百田尚樹が「朝日の読者も日本の敵」と暴言! 記者二人を殺傷した赤報隊の犯行声明にも通じるテロ扇動

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百田尚樹がヘイトスピーチを繰り返しているTwitter


 作家の百田尚樹といえば、いわずもがな日々Twitterでヘイトスピーチや「左翼」バッシングを繰り返しているネトウヨ文化人。そんな百田のツイートがまたしても物議を醸している。

〈朝日新聞は、慰安婦の日韓合意で、韓国の肩を持ったり、尖閣の中国潜水艦の記事を一面から外したり(他紙はすべて一面)、マジで潰れてもらわないといけない!!〉(1月13日)

 百田センセイの「朝日嫌い」は前々だが、それでも唖然としたのは、このツイートの2分後にこんなことまで言い出したからだ。

〈これは首を賭けてもいい。
もし、中国と日本が軍事衝突をすれば、朝日新聞は100パーセント、中国の肩を持つ。
朝日新聞は日本の敵だが、そんな売国新聞を支えている朝日の読者も日本の敵だ。〉

 まさか、朝日読者まで全部まとめて「日本の敵」扱いとは。戦慄するほかない。これに対し朝日新聞は15日、広報部のアカウントで反論するとともに強く抗議した。

〈「朝日の読者も日本の敵だ」と作家の百田尚樹さんが発信していますが、特定の新聞の読者を敵視するような差別的な発言に強く抗議します。私たちはこれからも建設的で多様な言論を尊重し、読者とともにつくる新聞をめざします。〉(朝日新聞社広報アカウントのツイート)

 朝日がTwitterで発言者を名指し、抗議を行うのは前例のないことだが、百田発言の悪質さを考えれば当然だろう。なぜならば、百田のツイートはもはや報道機関に対する論評とか悪口で済むレベルではなく、実質的に“言論に対するテロの煽動”と言えるからだ。

 なにも大げさに捉えているわけではない。たしかに、近年の日本社会では、書籍や雑誌でも嫌韓反中の企画とともに「反日」を惹句にしたシロモノが溢れており、国内のリベラル系メディアや市民を「日本のなかの反日」だとして攻撃するのが右派やネトウヨ界隈でブームになっている。

 本サイトでもつい先日、保守系雑誌「SAPIO」(小学館)や産経新聞による“「反日日本人」バッシング”の記事を取り上げ、戦前・戦中の日本がミリタリズムに突き進んでいくなか、学者らが「侮日的」「抗日的」との言いがかりとともに弾圧された歴史を紹介した(https://lite-ra.com/2018/01/post-3729.html)ばかりだ。

 しかし、こうした現状が当たり前になって、麻痺してしまうのは極めて危険だ。事実、今回の百田の発言は、かつて、あの「赤報隊事件」で殺人テロを正当化するために出された犯行声明と通じる部分がある。

百田のツイートの「赤報隊事件」の犯行声明文に共通する論理構造

 31年前の1987年、5月3日、散弾銃を持った目出し帽の男が朝日新聞阪神支局を襲撃し、記者ひとりを銃殺、ひとりに重傷を負わせる事件が発生した。

 犯人は「赤報隊」を名乗り、この阪神支局襲撃事件と前後して、朝日新聞の東京本社(同年1月)や名古屋本社社員寮(同年9月)、静岡支局(88年3月)などに対しても襲撃、爆破未遂事件を起こした。その後、一連の中曽根康弘・竹下登脅迫事件、リクルート元会長宅銃撃事件、愛知韓国人会館放火事件を含めて「赤報隊事件」と呼ばれ、現在、いずれも公訴時効を迎えて未解決事件となっている。

 周知の通り、赤報隊事件は、“言論に対する戦後最大のテロ事件”と言われる。その理由のひとつが、犯行グループからマスコミに送られた「声明文」にある。たとえば、朝日東京本社に銃弾が撃ち込まれた事件後の犯行声明文には、このような表現がなされていた。

〈われわれは日本国内外にうごめく反日分子を処刑するために結成された実行部隊である
一月二十四日の朝日新聞社への行動はその一歩である。
これまで反日世論を育成してきたマスコミは厳罰を加えなければならない。
特に 朝日は悪質である。
彼らを助ける者も同罪である。〉

