新元号に安倍首相の「安」の字が入る!? 極右勢力が「国体思想の復活」を目指し法制化した元号の危険性

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明治以降でしかない「一世一元」に執着する極右勢力

 そもそも、元号とはなんなのか。言うまでもなく、暦の一種である。歴史学の理解では、暦というものは、支配者や指導者が空間(領土や民衆)のみならず時間をも手中におさめようとしてつくられたものと考えられている。代表的なのが中国であり、周知の通り、日本の元号も大陸から伝播したとされる。語源が『漢書』など中国の史書からとられていることは有名だ。

 だが、その“パクリ元”である中国すら、いまや元号を使っていない。中国における元号は、漢の皇帝・武帝が創った「建元」(紀元前140〜)が最初とされ、以後、清の末期まで約2000年続いた。その間の正統な皇帝は198代にのぼって、合計450の元号が使われたとされる。だが、1911年の辛亥革命と中華民国の誕生で元号はその役割を終えた。その翌年から中国では西暦を「国民暦」と呼んで用いている。

 もっといえば、現在でも中国由来の元号を用いている国は日本だけだ。『日本書紀』によると、孝徳天皇の「大化」(646年)が初めての公式な元号だとされる。元号は現在の「平成」まで北朝を入れると約250もつくられた。日本の天皇は明仁天皇で125代に数えられている。つまり、単純換算で元号は天皇の人数の2倍の数ある。

 なぜか。元号は、政治的混乱、飢饉や天災、その他諸々の理由をつけては頻繁に変えられていたからだ。大衆は必ずしも元号を身近に感じておらず、日常的には干支を使っていたといわれている。

 現在に通じる「一世一元」は明治に入ってからのことで、大日本帝国憲法および旧皇室典範(第12条「践祚の後元号を建て、一世の間に再び改めざること、明治元年の定制に従う」)によって定められた。天皇を絶対的な権力として、大衆支配のイデオロギーの中心とする「国体思想」。そのなかにおいて改元は、まさに天皇の権勢をアピールするための重要なツールだったのである。

 そして、この部分にこそ、安倍首相や保守勢力がいまだに元号にこだわる理由がある。

 事実、戦後日本では、国際化の流れのなかで「西暦に統一すべき」という元号廃止論が浮上してきたのだが、そのたびに保守勢力が強く反発し、現在まで温存されてきた。たとえば1992年、政府の臨時行政改革推進審議会(第3次行革審)の「世界の中の日本」部会では、報告原案に盛り込まれていた「行政文書での西暦併記」が最終報告書では消されていた。保守派や官僚の抵抗によって棚上げを余儀なくされたようだ。部会長を務めた稲盛和夫・京セラ会長(当時)は「私も併記に賛成だが、義務づけると国粋主義のような人がものを言い出して、かえって変なことになるかもしれない」と政治的な配慮を認めたという(朝日新聞1992年5月23日付)。

 そして、今回の明仁天皇の生前退位をめぐっても、新元号について、保守派から早期の公表に対する強い反発の声があがっていた。日本会議国会議員懇談会は昨年7月に事前公表に反対することで一致し、同年8月には新天皇による公布を求めて官邸に申し入れを行っている(朝日新聞1月5日付)。新元号の公表が、当初政府内で検討されていた2018年中から、2019年4月1日と大幅に遅れたのは、安倍首相がこうした保守派支持層に配慮したからだ。

「一世一元」に執着する極右勢力は、明仁天皇在位中の改元を「二重権力となる」「今上天皇に失礼」などと主張する。だが、その本音は、大日本帝国的価値観の復活にある。それは、戦後の「元号法制化運動」の軌跡を見れば明らかだろう。

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