百田尚樹『海賊とよばれた男』は愛国ポルノ! 主人公のモデルは皇国史観丸出し、右翼殺人テロまで礼賛していた!

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 ようするに、敗戦により軍閥が解体されたのだから、かえって純粋な「日本」に立ち戻れる、というわけだ。これは戦争行為の責任のすべてを軍閥に丸投げするという暴論。なんの抵抗もできず戦争に協力させられた無辜の市民がそう言うのならばともかく、佐三は戦時中に貴族院の議員にまでなり、太平洋戦争では南方の石油配給を受けもっている。いわばエスタブリッシュメントだ。事実、佐三自身、当時を振り返ってこう述べている。

〈そのうちに日米戦争になったが、私のところのタンクにはガソリンが一ぱいはいっていた。それを軍の航空隊が使った。その油を売った金で軍票(引用者註:占領下等における疑似通貨)を回収したので、なんとかといった中将が私を玄関まで迎えたことがある。そのころの中将といえば、まるで殿様でわれわれ民間人を玄関まで出迎えるようなことは、ついぞ見も聞きもしないことであった。それは当時、軍票を乱発して無価値になっていたのを石油を売って軍票を回収する、回収すれば軍票の価値が出てくる。それを石油だけでもってやってくれているというので非常に感謝されたわけである〉(『私の履歴書 経済人1』日本経済新聞出版社、1980年)

 これを“戦争協力”と言わずに何と言うのか。その一方で、自社のビルが戦禍を奇跡的に免れたのを「神のご加護」「神社の御神徳を受けた」(前掲書)などと言っているのだから、ほとほと呆れる。ちなみに、出光興産の入社式は明治神宮で行われ、そこで新たな「店員」は二礼二拍手を教えられていたという。

 そんな佐三であるから、当然のように、日本国憲法についても敵意をむき出しにする。前掲した対談本『永遠の日本』のなかで、佐三は「現在は、憲法をタテにとって、つまらんことばかりをいっておる」としたうえで、「なんといったって、天皇中心の憲法ですよ」と改憲を主張。これに対し対談相手のひとり、高橋正雄・九州大学名誉教授が“奇跡と言われた戦後の経済発展は日本国憲法の下でなったのではないか?”と疑義を呈すのだが、対する佐三は少しも譲らず、ガチガチの皇国史観をさらけ出す。

「それは日本の民族性ですよ。(略)憲法がいくら悪くても、日本は崩れませんよ。日本の民族性が皇室を中心として一致団結しておる。そして自分を捨てて、国のために働く民族性が、いまの青年の血の中に流れておる。二千何百年かの伝統の血が、母親をとおして青年の中に流れています。母親の胎内で、われわれは教育を受けています」

 いや、どう考えてもこれは矛盾するだろう。「皇室を中心として一致団結」するという考え方を利用することで「世界に無比の国体」が形成された。そして、この国体思想のもと、「八紘一宇」をスローガンに日本の侵略戦争を正当化していったのだ。ところが佐三は、日本の戦争は自衛戦争といって憚らず、皇室に連なる民族性こそが平和を生むのだと主張する。そして逆に、著書『日本人にかえれ』(ダイヤモンド社、1971年)のなかでは、〈終戦後、占領政策によって対立闘争の思想はうえつけられ、和をもって貴しとする国民性は完全に失われた〉と嘆いてすらみせるのだ。

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