 朝日への激しい敵意以上に〈彼らを助ける者も同罪〉という一文が異常である。ここからは朝日新聞を「反日」の象徴として攻撃することで大衆を震えさせ、言論の萎縮・封殺を狙う意図がうかがえる。そして、この声明文は〈全国の同志は われわれの後に続き 内外の反日分子を一掃せよ〉というテロ煽動の文言で結ばれており、前述の通り、その後犯人は阪神支局で殺人テロを実行、次々と犯行を重ねていった。

 どうだろう。もう一度言うが、百田は朝日に対して〈マジで潰れてもらわないといけない!!〉とぶった直後のツイートで、〈朝日新聞は日本の敵だが、そんな売国新聞を支えている朝日の読者も日本の敵だ〉と重ねた。見ての通り、その論理構造とアジテーションは、「赤報隊事件」のテロ煽動声明文と同じではないか。

 実際、百田は昨年も「朝日の社長を半殺しにしてやる」とツイートし、「日本国内の敵」に対するテロを煽りたてていた。

〈もし北朝鮮のミサイルで私の家族が死に、私が生き残れば、私はテロ組織を作って、日本国内の敵を潰していく〉
〈「国内の敵」というのは、売国議員と売国文化人である〉
〈昔、朝日新聞は、「北朝鮮からミサイルが日本に落ちても、一発だけなら誤射かもしれない」と書いた。信じられないかもしれないが、これは本当だ。 今回、もし日本に北朝鮮のミサイルが落ちた時、「誤射かもしれない」と書いたら、社長を半殺しにしてやるつもりだ〉(17年4月14日)

「半殺しにする」と宣う殺人テロ煽動にマスコミ各社は抗議せよ

 誰がどう見ても、暴力によって言論を封殺しようとする発想だろう。しかも、そもそも百田の言う「朝日新聞は『北朝鮮からミサイルが日本に落ちても、一発だけなら誤射かもしれない』と書いた」が事実ですらない。

 おそらく百田は、朝日新聞2002年4月20日付の記事「「武力攻撃事態」って何」のことを言いたいのだろうが、これは当時の小泉政権による有事関連3法案に関し、「武力攻撃事態」の定義の曖昧性をQ&A方式で解説するものだ。そこには、計11の質問のひとつして〈Qミサイルが飛んできたら〉〈A武力攻撃事態ということになるだろうけど、1発だけなら、誤射かもしれない〉というやりとりが書かれているだけで、ようは政府が説明する「武力攻撃事態」において発射意図の有無や目的の判断は恣意的にならざるをえないという一般論にすぎない。また、見ての通り「北朝鮮」という国名も一切出てこないのである。

 デマを吹聴しながら、言論に対して「半殺しにする」と予告する行為はファナティックとしか言いようがない。そして、何度でも繰り返すが、今回のツイートで百田がそうしたテロ煽動の切っ先を、朝日読者=一般市民にまで向けていることがはっきりした。言っておくが、たとえ本人は実行しなくとも、百田のツイートはすでに大量に拡散されている。感化されたネット右翼が朝日新聞関連施設を襲撃したり、朝日読者に暴力をふるう可能性は現実としてありうることだ。

 ところが百田は、朝日からTwitterで抗議を受けても、発言を撤回せず、反省どころかこんなふうに開き直っている。

〈朝日新聞の広報さん、
私はたしかに朝日新聞と読者を敵視したようなツイートをしましたが、差別的な発言はしていません。
なんでもかんでも、すぐに「差別だ!」と、がなりたてるのはやめませんか。精神が弱者ビジネス丸出しですよ。〉(1月16日)

 社会的弱者に対するむき出しの差別意識に反吐が出るが、いずれにせよ、今回の百田の発言が見逃されてしまっては、言論に対するテロや、特定のメディアの読者という属性に対するテロを許容することになる。

 赤報隊事件の際は、朝日はもちろんのこと、新聞・テレビなど報道各社が一斉に“報道の自由と市民社会のため、表現によって断固として戦う”という趣旨を表明した。今回の百田の発言はスルーでいいのか。「どうせいつもの放言」として済ませてはならない。メディアも社会も、この問題をもっと真剣に考えるべきだ。

最終更新:2018.01.20 07:03

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