ドローン、佳子さま脅迫でも…「威力業務妨害」「偽計業務妨害」の濫用が招く言論弾圧社会

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 偽計業務妨害罪は「虚偽の風説を流布し、又は偽計を用いて、人の信用を毀損し、又はその業務を妨害」した際に適用されるもので、威力業務妨害罪とともに3年以下の懲役又は50万円以下の罰金が科せられている。

「偽計」とは“他人を欺きまたは不知や錯誤を利用すること”で、「威力」とは“人の意思を制圧するような勢力”と解されているが、現状、両方ともに非常に幅広い解釈が可能となっている。これがドローン事件でも、佳子内親王脅迫事件でも、拡大解釈、いや、治安維持法もどきの運用をされたのだ。これについて、ベテラン公安担当記者がこう解説する。

「これまで当局にとって治安を維持するため、または権力に逆らう者への見せしめ的な罪として公務執行妨害がありました。60年代の学生運動やオウム事件の際にも、“転び公妨”といって公安警察がわざと対象者に接触し、突き飛ばされたように見せかけて逮捕するという批判の多い手法でした。しかし現在、身体的に直接接触のないネット犯罪のような“めいわく罪”が増大した。これでは公務執行妨害は適用できない。そのため代替案として威力業務妨害や偽計業務妨害罪を適用するようになったのです」

 いわば公務執行妨害という伝家の宝刀が通用しなくなった代わりとして、反権力や治安犯罪に対し威力・偽計業務妨害を乱発するようになったというわけだ。

 そのきっかけとなる事件も存在する。それが2004年に起こった都立板橋高校卒業式事件だった。

 東京都教育委員会はその前年の03年10月、入学式や卒業式での日の丸掲揚、君が代の起立・斉唱を義務化する通告を出した。しかし、これに疑問をもっていた同校元教師が、04年3月の卒業式会場で保護者らに国歌斉唱の際に着席を呼びかけ、また通達についての週刊誌記事を配布した。この行為が卒業式の運営を妨げたとして威力業務妨害容疑で起訴され、11年7月に有罪が確定した。

 この事件に対して、元日弁連事務次長を務めた加藤文也弁護士は「法学セミナー」(日本評論社)06年09月号で、「これが認められればどんな行為でも『威力』になる」「表現の自由の侵害」として、こう批判した。

「卒業式の開式の前で、保護者らも私語が自由になされる状況の中で(元教師の語りかけが)行われている。その語りかけの内容は、校長ら管理職に対しては好ましくないものであったが、保護者に対しては重要なメッセージを含んでいた。このような発言が憲法21条の表現の自由の保護の対象になるかが検討されなければならない」

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