安倍首相「サンゴ移した」の大嘘をメディアはなぜ追及しないのか! NHKは「移植できないのは沖縄のせい」と攻撃

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首相官邸ホームページより


 やはり、安倍首相は大嘘をついていたことが確定した。今月6日に放送されたNHKの『日曜討論』で安倍首相は辺野古の新基地建設工事について、「いま、土砂が投入されている映像がございましたが、土砂を投入していくにあたってですね、あそこのサンゴについては、移しております」と発言したが、これを否定する回答を防衛省がおこなったからだ。

 それは、昨日、国民民主党の玉木雄一郎代表がTwitter上に公開した「1月9日付け 資料要求について(回答)」と題された文書だ。このなかで、〈移植を行ったサンゴはどこからどこへ移植を行ったのか。当該サンゴは埋立区域②−1、埋立区域②及び大浦湾側の埋立区域のどこに生息していたのか〉という質問に対し、防衛省は以下のように回答しているのだ。

〈サンゴの移植については、1群体を米軍キャンプ・シュワブの南側海域(辺野古側)の埋立区域②から埋立区域外へ、8群体をキャンプ・シュワブの北側海域(大浦湾側)から埋立区域外へ移植しました。〉

 安倍首相が言った「あそこのサンゴ」というのは、あきらかに土砂が投入されている区域のことを指している。そして、いま土砂が投入されているのは「埋立区域②−1」だ。しかし、防衛省も、移植したサンゴ9群体はすべてそれ以外の場所に生息していたことを認めたのである(埋立区域②−1は、埋立区域②の一部でなく隣接する別区域)。

 しかも、安倍首相は『日曜討論』で「絶滅危惧種が砂浜に存在していたが、これは砂をさらってしっかりと別の浜に移していくという環境の負担を抑える努力もしながらおこなっている」とも発言したが、これも〈沖縄防衛局の事業で、貝類や甲殻類を手で採捕して移した事例はあるものの、「砂をさらって」別の浜に移す事業は実施していない〉と琉球新報(8日付)が指摘している。

 これらの事実によって、あきらかに安倍首相は嘘をついていたことになるが、安倍官邸は姑息にもなんとか言い逃れようと必死だ。菅義偉官房長官は10日の会見のなかで「辺野古側の埋め立て区域に生息していた移植対象のサンゴはすべて移植している」「(首相は)そういう趣旨の発言をされたのだろう」と発言。現在、土砂を投入している埋立区域②−1ではなく「辺野古側の埋立区域」に幅を広げて“嘘ではない”と言い張っているのである。

「謝ったら死ぬ病」を患っている安倍官邸は今後も「何も間違っていない!」と主張しつづける算段なのだろうが、問題は、このあからさまな安倍首相の嘘を、テレビが一切と言っていいほど取り上げていないことだ。

 いや、テレビだけじゃない。新聞も8日に琉球新報が一面でいち早くファクトチェックをおこない、沖縄タイムスも「首相発言に専門家疑義」と報道、東京新聞も9日に「「サンゴ移した」 首相発言に批判 実際は土砂投入と別区域 7万群体中9群体」と後を追ったが、全国紙である朝日と毎日が記事にしたのは10日になってのこと。しかも、朝日にいたっては、「首相「サンゴ移し土砂投入」、不正確と沖縄県反発」と見出しに掲げたシロモノだったのである。

 安倍首相が明白な嘘をついていることをメディアとしてはっきり指摘することもなく、「沖縄県反発」と謳って“両論併記”する……。これでは「腰抜け」と誹りを受けるのは当然だろう。

