し、世界中でロシア批判とウクライナ支援の声が上がったために、極右・ネトウヨ連中も遅ればせながら「ウクライナ頑張れ」などと叫び始めたが、本音は自分たちの幼稚な愛国ナショナリズムや帝国主義への思慕を仮託しているだけ。あるいは、ウクライナ危機に乗じて、政治的野望である日本の軍国主義化を進めたいだけ。

 そういう意味では、日本のネトウヨ・右派は以前もいまもかわらず、ウクライナ国民の側でなく、ウクライナ国民が抵抗し、闘っている相手である「プーチンの側」に立っているのだ。

 今回のゼレンスキー発言をめぐる異常な反応によって、そのことがはっきりしたといえるだろう。

最終更新:2022.03.18 03:16

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