子供たちの活躍の裏で…前妻が明かした松田優作の在日差別への恐れと日本国籍への執着

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 帰化するためには膨大な量の書類の提出が義務付けられている。そのなかでも優作は“日本人になる動機”についての文章に一番時間をかけた。

〈僕は今年の7月から日本テレビの『太陽にほえろ!』という人気番組にレギュラーで出演しています。視聴率は子供から大人までと幅広く、家族で楽しめる番組です。僕を応援してくれる人も沢山できました。現在は松田優作という通称名を使っているので、番組の関係者にも知られていませんが、もし、僕が在日韓国人であることがわかったら、みなさんが、失望すると思います。特に子供たちは夢を裏切られた気持ちになるでしょう。〉

 美智子はこれを読んで泣き出しそうになったというが、それも当然だろう。在日だと知られたらみんなに失望され、子供の夢を裏切ってしまう。こんな思いを優作に抱かせたのは誰なのか。それは日本で生まれ、日本国籍を持ち、自分たちこそ日本人だと胸を張る、すべての日本人だ。

 最近、通名が在日特権だなどという無神経なヘイトデマを平気で口にする輩がいるが、この松田の文章を読めば、国籍だけで差別され蔑まされた在日の人々がその出自を隠し、通名を使わざるをえなかったことがよくわかるはずだ。

 しかも、この差別の構造はそれから40年以上が経った現在も、変わっていない。いや、それどころか、嫌韓ブーム、在特会やネット右翼によるヘイトスピーチ、安倍政権発足後の日本全体を覆う排外主義的空気によって、それはさらに強化されているといっていいだろう。

 松田龍平と翔太、Yukiの母親である美由紀が先述したように、優作の出自を一方的に公にする行為に不快感を示したとすれば、その背景にはやはりこうした差別構造があったのではないだろうか。社会全体の在日に対する偏見が強まり、芸能界でも在日バッシングが広がるなか、この告白によって子供たちがいわれなき差別をうけることに懸念を抱いたとすれば、それは母親として当然の感情だろう。

 優作は膀胱ガンにより40歳の生涯を終えてから26年。日本人は松田優作という俳優が受けた「心の傷」に向き合って、そこからもう一度、差別がいかに残酷で人を追いつめるかということを学び直すべきではないのか。
(伊勢崎馨)

最終更新:2015.06.15 11:46

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