右派論壇誌“ヘイトスピーチ”広告の20年間を検証! 彼らは敵の設定と愛国話法をどう変化させてきたのか

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 自分の言い分に納得しない者に「反日日本人」のスティグマを刻印するのは、まるで先の戦争での「非国民」の呼び名と同じではないか。早川氏に、戦前・戦中の広告と、現在の広告の類似点、あるいは差異について尋ねてみた。

「そうですね、戦前は今よりも出版・言論は国家の統制下におかれていたことは確かですけれど、じつは、銃後の読者たちは意外とのんびりしていた。当時の新聞記事の広告を見ていくと、たとえば『暴支膺懲』を煽る総合誌のとなりに『松坂屋 夏のお中元セール』みたいなのが載っているわけですよ(笑)。夏の海水浴や水着の広告なんかも普通に掲載されていた。戦争は日常生活の中に併存していたわけです。これは山中恒さんがお書きになっていますけど、昭和19年の春に空襲が始まるまで銃後は「平和」だったんです。もちろん、大東亜戦争に入ると、物資も本当に逼迫してきますから、必然的に新聞や雑誌のページ数が少なくなってくる。集まる広告もギュッと濃縮されて、国策動員型の広告ばかりになりますから、雰囲気は殺伐としていきます」

 早川氏は、茶色がかった薄い冊子のようなものを取り出す。昭和20年3月11日号の経済誌「ダイヤモンド」。発売日は東京大空襲の前日だ。

「東京が灰燼に帰したなかで発売されたわけですが、本のつくりをよく見てください。断裁すらできず、一枚の大きな紙を折っただけなんです。これに〈空爆下の出勤向上 決戦勤労観の把握〉という特集記事が載っています。当時は、警戒警報が朝から鳴っているわけですよ。だから、みんな工場に出てこない。しかし記事はこのように始まります。『今や生産即戦場──職場は戦場となった。空に敵機の爆音を聞き乍ら勤労者はその持ち場の仕事と取組ねばならぬ』。ようするに、危なくても出勤しろ! サイレンが鳴っても帰らず夕方まで会社にいろ!と。いや、もうやられたらアウトじゃないですか。しかも『職場安全感の確保』なんて小見出しもありますが“安全”じゃなくて安全“感”ってところがすごい。見つけたときは衝撃的でしたね(笑)」

 太平洋戦争末期で生活もどん詰まり。大空襲の後の焼け野原にて「安全“感”の確保」を指南された庶民は何を思っただろうか……。一方、7年ほど時代を遡って、支那事変勃発の翌年、昭和13年。まだ余裕のある国内で、国家総動員法が公布されたこの年に発行された一冊の絵本を早川氏は見せてくれた。表紙には、富士山を背景に日の丸の旗を担ぐ幼顔の少年少女たち。タイトルは、“子供が良くなる講談社の繪本”『日本よい国』、とある。

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