家父長制復活狙う日本会議が「サザエさん」を使い家族条項新設を喧伝! でも「サザエさん」ってフェミなんですけど

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 印刷

 ほかにも、女性を「オイ、コラ」と呼び止める警察官に対して、サザエさんが「オイ、コラ」とは何事かと詰め寄り、呼び止めた女性が警官の妻だとわかると“妻に向かって「オイ、コラ」とは何事か”と怒りのボルテージを上げるというオチの作品もあるし、男が料理することをけしからんと非難する波平をカツオが「古い思想」と斬り捨てる作品もある。しかも70年代には、「ウーマンリブ御一行様」と札が下がったバスに、サザエ自身が乗り込んでいるシーンも出てくる。

 まさかサザエさんがウーマン・リブの活動家だったとは……これだけでも度肝を抜かれるが、漫画ではそれだけでなく、大きなカップで飲み物を飲み干して大音量で用を足したり、すかしっ屁をかましたりするサザエさんも描かれている。──女性の権利を高らかに謳い、女性らしさに縛られない自由なキャラクター。サザエさんはそういう見方もできるのである。

 しかし、どうしてサザエさんはこのような伸び伸びとしたキャラクターとなったのか。前述の『サザエさんからいじわるばあさんへ』では、その理由を〈サザエさんが「嫁」でないからである〉としている。保守層はサザエさんを三世代大家族の専業主婦という点に重きを置きがちだが、じつは彼女は〈嫁の役割から免責された女性〉である。もしもこれが夫の実家に嫁に入った女性の物語であれば、これほどまでに支持されるキャラクターにはなり得なかった、というわけだ。

 一見、伝統的家族に見えるものの、内実はそうでもないサザエさん一家。大衆文化研究者であり哲学者である、かの鶴見俊輔も、サザエさんの物語をこう評している。

〈この一家は、軍隊増強、アジアへの帝国主義的進出に夢をかけているのではない。戦前の天皇制を復活することへのあこがれなどはもっていない。むしろ戦後二十七年間、うむことなく、家庭内のメンバーの対等性を主張してきたことをとおして、さらにひろく日本の社会全体にとって対等性をつらぬかれることを求めている〉(『漫画の戦後思想』文藝春秋/73年)

『サザエさん』が描く対等性──。そう考えると、アニメ版における「子どもが寂しそう、立ちっぱなしで疲れる」という理由で仕事を辞めるサザエさんは、漫画版の彼女とはずいぶん解離している。漫画版サザエは体力をもて余しているようにも見えるし、何よりタラちゃんの面倒は実母・フネに任せるのではないか。だいたい漫画版サザエは、一家の枠におさまるような器の人間には到底思えない。

 ただ、そんな“活動する女”である漫画版サザエにも、保守的な部分はある。それは性の問題だ。

「いいね!」「フォロー」をクリックすると、SNSのタイムラインで最新記事が確認できます。

新着芸能・エンタメスキャンダルビジネス社会カルチャーくらし

家父長制復活狙う日本会議が「サザエさん」を使い家族条項新設を喧伝! でも「サザエさん」ってフェミなんですけどのページです。LITERA政治マスコミジャーナリズムオピニオン社会問題芸能(エンタメ)スキャンダルカルチャーなど社会で話題のニュースを本や雑誌から掘り起こすサイトです。編集部の記事ならリテラへ。

マガジン9

人気連載

アベを倒したい!

アベを倒したい!

室井佑月

ブラ弁は見た!

ブラ弁は見た!

ブラック企業被害対策弁護団

ニッポン抑圧と腐敗の現場

ニッポン抑圧と腐敗の現場

横田 一

メディア定点観測

メディア定点観測

編集部

ネット右翼の15年

ネット右翼の15年

野間易通

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

左巻き書店の「いまこそ左翼入門」

赤井 歪

政治からテレビを守れ!

政治からテレビを守れ!

水島宏明

「売れてる本」の取扱説明書

「売れてる本」の取扱説明書

武田砂鉄