 だが、もっとも非難を浴びているのは、言うまでもなく安倍首相の大嘘を垂れ流したNHKだ。

安倍首相の嘘を垂れ流したNHKは「サンゴ移植できないのは沖縄のせい」と

 問題の6日放送『日曜討論』の安倍首相の出演部分は事前収録されたもので、首相動静から推測すると4日夜に収録されたと思われる。そもそも、討論番組にもかかわらず単独で出演させているのだから、聞き手の伊藤雅之・NHK解説副委員長らが疑問点などを即座に問いただすべきだが、「あそこのサンゴ」発言が出たときも何もつっこむことなくスルー。さらに、放送前に間違いがないか確認をし、テロップなりで指摘を出す方法も考えられるが、それもしなかった。ようするに、安倍首相の主張を無批判に電波に乗せただけ。たんなる“大本営発表”である。

 しかも、このNHKの姿勢に批判が集まると、11日の『ニュースウオッチ9』では「あそこのサンゴは移した」発言問題を取り上げたのだが、具体的に何が問題なのか、発言は事実かどうかの検証もせず菅官房長官の会見内容を流し、元の生息区域に言及しないまま「オキナワハマサンゴ9群体を沖縄県の許可を得て移植している」と説明。挙げ句、「残りの約7万4000群体の移植は県の許可が得られていないことなどから進んでいない」と報じたのだ。

 昨年8月の沖縄県による埋め立て承認の撤回では、その根拠のひとつとしてサンゴの環境保全対策に問題があると挙げている。その説明はすっ飛ばして政府の主張だけを取り上げて「許可を出ないためにサンゴが移植できない」と暗に沖縄県を非難するとは──。だいたい、サンゴを移植すればいいという話ではなく、現にサンゴの研究者である大久保奈弥・東京経済大学准教授は「サンゴは繊細な生き物。水流や光の強さなどがすみ慣れた環境と少し違うだけでも死んでしまう。移植はほとんどのケースでうまくいっていない」(東京新聞1月9日付)と、移植自体に問題があると指摘する声があがっているのだ。

 呆れてものも言えないとはこのことだが、沖縄の問題にかんする「本土」メディアのヘタレぶりは、いまにはじまった話ではない。

NHKだけじゃない、沖縄基地問題をめぐる本土メディアの無関心と政権忖度

 たとえば、2016年12月に沖縄県名護市の海上で米軍輸送機・MV22オスプレイが墜落した事故では、政府は「不時着」「着水」などと表現。対して、メディアはどうだったか。

 山田健太・専修大学教授の著書『沖縄報道──日本のジャーナリズムの現在』(ちくま新書)によると、「不時着」と報じたのが読売、産経、日本経済新聞(2017年9月11日付では「不時着、大破事故」と表記)。「不時着し大破」がNHK(NHK沖縄は「大破した事故」)、フジテレビ、日本テレビ、テレビ朝日(『報道ステーション』は「大破」)。「大破した事故」が朝日、毎日新聞、琉球放送(TBS系列)、TBS(『報道特集』は「墜落事故」、『NEWS23』は「大破」「墜落」)。「墜落事故」と報じたのは琉球新報、沖縄タイムス、沖縄テレビ(フジ系列)、琉球朝日放送(テレ朝系列 事故当初は「不時着事故」と報じたものもあり)だったという。

 当の米軍の準機関紙である「星条旗新聞」をはじめ、米・FOXニュース、英・BBC、ロイターなどの海外メディアは「Crash」(墜落)と報じたのに、日本の大手「本土」メディアのこの体たらくはなんだ。山田教授はこの問題を〈単に沖縄あるいは基地問題に対する無関心や無理解から、表記が分かれているのではなく、政府あるいは米軍に対する「思いやり」や、あるいは彼らの強い意思が働いている結果といえるだろう〉〈こうした報道こそが、まさに「忖度」ではないか、と言われる所以〉と指摘しているが、米軍基地を沖縄に押し付けている上、現実を無視した報道を展開するとは、あまりにも無責任かつ冷酷ではないか。

 安倍首相の嘘を公共放送のNHKが垂れ流し、事実に反すると沖縄が声をあげても大きな問題にならない現状──。これは今後も徹底して追及し、「本土」メディアが無視できない状況にもっていくしかないだろう。

最終更新:2019.01.12 09:19

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