ロリコン、ショタが告白する「子どもを性の対象にする」欲望と法規制

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『欲望のゆくえ 子どもを性の対象とする人たち』(朝日新聞出版)

 神戸市長田区で今年9月23日、近所の名倉小学校に通う女児、生田美玲(みれい)ちゃん(6=当時)の遺体が発見された。美玲ちゃんは同月11日から行方不明になっており、遺体は自宅の近くからポリ袋に入った状態で見つかった。発見から3日後、逮捕されたのは同じく近所の君野康弘容疑者(47)。逮捕直後から約1ヶ月間は黙秘していたが、事件について少しずつ語り始めているという。

 今年はほかにも、2005年に栃木県今市市(現・日光市)に住む小学校一年生の吉田有希ちゃん(7=当時)が行方不明になり、翌日に遺体で発見された「今市女児殺害事件」でも、栃木県鹿沼市に住む無職、勝又拓哉被告(32)が6月に逮捕されるなどしている。7月には岡山で女児が誘拐されるという事件も発生した。このように、小さな子どもが犠牲になる事件は後を立たない。

 一方、子どもを守るための法規制は年々厳しくなっている。児童ポルノ禁止法はその代表格だろう。今年6月には「児童買春,児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律の一部を改正する法律案」が可決され来年7月15日からは、自己の性的好奇心を満たす目的で児童ポルノを所持した者は、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられることが決定している(児童買春、児童ポルノ禁止法第7条第1項)。また岡山の誘拐事件では49歳の男性容疑者の部屋の壁一面に少女アニメのポスターが貼られていたなどの報道もなされており、犯罪とアニメの関係も、こうした事件が起こるたびに議論となる。

 9月に放送された『ビートたけしのTVタックル』(テレビ朝日系)では「ロリコン・暴力 アニメ規制は必要か?」というテーマで、規制賛成派と反対派に分かれ激論が交わされた。そこでも賛成派で東京未来大学こども心理学部長の出口保行教授は「アニメや漫画を読んで描いてある行為を真似しようと思うことが、動機の形成に大きな影響がある」など法規制の意義を主張し、反対派の漫画家、江川達也氏は「全員が犯罪を起こすわけではない」と反論している。この日の放送を受けてネット上へは規制賛成派への非難が続出。ツイッター上では出演者への殺害予告がなされるなど大きな騒動を巻き起こした。

 果たして法規制だけでこうした犯罪は防げるのか?

 2009年に出版された『欲望のゆくえ 子どもを性の対象とする人たち』(朝日新聞出版)は、自身も幼少期に性被害に遭ったという過去を持つ、著者の香月真理子氏が、実際に幼い子どもを性の対象とする大人を取材し、その実態に迫っている。

 関東地方に住む30代後半の男性、青柳さん(仮名)は3〜7歳ぐらいの女児を性的な対象とする「ロリコン」で、女児を性的に描写したいわゆる“ロリコン漫画”で生計を立てている。彼が自分の中にある幼女への欲望に気付いたのは、高校1年のときだった。

「ロリコン漫画界で活躍していた某漫画家の作品をたまたま書店で目にしたのだ。『こんな世界があったのか』と衝撃を受けた。レジに向かう彼の耳に、激しく波打つ自分の鼓動が聞こえてきた」

 それ以来、青柳さんは幼女の性的な漫画や雑誌、ビデオなどを集め始めた。

 99年に、児童買春・児童ポルノ禁止法が施行されるまでは全裸の少女がモデルの写真集も書店で購入でき、ビデオも販売していた。しかしこうした児童ポルノ映像は「成人女性のAVに比べて著しく完成度が低い」ということから「だったら満足できる『ポルノ』を自分でつくってしまおう」と、同人誌に漫画を発表し始めたのだという。

 青柳さんは、幼児に性的な魅力を感じる感覚について、作者にこう語った。

「幼い子どもの発想はかわいい。蚊を叩こうとしたら『トンボの赤ちゃんだから叩いちゃダメ』と言うし、マンホールを見れば『でっかい10円玉がある』という。しぐさも寝顔も、頭と身体のアンバランスもかわいい」

 一般的にはそのような幼い子どもの仕草についてセクシーさを感じないが、青柳さんによれば「そのかわいさが『色っぽい』『セクシー』といった感覚と直結している」というのである。しかし、そうした欲望を覚えることはあっても、恋愛感情を抱いたり犯罪に走ることは無い。

「幼女は恋愛なんて理解できません。こちらが思いを寄せたところで、“話をよく聞いてくれる仲良しのおじちゃん”程度にしか思われない。片思いに終わることは目に見えています。かといって、幼女が恋愛を理解する年齢に成長するまで待てば、3〜7歳というストライクゾーンから外れることになる。だから一人の女性を愛し続けることはできないし、両思いにもなれない。ロリコンは報われない」(青柳さん)

 できることなら、性交渉だってしてみたい、だが、女の子が不幸になるのはいやだ。そんな思いが、欲望の暴走を食い止めている。この“食い止め”に際して、児童ポルノは効果があるとも、青柳さんは語る。

「男は射精さえすれば性的欲求がおさまるもの。そして射精させることによる抑止力として、児童ポルノは現実に効果があるというのも否定できない事実」

 年々厳しくなる児童ポルノ禁止法についても、複雑な心境をのぞかせている。

「異性愛を法律で禁じても、誰もが同性愛者にはなれません。同様に、いくら規制を強化しても小児性愛はなくせません。小児性愛者が十分に満足できる代替手段を与えずに、1カ所を締めつけても、別の場所で性欲が噴き出すだけ。実際のところ、子どもに手を出さず、何とか踏みとどまっている多くの小児性愛者にとって、最後の砦が児童ポルノ。無遠慮に規制したら、今度は現実の女児に向かいかねません」

 コミックマーケットで82年からスタッフとして参加してきた牛島えっさい氏も青柳さんと同様に、本書でこう語っている。

「AVを見て満足するから、性欲を抑えることができる。規制を厳しくして代償がなくなると、性犯罪はさらに増えてしまう気がします」

 また、幼い少年が好きな“ショタコン”として本書に登場する漫画家の史都玲沙さんは、二次元の少年にしか萌えないという。「キャプテン翼」をパロディ化した同人誌にふれたことから、やおい系、いわゆるBL系の漫画を描くようになる。二次元専門のため、実際の男の子に対しては「町なかでかわいい男の子を見つけても、犬と同じような感覚で『かわいいなあ』とは思えても、そこから先へ想像を膨らませて萌えることはできない」という。しかし、彼女が運営するサイトには「近所のコンビニの男の子がかわいくて、付き合っている」という書き込みをした女性もいるといい、「現実の男の子を性的なまなざしで見る女性も、わずかながら存在するのではないか」と分析している。

 彼女も法規制について、こんなことを友人と語っているという。

「もしショタが規制されることになったら、すべての男の子にひげを描いて『大人です』って言い張ろう」

 児童ポルノや二次元の創作物、これらの規制について賛成している人々の言い分は、こうした創作物が幼い子どもをターゲットとした犯罪を助長する、というものだろう。しかし、一方では、幼い子どもを愛するロリコン、ショタと呼ばれる者たち自身が、規制を強めれば実際の子どもに欲望が向かう、と主張しているのだ。

 彼らの言い分を身勝手な論理と切り捨てるのは簡単だが、しかし、ある部分ではこれこそが現実でもある。声高に規制だけを主張しても問題は解決しないことを、規制賛成派はもっと直視するべきではないだろうか。
(寺西京子)

最終更新:2014.12.16 12:28

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