大飯原発福井訴訟弁護団・島田広弁護団長インタビュー

大飯原発が14日に再稼働! 差し止め判決を出した地裁裁判長は左遷、一変した控訴審…裁判所で何が起きているのか

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差し止め判決を出した樋口裁判長に左遷以外にも…最高裁の露骨な原発推進人事

──一方、樋口裁判長の人事については、どうお考えですか。大飯原発での判決後、名古屋家裁に“懲罰左遷”され、最高裁判所事務総局民事局にいたエリート裁判官が後任の裁判長となり、高浜の樋口判決を覆して再稼働を決定しました。

島田 原発訴訟では、最高裁による不可解な人事がしばしば見うけられます。いま進行している大飯原発の控訴審でも同じようなことがありました。2014年5月に樋口判決が出て、8月に控訴審の進行協議がもたれました。当時の高裁裁判長は関電側にも「きちんと主張しなさい」と厳しく言っていたのです。しかしその裁判長はあっさりと転勤になってしまった。そして11月に審理が始まったのですが、次にきた裁判長は、当時の最高裁事務総局のトップである事務総長の戸倉三郎氏の同期の裁判官で大学の後輩でした。戸倉氏の出身大学から同期で裁判官になったのは3人しかいないのですが、その一人なのです。知らない間柄であるはずがなく、当時は、露骨なことをするものだと思ったものです。もちろん、単なる「偶然」だと説明することは可能でしょうが、「李下に冠を正さず」とはおよそかけ離れた不可解な「偶然」であることは間違いなく、しかも、この後任の裁判官によって強引な結審が図られたことも、客観的事実です。ますます疑いは深まったとみざるを得ません。
 また結審後ですが、大飯原発は今年1月に再稼動の予定が、神戸製鋼所グループの検査データ改ざん問題で、その製品が使われていたことで、延期されました。そのため、きちんと検証すべきだと弁論再開の申し立てをしましたが、放置されたままです。その後も、大飯原発の地盤調査の誤りを指摘する意見書を専門家に作成してもらい、審理するよう弁論再開の申し立てをしましたが、今のところ、裁判所からは何の反応もありません。裁判所の職責である真実の解明を放棄して、かたくなに結審にこだわる姿勢の異常さが、際立っています。

──樋口氏の高浜判決後、福井地裁に異動してきた裁判官3人は全員が事務総局経験者でしたし、当時原発訴訟に対する最高裁の露骨な介入として問題になりました。

島田 最高裁の原発訴訟に対する姿勢には、疑問を感じることばかりです。そもそも1992年の伊方原発訴訟の最高裁判決以降、いわゆる伊方方式と言われているものですが、裁判所は訴訟を起こした住民側が乗り越えることが困難な高いハードルを課しています。またもんじゅの最高裁判決を見た時にも、「これが原発に対する最高裁の態度か」と強く感じた経験がありました。本来最高裁は法律審なので、控訴審が確定した事実認定を前提として、それをいじらずに判断しなければならないはずなのです。しかしもんじゅ訴訟では、そこをいじった。最高裁はこんな政治的な判決を書くのか、とつくづく思い知らされた一件でした。福島事故の際に、司法の責任を問う声があがったのは、当然でした。
 
──やはり最高裁も政府からの圧力、もしくは忖度で、再稼働を阻止するような判決を出したくないということなのでしょうか。

島田 福島事故後は、その教訓を生かそうという動きも裁判所で確かにあったのです。事故後、原発関連訴訟を扱う裁判官を集めた研究会が2回行われています。こうした研究会での議論は、最高裁判所から全国の裁判官への“意思伝達”の意味もあるものなのですが、1回目は、闊達な議論があり、裁判所による踏み込んだ安全審査に前向きな裁判官も多く、私たちも期待しました。しかし2013年の2回目の研究会は、その雰囲気は全く違うものでした。旧保安院と違って原子力規制委員会は頑張っているんだから、その判断を尊重すべきだ、だから従来の伊方方式でよい、というのが基調でした。この2回目の研究会報告を目にしたとき、私は、裁判官の「引き締め」を図る、最高裁の露骨な意思表示だと感じました。
 そこにはさまざまな要因があるかと思います。善意に解釈すれば、政治的な問題では、政権に反するような判決を書くと、裁判所自体、非常に強い政治的な攻撃にさらさる危険がある。そういうこと恐れているのかもしれません。1970年前後、裁判官の思想、信条を理由とする自民党などからの裁判官・裁判所批判、いわゆる青法協事件も経験している。もうひとつは裁判所といえども内閣に予算を握られているので、ものが言えない部分もあるでしょう。さらに安倍政権になって、最高裁判事の人事権を実質的に行使、介入し始めた。これまでは慣例として、最高裁が推薦すれば、選任権のある内閣はそれを選任してきた。しかし安倍政権は“今度は俺が選ぶ”と。これは大きい。最高裁判事の人事権に実質的にタッチするようになった安倍政権の存在は、相当な影響があると思います。

──しかも安倍首相は加計学園の監事という“お友だち”を最高裁判事に任命しました。こうした介入は裁判所にとってプレッシャーになります。さらに政権を忖度した判決がなされる危険性もある。

島田 樋口さんがなぜ名古屋家裁に行くことになったのか、外部からは伺いしれませんが、客観的事実として、この人事を見た他の裁判官にとって萎縮効果は大きかったでしょう。もちろん、一般的な民事事件では、多くの裁判官は公正な判断を示そうと真摯に努力しています。しかし、こと原発訴訟となると、こうした萎縮効果が、裁判官に重くのしかかるのです。

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