虐待による自宅軟禁、保護者の介護、ホームレス生活…学校や行政も把握していない「消えた子ども」が急増中!

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 マオさんが10歳の時、母親が離婚などがきっかけでうつ病となった。母親が朝起きられないなどの理由から、家事なども幼いマオさんが代わって担っていたが、中学生になって母親はこう言い出したという。

「家に1人でいるのは不安なのでずっと一緒にいてほしい」

 学校には行きたいが、しかし母親をひとりにしておくわけにはいかない。こうして学校には行かず母親の面倒を見ることになったマオさんだが、その生活は中学生のものとは思えないものだった。働くことも出来ず、入退院を繰り返し生活保護を受けていた母親だが、しかし生活は困窮を極めた。

〈母親は不安を紛らわせるため酒に頼るようになり、マオさんが目を離したすきに外にお酒を飲みに出かけて散財してきてしまう〉

 時にはタクシーに無銭乗車し、マオさんが運転手に怒鳴られることもあった。トラブルを繰り返す母親に、周囲も関わりを避け、誰にも助けてもらえず孤立するマオさん。学校はマオさんを単なる不登校と判断した。その後、母親が無銭乗車を繰り返したことで逮捕され、マオさんは施設に保護された。

 虐待、貧困や離婚、それに伴う保護者の精神疾患、育児放棄──。そのため義務教育も受けられず、時には家に閉じ込められ、時には逃げるように放浪生活を送り、虐待され、社会から抹殺される。しかもこうした事例が公になるのは何らかのきっかけで無事保護されるという“幸運な氷山の一角”か、または瀕死の重傷や、最悪の場合、殺されてしまったことで事件化し発覚する。そう考えると現在でも“消えた子ども”の多くが、その居所や実態さえ把握されず、闇に消されたままだと容易に想像できる。

 安倍首相がいくら「日本はかなり裕福な国」と強弁し「アベノミクスの成果」を喧伝しようが、これが日本のひとつの現実だ。そして残念ながら問題を完全に解決する道筋は、現在もない。

 本書でもこうした現状について「第一は親の問題」としながらも、こう記している。

〈多くの子どもが傷つき小さな命が失われていく。「消えた子ども」は、社会が、政治家が、官僚が、行政が、マスコミが、大人一人ひとりがその親も含めて彼らの存在をネグレクトしてきたことで生まれた存在だろう〉

 政治の、行政の、そして大人全員の不作為が「消えた子ども」を生み出し、そして放置したままになっている。憲法改正などの前に、やるべきことはもっとあるはずだ。
(伊勢崎馨)

最終更新:2017.11.24 09:38

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ルポ 消えた子どもたち―虐待・監禁の深層に迫る (NHK出版新書 476)

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