35歳は仕事より出産しろ!? 野島都議だけじゃないセクハラヤジ擁護論

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東京都議会議員・野島善司公式サイトより


 この国の保守オヤジはどこまでトチ狂っているのだろう。

「(僕だって)『まだ結婚しないの』と言いますよ。平場で」

 自民党都議・野島善司の“結婚セクハラ”発言が物議をかもしている。今年6月、当時自民党会派に所属していた鈴木章浩都議による塩村文夏都議へのセクハラヤジが大きな批判を浴びたのは記憶に新しい。この問題を受け、セクハラ防止も含めた「男女共同参画社会推進議員連盟」の活動が約5年ぶりに再開されたのだが、その議連会長に就任したのがこの野島都議だ。しかも野島都議は釈明会見で謝罪するどころか「男女は結婚すべきだと思うのは僕の思想信条で当然」など開き直る始末。こうした野島都議の態度には“確固たる男女差別思想”さえ感じ、呆れるのを通り越して絶望的にさえなる。

 だがこうした差別認識を思想信条とし、自らを省みないのは野島都議だけではない。「正論」(14年9月号)では恐るべき“セクハラ鼎談”が掲載された。その名も「『早く結婚しろよ』批判報道が封殺したもの──ヒステリッックなセクハラ決めつけは少子化日本の重要な問題を見失わないか」。

 驚くのはこの鼎談の出席者だ。保守論客として知られる八木秀次、女性ジャーナリストで故・細川隆一郎の娘でもある細川珠生、そして最後がセクハラヤジ問題の張本人の鈴木都議だったからだ。

 冒頭、鈴木都議はヤジ問題について謝罪はするものの、「ただ、あのとき私は、晩婚化、少子化などについて、質疑していた塩村さんに対して、素朴に『早く結婚することが大切なのではないか』と感じ、それを言葉にしてしまいました」「私の真意が封殺されてしまった」と言い訳にもなっていない自己弁護を口にするのだ。この期に及んで独身女性に対し「結婚することが大切なのではないか」と、問題になったセクハラ発言を丁寧に言い換えただけで「早く結婚したほうがいいんじゃないか!」と変わらない内容を繰り返しており、一応は謝罪したものの内心ではなんら反省していない様子が伝わってくる。

 八木も「この問題を考える上で、議会において、ヤジは言論の一つであることを認識しておくべきです」などと盛んに鈴木都議をかばう。

 こうして始まった鼎談だが、さらにそれはエスカレートしていく。

 八木「(塩村議員の)質疑を聞いていた自民党議員らの間にも、『そういう一般論を述べる前に、あなた当事者意識を持ってはいかがですか』という雰囲気があった。(略)あの場にいる人たちの了解事項だったのに。ヤジによって彼女が傷つけられたという部分だけをセクハラにして問題にするのは、私は違和感がありますね」
「(セクハラヤジを)封殺するのは、一種の『ポリティカル・コレクト』です。自分たちから見た政治的な正しさから言葉狩り、言論封殺で政治運動を行うわけです」

 また八木は「『セクハラ』の概念を使うことによって、女性は主導権を握ることができるようになるのです」などと、セクハラを主張することは男性差別であり言論統制、弾圧だとさえ主張する。

 さらに唯一の女性出席者である細川も「『早く結婚しろ』というのがセクハラだとするならば、私自身もセクハラは受けてきた」と自身の体験を前提にセクハラを擁護する。

 細川「私は三十歳で結婚し、三十六歳で長男を産んだのですが、その間、『早く子どもを』とよくいわれました。(略)少なくとも世間一般はそう思うのですから。まして塩村さんは公人である以上、そこは受け止めるべきではないでしょうか」
「正直言って、私は、塩村さんは三十五歳というご年齢ですから、まず、結婚して子どもを産むことを、議員活動よりも優先した方がよいと思います」

 セクハラでも「世間一般」の認識ならそれを受け入れるべきで、35歳なんだから仕事より出産を優先──同じ女性にもかかわらず恐るべき認識を示し、鈴木都議を擁護するのだ。

 そして中盤、今度は鈴木都議そっちのけで八木と細川の議論は白熱していき、ついには被害者であるはずの塩村都議へ個人的な事柄にも話題は及んでいく。

 八木「そもそも塩村議員に結婚や出産ができない事情があったのでしょうか」
 細川「(テレビ番組で)恋愛遍歴を自慢していたようですから、結婚をしようと思うのであれば不可能ではないでしょう」
 八木「出産はどうですか。自分は被爆二世だと公表していますが、だから妊娠できないということはあるでしょうか。被爆二世の方で子どもをもうけている方はたくさんいらっしゃいます」

 セクハラどころか、被爆者差別を思わせる発言まで飛び出す。そしてフェミニズムへの攻撃も余念がない。

 八木「『セクハラ』という言葉が発明されたことで、女性が腫れ物になったという一面もあります」
「それはフェミニズムの影響です。結婚するしない、産む産まないは個人の自由だとか、自己決定だとか、フェミニストたちが言い始めたためです。(略)そんなことをしていれば、人類は滅びます」
「(セクハラヤジ報道を)多くの女性達は違和感を持っているようですよ。塩村議員に対する女性の反発もかなり大きいと思いますよ」

 細川「フェミニズムがここまで広がったのは、内閣府の男女共同参画局の影響力も大きいのではないかと、私は思います。廃止すべきです」

 男女共同参画は廃止すべき──いやはや、言葉もないとはこのことだろう。もちろんこの鼎談が掲載された「正論」はタカ派の中でも最右翼の産経新聞社発行のオピニオン誌ということを割り引いても、である。

 多くのタカ派オヤジの本音、そして、オヤジの価値観を内面化した名誉男性とでも呼ぶべき“タカ女”の認識がこれでお分かりだろう。セクハラなんて言葉こそ“悪”であり、女性が傷つこうが関係ない。「早く子どもを産めというのはセクハラでもなんでもなく社会常識で、これが正論だ!」という恐るべきセクハラ攻撃鼎談。

 こんな鼎談にノコノコ参加した鈴木都議は、2人の“セクハラヤジ”大擁護を受けて気が大きくなったのか。最後にダメ押し“セクハラ”発言で鼎談を締めくくった。

「政治家として少子化対策を訴えるならまずご自分が結婚されて、その経験をもとに語るべきではないか」

 身体と頭にこびりついた差別意識は、あれほどの批判を受けても払拭することはできないのだろう。卑劣で無神経なセクハラ発言は止まりそうにない。
(伊勢崎馨)

最終更新:2016.08.05 06:32

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