宮崎駿の引退を「傲慢」とバッサリ! 毒舌冴える押井守監督だが、性差別への無理解も

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〈なにしろあのヒラリーさんだからね。「このオバさんで本当に大丈夫か」って、カンケイない日本人の私でも思ったくらいだもん。アメリカの有権者だって「遣り手の女弁護士」なんか好きなわけないじゃない。自分のヨメにしたくない女の典型〉

 ……これ、ヒラリー評でもなんでもない。単に「結婚する女は学歴も才能も男より劣っているのが一番」という女性観の披歴に過ぎないのではないか? 本文ではこのあと「アメリカの警察ドラマに登場する弁護士って、演出の悪意にまみれてる(略)女弁護士なんて、ほぼ最低の人間あつかい」という文章が続く。「アメリカ社会における女弁護士のイメージ」のせいということになってはいるものの、それをタネに垣間見える自身の「本心」こそを自覚せい、という気がしてならない。

 もっとも、押井のような女性観は日本男性の平均的感覚とも言える。6月9日の毎日新聞では「東大女子 なぜ増えない」という見出しのもと、東大生の女子比率が未だ20%の壁を越えられない現状が報じられていた。背景として、東大女子学生から挙がっていたのが「男は自分より学歴が高い女を敬遠する」ので東大自体が進学先として避けられる傾向にあるという意見だ。高学歴の女性は「ヨメにしたくない女の典型」であることが私的な好みを越えて「社会の感覚」にすり替わった際、女性の社会進出を阻害する一因となってしまうことはわきまえてほしいところだ。

 もうひとつ気になったのが、東京都議会のセクハラ野次騒動評。14年6月、都議会の最中、塩村文夏都議会議員に対し、男性都議から「自分が結婚すりゃいいじゃないか」「産めないのか」とヤジが飛んできたという一件だ。直後、一瞬強張った表情を見せ苦笑いしながらも話を続けた塩村議員の振る舞いについて、押井は以下のように評する。

〈『喧しい、この種無し』『もう勃たねんだろインポ親父』くらいは喚いて欲しかった。不正規発言には不正規発言で、罵詈雑言には罵詈雑言を以て応酬することが正しいのです。(略)公然と侮辱されたのですから、侮辱し返すのがスジというものです〉

「やれやれ、これだから若い女性は」と肩をすくめる押井の姿が目に浮かぶようだ。しかし、実際はそう言う側のほうがアウトなのである。文芸評論家の斎藤美奈子は、性暴力事件の特徴はまさに「なぜ抵抗しなかったのか」というようなかたちで被害者に追及の目が向けられることだと指摘する。こうした言葉は被害者をもう一度傷つける「『セカンド・レイプ』『セカンド・セクハラ』の典型的な発言」にあたるのだそうだ(斎藤美奈子『物は言いよう』平凡社)。

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