特攻隊として戦地に送られた犬、毛皮のために軍に供出されるペット…あの戦争では犬や猫も悲惨な目に!

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〈犬はなぐられるまでじっと座っていました。(中略)ふと横を見ると、飼い主らしい人が、ふるえています。歯をむきだしていかくするので、何人もでおさえつけなければいけない犬もいました。犬やねこが叫びはじめると、おさえている人をふりきって、にげだす犬がいます〉
〈比較的おとなしい犬はともかく、ねこをなぐりつけるのは、とても難しい仕事でした〉

 こうして殴り殺された犬や猫は、その後、皮をはがれ、皮は塩と一緒に稲わらで編んだ袋に入れられた。皮を腐らせないために塩漬けにするのだという。

 少年にとって仕事が最後となった日のこと。その日、何匹もの猫が殴られることに抵抗し、近くにあった木の枝に逃げた。猫たちは葉のない枝にしがみついたという。その木を見て、この少年は思う。

「まるでねこの木だ! ねこの木がふるえている」

 少年は、めまいでその場に倒れたという。

 この証言をした男性は、77歳になったいまでも〈犬をだいた悲しそうな女の子の横顔〉を夢に見ると語っている。そして、「あんなバカげたことをさせる戦争を、二度としてはいけないよ」と話す。

 人が平気で殺し殺される世界では犬や猫の命ぐらい、と言う人もいるかもしれない。でも、証言者のおじいさんやおばあさんたちは、そのときの犬や猫のあたたかさを忘れられないまま、心に痛みを抱えている。いま、犬や猫と一緒に暮らしたり、愛くるしい動画に癒やされているという日常、それもまた、かけがえのない平和というものなのだ。

 人の命を軽んじる戦争を、わたしたちは徹底して憎み、拒まなくてはいけない。そう、戦争によって殺されてしまった犬や猫のためにも。
(田岡 尼)

最終更新:2015.08.13 05:53

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