大和くんに松本人志が「反省してない」太田光が「ちゃんと叱れ」…道徳ファシズムで失われるトム・ソーヤー的精神

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 しかし、大好きだと言うわりに太田は、子ども目線で大人の偽善やくだらない道徳を徹底的にバカにし笑い飛ばすこの物語を、いつのまにか大人目線でいたずらっ子がしつけられ反省するというつまらない物語に読み替えてしまっている。

 しかも、この太田の誤読は単なる偶然ではないだろう。この国では、いつのまにか硬直した道徳主義がはびこり、good bad boyが許されるような自由な空気が完全になくなってしまった。未成年者の飲酒や喫煙、不倫や二股交際程度のことをまるで重大犯罪であるかのように糾弾し、謝罪させる。あげくは、こどもだったら、誰でもやるような「石投げ」にまで目くじらをたてて「反省しろ」と迫る。太田は、この道徳ファシズムの空気を内面化し、記憶に残っていたエピソードの断片の意味を、無意識のうちにその空気に沿う形でトム・ソーヤーの物語を読み替えてしまったのではないか。

 もうひとつ、この異常な道徳主義は「教養の欠如」と無縁でないことも付け加えておく必要があるだろう。様々な文学、哲学、異文化に触れていないから、わかりやすい、日本会議の語るような視野狭さくの道徳主義に簡単にはまってしまう。

 太田光も同様だ。トム・ソーヤーすらきちんと読めていないから、「大人はちゃんと叱るべき」みたいなこんなつまらない説教をしてしまうのだ。

 いや、太田だけじゃない。テレビでは、今、お笑いブームが終わって仕事にあぶれたお笑い芸人たちが大量に社会情報番組に進出している。そして、思想や知識の裏づけのないまま、ただ大衆の空気を読んだだけの「正論」をがなりたて、異常な道徳主義を拡散させる役割を演じているのだ。

 この先、日本人はますます教養をなくし、自ら自由や余裕をどんどんなくしていくのだろうか。そのことを考えると、本当に絶望的な気持ちになる。
(酒井まど)

最終更新:2017.12.21 05:03

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